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「少年法等の一部を改正する法律案」に反対する会長声明
2005年(平成17年)7月2日

本年6月14日,国会において,「少年法等の一部を改正する法律案」(以下単に「本法案」という。)の審議が開始された。現在の政治情勢に鑑みると,今国会中にも本法案の採決が行われるとの見通しが強まっている。
 本法案は,(1)触法少年及びぐ犯少年に対する警察の強制調査を含む調査権限を認める,(2)少年院に収容可能な年齢の下限を撤廃する,(3)保護観察中に遵守事項に違反した少年の少年院送致を可能にするなどの内容を含むものであるが,いずれの点についても以下のとおり重大な問題を孕んでいる。
 まず,(1)については,真実発見のためには触法事案やぐ犯事案についても警察の調査権が必要との考えに基づいて立案されたものと言われる。
 しかし,刑事未成年者に対する調査や処遇については,警察ではなく,福祉的見地を重視し,児童心理に対する理解も深い児童相談所を中心として行うことが適切である。14歳以上のぐ犯少年についても,当該少年が将来罪を犯すおそれがあるか否かの判断にあたっては,福祉的な観点も極めて重要な要素となるのであり,やはり警察ではなく児童相談所を中心として調査,処遇を行うことが適切である。現行法もかかる理解を前提として立法されている。また,「ぐ犯のおそれのある」少年も警察の調査の対象とするなどということは,事実上すべての少年を警察の監視下に置くことにつながり,重大な人権侵害である。
 本年6月13日発表の厚生労働省研究班の調査結果によれば,児童相談所に非行相談のあった児童の約3割が親などによる虐待を,半数近くが親の離婚等による養育者の交代を経験しているとのことであり,近時ますます現行法の福祉重視の理念の深化が求められていることが明らかである。本法案はこれに逆行するものである。
 むしろ,児童相談所の態勢を充実強化し,調査能力の向上をはかることこそ今求められているのである。それをせずに安易に警察を頼りとすれば,警察の厳しい取調べに耐えられない少年が警察官に迎合した供述をすることによるえん罪発生の危険性があり,かえって真実発見からも遠ざかる結果になりかねない。
 次に,(2)については,近時14歳未満の少年が社会の注目を集める重大事件を引き起こすケースが散見され,かかる少年にも相当期間の身柄拘束を伴う処分をすべきとの考えに基づいて立案されたものと言われる。
 しかし,このような事件は従前から一定数発生していたのであって特別に近時増加したわけではなく,かかる少年については,生育歴や家庭環境の問題から情緒が十分に育っていない等の複雑な問題を抱えている者が多く,そのため福祉的援助を必要不可欠としているのであり,一定の強制力を伴う矯正教育の対象とするのは適切ではない。上述の厚生労働省調査結果もこのことを如実に示すものであり,家庭的な雰囲気の下で少年の「育てなおし」を図る福祉的趣旨で設けられた児童自立支援施設を今こそ充実強化することが強く求められている。加えて,上記の立案の趣旨は,少年院を少年に対する処罰の趣旨を含む身柄拘束機関とする捉え方を前提とするものであり,かえって矯正施設としての少年院の特性を否定するものである。
 また,(3)については,保護観察の実効性を少年院送致という強制力で担保しようという考えに基づいて立案されたものと言われる。
 しかし,ぐ犯の程度にすら至らない遵守事項違反のみをもって少年院送致をすることは憲法39条後段の二重処罰禁止に抵触するおそれがある。
 そもそも保護観察は終局処分であり,保護観察所や保護司と少年との信頼関係を基礎とし,社会内において,少年が試行錯誤し,時には遵守事項を逸脱してしまうことも認めた上で,少年自らが少しずつ規範意識を醸成していくことを期待するという福祉的側面も有する制度であり,今日まで概ねよい成果を挙げている。上述の厚生労働省調査結果に鑑みれば,今後も現行制度の更なる充実強化が求められている。ところが,遵守事項を守らなければ施設収容されると威嚇されれば,自発的な真の更生など期待できず、保護観察制度を変容させることとなる。仮に,保護観察の実効性に問題があるというのであれば,保護観察所・保護監察官及び保護司の充実強化こそを必要とすべきである。
 よって,当会は,本法案には反対の意思を表明するものである。

2005年(平成17年)7月2日
岐阜県弁護士会
会長 毛利 哲朗
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