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取調べの全過程の可視化(録音・録画)を求める会長声明
2008(平成20)年2月2日

わが国の取調べは完全な密室で行われており、そのため違法不当な取調が繰り返され、虚偽自白が作られ、これが冤罪を生んできた。昨年(平成19年)に限っても、刑期を終えた後に真犯人が判明して再審無罪となった氷見事件、公職選挙法違反で訴追された12人全員が無罪となった志布志事件、連続殺人で死刑求刑されながら無罪となった北方事件など、違法不当な取調べによって虚偽自白が作られた事件が頻発した。
違法な取調べが横行するのは、取調べが密室で行われるからである。よって、違法不当な取調べを一掃し、虚偽自白による冤罪を防ぐには、取調べの全過程を外部から監視できるようにすること、すなわち、取調べの全過程を可視化(録画・録音)すること以外にあり得ない。
また、自白調書の任意性や信用性が争われる事件では、取調べ状況の尋問に甚大な時間が費やされてきたが、取調べの全過程が可視化されれば、このような争いは法廷から姿を消すことになる。来年5月から実施される裁判員裁判では、市民にわかりやすい審理が求められるとともに、できるだけ明瞭な証拠提出を心がけ、裁判員に過大な負担をかけないことが求められている。自白調書を廻るこれまでのような審理が許されるはずもなく、取調べの可視化は裁判員裁判の不可欠な前提といって良い。
この点検察庁は、2006年7月 取調べの一部録画・録音の試行を開始したが、対象事件も録音・録画する範囲も検察官の裁量に委ねるもので、しかも警察官による取調べは対象とされていない。
しかし、こうした部分的な録音・録画では、密室での取調べの弊害は全く除去されないどころか、むしろ取調べの実態評価を誤らせる危険がある。よって、取調べの一部の可視化では、自白調書を廻る争いは決して無くならない。
すでに欧米諸国のほか、韓国、台湾、モンゴルなどでも取調べの録画・録音等による可視化が実施されているが、取調べに支障を来したとか、治安が悪化したという例は聞かない。そして、自白の任意性や信用性を廻る争いがほぼ無くなっているのである。
平成19年5月の国連拷問禁止委員会による拷問等禁止条約の実施状況に関する第一回日本政府報告書に対する最終見解によれば、「締結国は警察拘禁ないし代用監獄における被拘禁者の取調べが、全取調べの電子的記録及びビデオ録画、取調べ中の弁護人へのアクセス及び弁護人の取調べの立会といった方法により、体系的に監視され、かつ記録は刑事裁判において利用可能となることを確実にすべきである。」との勧告がなされている。
また、今日のわが国の水準からすれば、取調べの全過程を録音・録画することは、技術的にもコストの上でも容易である。
このように、取調べの全過程の可視化は、冤罪を防止し、審理期間の長期化を解消する上で必要不可欠であるところ、その導入には何らの弊害も見いだせない。
よって当会は、裁判員制度の実施を目前に控え、速やかに、立件された全事件について取調べの全過程を録画・録音することを求める。

2008(平成20)年2月2日
岐阜県弁護士会
会長 渡邊 一
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