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少年法の適用年齢の引き下げに反対する会長声明2015年(平成27年)7月9日

公職選挙法の選挙年齢の改正に伴い、自由民主党は、「成年年齢に関する特命委員会」を設置し、少年法の適用対象年齢の引き下げに関し検討を始めた。
 しかし、法律の適用年齢を考えるにあたっては、それぞれの法律の立法趣旨に照らし個別の法律ごとに慎重かつ具体的に検討すべきである。選挙年齢に関しては、若者の意見を国政に反映させるという民主主義の観点から検討される問題であるのに対し、少年法の適用年齢は、非行を行った少年の更生のために、国家がどのような処遇を行うべきかという観点から考えるべきものである。よって、少年法の適用年齢を選挙年齢と合わせて考える必要性はない。
 少年法は、20歳未満の少年が非行を犯した場合に、これらの者が未だ人格の形成途上にあり心身ともに未発達なことから、刑罰を科すのではなく保護処分を科すことにより、その健全育成を図り、再犯を防止するという目的がある。かかる立法趣旨を受け、家庭裁判所や少年鑑別所は人間行動科学に基づく調査と審理を行い、非行事実の認定だけでなく、非行の原因と背景を解明し、性格の矯正や生活環境の調整を行い、少年の立ち直りの為に最善の処遇が行われるようにしている。少年院を退院した者が再び少年院や刑務所に入所する割合は、刑務所を出所した若年受刑者のそれより一般的に低く、このような処遇が一定の効果をあげているものと考えらえる。
 少年法の適用年齢の引き下げは、再犯防止の観点からすると効果的でないばかりか、悪影響の方が著しい。
 すなわち、成人の刑事事件の多くは起訴猶予や罰金とされており、再犯防止のための手当てがほとんどされていないのが現状である。公判請求がされる場合でも、その大半は執行猶予付きの判決となっており、そのうち保護観察が付されるのはごく一部である。少年の場合は、全件が家庭裁判所に送致され、少年の素質や環境について調査・分析がされ、少年の為に最善な処遇が行われるようにされている。
 例えば、成人が覚せい剤の自己使用事犯を犯した場合、初犯であれば、その大半が執行猶予つきの判決となり、保護観察が付されることはほとんどない。その者が覚せい剤に手を出すこととなった環境的要因や、今後の防止策について深く検討されることは手続き上は保障されていない。18歳、19歳の少年がこのような事件を起こした場合、その少年の資質や環境等について調査が為されたうえで、今後の再犯防止のためどのような処分がもっとも適しているか検討をしたうえ、少年院送致になることもあれば保護観察処分になることもある。少年院送致になった場合は、少年院において薬物防止教育やその他職業訓練等その少年に適した処遇を受けることになるし、保護観察になった場合は、その少年ごとに必要な遵守事項が定められ、定期的に保護司・保護観察官と面接し指導を受けながら改善更生を図っていくこととなる。その過程で環境調整が図られていくこともある。少年法の適用年齢を引き下げることは、現在18歳・19歳の少年に為されているこれらの手厚い処遇を全くしなくなるということであり、かえって更生の機会を奪い、少年の再犯リスクを高めることとなりかねない。
 少年法の適用年齢の引き下げについては、これまで為された取り組みや成果を踏まえ、さらには少年の保護・処遇に関わってきた専門家(家庭裁判所調査官、鑑別所技官、保護観察官、学校関係者、弁護士など)の声を尊重しながら、この年代の若者が罪を犯した場合にどのような処遇をすることがもっとも適切かという視点から考えるべきであり、選挙年齢の引き下げと連動して決められるようなものではない。
 よって、当会は少年法の適用年齢を引き下げることに強く反対する。

2015年(平成27年)7月9日
岐阜県弁護士会
会長 森   裕 之
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