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憲法改正国民投票法案に対する会長声明
2006(平成18)年10月16日

当会は、2005年10月1日、憲法調査推進議員連盟の日本国憲法改正国民投票法案に若干の修正を加えた与党の法案骨子について、同骨子の問題点を指摘し、同案に基づく法案の国会上程に反対する声明を発表した。
その後、与党及び民主党の間で協議が重ねられ、本年5月26日、与党が「日本国憲法の改正手続に関する法律案」(以下、「与党案」というを)、民主党が「日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案」(以下、「民主党案」という)をそれぞれ提出するに至った。
現在、これら法律案は継続審議となっているが、当会が前声明で指摘した最低投票率の設定がない、無効訴訟が限定されているといった問題点は解消されていないし、他の問題点の解消も不十分であって、国民主権、基本的人権の保障という憲法の基本原則からして、以下の重大な問題点がある。
1 与党案、民主党案とも、国民投票の期日については、国会の発議から60日以後180日以内の国会が議決した日としている。国民が憲法改正内容を正確に把握し、その内容について的確な判断をするための十分な国民的議論がなされ、一人ひとりに国民が将来の長きにわたっての国のあり方を熟慮した上で投票できるようにするには、国会の発議から最低でも1年の期間が必要であり、60日との最短期間の設定はあまりにも短すぎる。
2 与党案、民主党案とも、憲法改正原案の発議にあたっては、内容において関連する事項ごとに区分するものとしている。これは各条項ごと又は問題点ごとに投票ができる個別投票の原則を採用したようにも見えるが、前文を改正するような憲法改正案においては、全ての条項が関連するとも評価しうる。国民主権の原理に則り、各条項ごと又は問題点ごとに個別の賛否の意思を問う投票方法をとることを明確にすべきである。
3 与党案、民主党案とも、国民投票運動を「憲法改正案に対し賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘する行為」と定義し、与党案は、裁判官等特定公務員の国民投票運動を全面的に禁止し、公務員、教育者の地位利用による運動を制限して、罰則を科すものとなっている。また、与党案、民主党案とも、投票日の7日前からは放送による広告を制限している。法案骨子と比較すると、与党案、民主党案とも、規制対象が限定されている点は評価できるが、それでもなお、過度の規制がなされていると言わざるをえない。国民投票にあたっては、公務員を含めた全国民の間で、自由かつ十分な意見交換がなされ、主権者たる国民に十分な情報が伝わらなければならない。上記国民投票運動の定義では、憲法のあり方について解説したり意見表明することですら含まれると解釈される懸念があり、表現行為が萎縮しかねない。公務員の地位利用による運動を制限する旨の規定を置かない民主党案も、国家公務員法にてなされている国家公務員の政治的行為の規制を国民投票に関し除外することは予定しておらず、国民投票にあたって十分な意見交換を妨げるおそれがある。
4 与党案、民主党案とも、憲法改正案の広報に関する事務等を行う広報協議会の設置を定めていて、構成委員は、各議院における各会派の所属議員数の比率により割り当てて選任するものとされている。また、各議院の議員数を踏まえて政党に広報放送や新聞広告を割り当てるものとしている。しかし、国会において3分の2以上の多数を占める案に対し、主権者たる国民自らが賛否の判断をすることに憲法改正国民投票の意義がある。国民の前に提示されるべき情報は、賛否のいずれにも偏らない公平・平等なものであるべきで、国会における多数派の意思が反映された広報がなされる制度は設けられるべきではない。
5 与党案は、憲法改正に対する賛成投票の数が有効投票総数の過半数である場合に国民投票の承認があったものとする。また、国民投票が有効に成立するための投票率に関する規定は、与党案、民主党案とも設けていない。この点については、前声明で指摘したとおり、少なくとも改正に賛成する者が、投票総数の過半数となったときに改正についての国民の同意があったとされるべきである。 さらに、国民投票が有効となる最低投票率に関する規定も設けるべきである。国の最高法規の変更が投票権者のきわめて少ない割合の賛成で行われるという事態を回避するためには、少なくとも投票権者の3分の2以上の最低投票率が定められるべきである。
6 与党案、民主党案の国民投票無効訴訟に関する定めは、法案骨子と同様、提訴期間を30日以内とし、一審の管轄裁判所を東京高等裁判所に限定している。前声明にて指摘したとおり、この提訴期間は憲法改正という極めて重要な事項に関するものとしては短すぎるし、管轄の限定も国民の裁判を受ける権利を制限するものであって不当である。また、国民投票の無効事由が限定されていることは、不公正な憲法改正を防いで国民の権利を擁護する最後の砦である裁判所の機能を制限するものであって不当である。
当会は、このように重大な問題点を有している与党案、民主党案のいずれにも反対するとともに、憲法改正国民投票法の制定の是非及び国民主権主義に基づいた真に国民のための憲法改正国民投票法とはどういうものかについて、国民が議論するに足る必要な情報が提供されて、十分に議論する期間が確保されることを、改めて求めるものである

2006(平成18)年10月16日
岐阜県弁護士会
会長 武藤 壽
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