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衆議院における「テロ等準備罪」の採決の強行に抗議する会長声明
2017年(平成29年) 6月 9日


1 衆議院は、「テロ等準備罪」を創設する組織犯罪処罰法の改正案について採決を強行し、同法案は平成29年5月23日に衆議院を通過した。
2 政府は、「テロ等準備罪」について、テロ等防止には国際組織犯罪防止条約の批准が必要で、条約批准に向けて立法措置が必要と説明してきた。しかし、当該条約は、金銭的利益その他の物質的利益を得るために犯罪を行うマフィアのような犯罪組織による犯罪防止・措置について国際協力を推進するものである。テロ等対策のために本条約を批准し、条約批准のため立法措置を講じる必要性についての審議が充分行われていない。
3 また政府は、主体を組織的犯罪集団に限定したから一般人は捜査の対象外と説明するが、市民団体のような合法的組織の活動でも組織的犯罪集団のそれと疑われることがあれば、一般人に捜査が及ぶ懸念が残る。
 加えて政府は、「テロ等準備罪」は、犯罪の計画行為に加え準備行為が行われて初めて処罰対象とするもので、共謀罪でないと説明する。しかし、準備行為には法益侵害の危険性がない行為も含まれ、政府の説明では、例えばATMでの現金の引き出しも準備行為にあたるという。このような法益侵害の危険性のない行為まで準備行為に該当するのであれば、実質的には「テロ等準備罪」は共謀そのものを処罰対象とすることに他ならない。
 このように、政府の説明によってもなお「テロ等準備罪」は適用要件が極めて曖昧であり、結果的に捜査の対象範囲が格段に拡がる危険がある。とりもなおさず、捜査機関による監視が日常化するおそれがあり、憲法が保障する思想・信条の自由、表現の事由、集会・結社の自由などの人権が侵害され、これらの権利行使に強い萎縮効果が生じかねない。
4 以上のように、「テロ等準備罪」はその目的や処罰の範囲などに未だ不明な点が多々あり、憲法の保障する人権が侵害される懸念がある。衆議院では、30時間の審議を経たとして採決が強行されたが、充分な議論が尽くされておらず、市民の不安や懸念が払拭されたとは言い難い。
 当会は、弁護士法が規定する基本的人権擁護の立場から、人権が侵害されるおそれが高い「テロ等準備罪」の成立に強く反対するものであり、先般の衆議院における採決の強行についても強く抗議する。

2017年(平成29年)6月 9日
岐阜県弁護士会
会長 浅 井  直 美
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