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自衛隊イラク派兵違憲判決に関する会長声明
2008(平成20)年5月20日

憲法記念日前日の5月2日,自衛隊がイラクで行っている空輸活動が憲法9条1項に違反していると判断した名古屋高裁判決が確定した。憲法9条に関する違憲判決が確定したことは初めてのことであり,歴史的意義を有する判決となった。
 当会は,2004年(平成16年)1月及び同年6月の2度にわたって,自衛隊のイラク派兵に反対する声明を発表してきた。当会は,イラク派兵に反対する理由として,イラク特措法はイラクにおける自衛隊の武力行使を容認するもので,憲法前文及び第9条に違反するおそれが極めて大きいこと,イラクは戦争状態にあり,その全土が戦闘地域であって,イラク特措法2条にいう非戦闘地域は存在しないことをあげた。今回の名古屋高裁判決は,当会の過去2度の声明と基本的に同じ立場をとるものである。
 名古屋高裁は,イラクの現状と自衛隊の活動を詳細に認定したうえで,自衛隊の空輸活動は,それ自体が武力行使にあたらないとしても,「多国籍軍の戦闘行為にとって必要不可欠な軍事上の後方支援を行っている」ものであり,「他国による武力行使と一体化した行動であって,自らも武力の行使を行ったと評価を受けざるを得ない行動である」と述べている。そして,「政府と同じ憲法解釈に立ち,イラク特措法を合憲とした場合であっても」憲法9条1項に反する活動が含まれていることを認めた。この違憲判断に至る論理は極めて明快である。これまで裁判所が憲法判断を回避する傾向にある中で,イラクの現実から目を逸らさずに正面から憲法判断を行ったことは,司法府としての責務を全うしたものとして高く評価されるべきである。
 また,平和的生存権の具体的権利性を認めた点も高く評価されるべきである。判決は,平和の基盤があってこそ憲法の保障する基本的人権が存立しうることを理由に,平和的生存権が,「全ての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的権利であるということができ,単に憲法の基本的精神や理念を表明したに留まるものではない」としている。これまで,「平和」が抽象的概念であること等を理由に具体的権利性が認められてこなかったが,名古屋高裁はそのような立場を批判して平和的生存権の具体的権利性を肯定しており,画期的な判決であるといえる。
 このような歴史的意義を有する判決に対し,内閣総理大臣をはじめとする政府関係者や自衛隊幹部からは,「違憲判断は傍論にすぎない」「関係ない」などとしてこれを軽視・無視する発言が相次いでいる。しかしながら,イラク派兵が憲法違反かどうかは,国家賠償請求の要件である公務員の行為の違法性を判断するためのものであって,正に本論についての判断である。これを「傍論」と強弁するのは誤った評価であり,認められない。
 憲法は国の最高法規であって,憲法に反する国家行為は違憲・無効であるが,この最高法規性を確保するため裁判所には違憲審査権が与えられている。他方,政府は憲法を尊重し擁護する義務を負っているのであるから,裁判所が違憲判断をした場合には,政府はこれを真摯に受け止め,自らの行為を憲法に適合するように是正しなければならない。しかし,判決以降の政府及び自衛隊関係者による発言は,違憲判断を真摯に受け止めるものではなく,むしろ司法を軽視すると同時に最高法規たる憲法をも軽視するものであって,到底看過することはできない。
 当会は,政府及び自衛隊関係者による名古屋高裁判決を軽視・無視する一連の発言に対し,強く抗議する。また,当会は,日本政府に対し,司法府の憲法判断を尊重して違憲状態を解消し,自衛隊をイラクから即時撤退させることを強く求める。

2008(平成20)年5月20日
岐阜県弁護士会
会長 幅 隆彦
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