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憲法9条の改正議論に対し、立憲主義を堅持し、恒久平和主義の尊重を求める立場から課題ないしは問題を提起するとともに、憲法改正手続法の見直しを求める決議
2018年(平成30年)5月28日

1 日本国憲法が施行されて71年を迎え、憲法9条の改正に向けての動きが進もうとしている。
日本国憲法は、アジア・太平洋戦争の惨禍を経て得た「戦争は最大の人権侵害である」との反省に基づき、全世界の国民が平和的生存権を有することを確認し、武力による威嚇又は武力の行使を禁止し、戦力不保持、交戦権否認という世界に例を見ない徹底した恒久平和主義を採用している。そこには、核の時代における戦争が文明を破壊するおそれがあることも踏まえ、軍事によることなく、国民の安全と生存を「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」保持しようとする決意が込められている。
そして憲法9条は、これまで現実政治との間で深刻な緊張関係を強いられながらも、自衛隊の組織・装備・活動等に対し大きな制約を及ぼし、海外における武力行使及び集団的自衛権を禁止するなど、憲法規範として有効に機能してきた。

2 自由民主党(自民党)憲法改正推進本部において憲法9条改正にあたり基本とすべきとの意見で大勢を占めたとされている案は、憲法9条1項及び2項は残しつつ憲法に「我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置」(必要な自衛の措置)をとることができる「自衛隊」を憲法に明記する案(自衛隊等明記案)である。
そもそも、自衛隊については、9条2項の「戦力」にあたり憲法違反ではないかという意見が根強くあり、憲法学会ではこれが通説である。この自衛隊等明記案は9条2項を残すものであるから、結局、自衛隊が「戦力」にあたり違憲ではないかという疑念はなお残されることになる。
また、この自衛隊等明記案では、憲法9条の規定が「必要な自衛の措置」をとることを「妨げず」とするうえ、「必要な自衛の措置」の内容を限定していない。そのため、憲法9条の憲法規範としての機能が減退ないしは喪失し、「必要な自衛の措置」として、存立危機事態はもとより、それ以外の場面での集団的自衛権の行使が容認されかねず、政府がこれまで維持するものとしてきた専守防衛政策に根本的な変化をもたらしかねず、日本国憲法の恒久平和主義の内実に実質的な変化を生じさせるおそれがある。
さらに、従前の政府は、自衛隊が「必要最小限度の実力組織」であるから「戦力」にあたらないと主張してきた。これを受けて、自民党の当初の改憲案には「必要最小限度の実力組織」の文言が記載されていたが、今回の改憲案ではこの文言が削除されている。これでは、自衛隊が違憲な「戦力」に該当するとの疑念がますます強まることのみならず、その規模や装備の無限定な拡大を招くことが懸念される。
加えて、自衛隊等明記案は、自衛隊の最高指揮監督者を内閣総理大臣とし、自衛隊の行動に対しては、「法律の定めるところにより」国会の承認その他の統制に服するとすることで、自衛隊の活動に対する統制を及ぼそうとしている。
しかし、自衛隊等明記案では「必要な自衛の措置」の限界の判断は、内閣又は国会に委ねられることになる。また、自衛隊の活動を統制する制度についても、憲法で定めることなく法律にのみ委ねられる。これでは、人権保障のため憲法で権力を縛るという立憲主義の観点からして、自衛隊の活動に対し実効性のある統制をすることができないのではないかという懸念がある。

3 このように、自衛隊等明記案は、立憲主義、基本的人権尊重、恒久平和主義など、日本国憲法の理念や基本原理に深く関わり、日本の国の在り方の基本を左右する問題を含んでいる。
したがって、もし、憲法改正手続をとるのであれば、主権者である国民がその内容を熟慮できるための十分な時間が確保されるべきである。すなわち、まずは国会において、改正案について十分な時間をかけて熟議したうえ、何がどのように変わるのか国民が明確に理解できるような内容の憲法改正条項案が発議される必要がある。そして、発議から国民投票までの期間も、国民が憲法改正案を正確に理解し熟慮して投票できるだけの十分な期間が確保されなければならない。加えて、国民投票が公正・公平な手続を通じて実施されることが必要であることは言うまでもない。
この点、憲法改正手続法(国民投票法)に関して、日本弁護士連合会は、「憲法改正手続法の見直しを求める意見書」(2009年11月18日)の中で8項目の見直すべき課題を提示している。このうち、国民投票の14日前までのテレビ・ラジオ等における国民投票運動としての有料広告放送に何らの規制が加えられていないことや、最低投票率の定めがなされていないことについては、特に、参議院の附帯決議において「本法施行までに必要な検討を加えること」とされていた。しかし、現在までこれらの点について検討はなされていない。国民投票に付する憲法改正の発議の前までに必要な検討がなされねばならず、この附帯決議の求める検討なくして国民投票がなされるべきではない。

4 以上より、当会は、今般の憲法改正の議論において、これまで指摘した問題点について、国民が熟慮できる機会を保障すること、及び憲法改正の発議の前に憲法改正手続法の見直しをすること、を強く求める。
また、当会は、立憲主義及び恒久平和主義を堅持する立場から、国の将来を大きく左右する今般の憲法9条改正問題について、市民に対し、その問題点を明らかにすることにより、憲法への理解や市民の議論が深まるよう自らの責務を果たすものである。

2018年(平成30年)5月28日
岐阜県弁護士会
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