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消費者契約法とはどんな法律か1鷲見和人会員

消費者問題救済センター委員長鷲見和人

消費者の契約に関する相談件数は増加する一方です。全国の消費生活センターに寄せられた契約に関する相談の数は1998年には 約30万件に達しており,ここ10年で3倍 の増加を見ています。これは,消費者センターに寄せられた相談件数だけですから,氷山の一角で水面下にはもっともっと多くの苦情の件数(暗数)が潜んでいると見なければなりません。これは,何を物語っているのでしょう?

本来事業者と消費者との間の自由契約に任せておけば取引の条件は適切に定められるはずであるという民法や商法等の建前と社会の現状との間に,大きな開きがあることを物語っています。事業者と消費者が取引をする際に,事業者側から,消費者に必要な情報が提供されなかったり,冷静な判断を妨げるような不適切な働きかけがあったり等して,消費者が,その場で適切で合理的な意思決定が行えないケースが目立ってきているということじゃないでしょうか。従って事業者と消費者との間で本来の法の建前を回復するためには何らかの対策が必要であるということではないでしょうか。

かといって,これまでに何の対策もされなかったわけではありません。いままでも、これらのトラブルは個別の法律によって規制されてきました。訪問販売に関するものは特定商取引法(旧「訪問販売法)で、クレジットにかかわるトラブルは割賦販売法でといった具合です。しかし、規制対象が指定商品に限られる(特定商取引法第二条,割賦販売法第二条) など個別の法律の守備 範囲は限定されており、そこから漏れたトラ ブルの解決はなかなか困難でした。冒頭に述べた相談件数の増大の数字も,個別法での対応には限界があるということを物語っているのではないでしょうか。

しかも,これらの法律は、日本の縦割り行政の手法を反映して、それぞれの主務官庁が本業の担当の業界の保護育成のかたわら,業界を監督するという発想で作られており、消費者の権利はどうしてもつけ足しとならざるを得ませんでした。
 *(豊田商事事件の際,主務官庁のたらい回しの結果政府の被害対策の動きが大幅に遅れたことは記憶に新しい)

また,近年「規制緩和」がしきりにいわれています。しかし、現実の市場における消費者と事 業者との圧倒的な力の違い(情報の質及び量並 びに交渉力の格差)に照らすと、規制を取り払うだけでは悪徳業者のやりたい放題という結果にもなりかねません。規制緩和を行うためには、消費者が自由な市場で独立して行動できるだけの権利が確立していなければならないのです。

(日弁連では1989年の人権大会において 「消費者被害の予防と救済に対する国の施策を求める決議」を行っております。是非ここで,決議の内容,提案理由をご参考にお読み下さい。より理解を深めていただけるのではないでしょうか。)

わが国でも消費者の権利確立のための法律の整備が行われてきました。そのひとつが九四年に作られた製造物責任法(PL法)です。PL法は消費者が購入した商品から受けた 被害の賠償を(製造者が,消費者と直接売買等の取引きをしていなくても) 製造者に命ずるものであり、これから説明させていただきます消費者契約法は商品を購入する際の契約について消費者の権利を確立しようとするものですから、この両者は車の両輪の関係にあるといえましょう。そのいずれかが欠けても,安全な消費生活を営めないのです。

実は消費者にはもう一つの権利が必要だと 思われます。それは、消費者信用における消 費者の権利の確立です。
 消費者信用は「消費者金融(サラ金)」と「販売信用(クレジット)」に区別されますが,消費者金融において,いまだ年30%近い超高金利と過剰与信によって多重債務者が激増し、販売信用の分野においては問題のある加盟店にもクレジットを使用させる結果、悪徳商法によって買わされた商品の代金支払いに苦しむ被害者は後を絶ちません。
 この分野においても、ばらばらの規制のす き間を埋めた統一的立法(統一消費者信用 法)がぜひ必要であり、以上の3点をセットにした立法を持たないのは、先進国では日本だけともいわれています。

*上に述べた「統一消費者信用法」の制定については,2000年10月6日岐阜市で開催された日弁連人権大会で「統一的・総合的な消費者信用法の立法措置を求める決議」がなされています。ここで,その決議内容・提案理由を是非ご覧下さい。

2001年の4月1日から施行される消費者契約法は、一言でいうならば、従来の個別の法律のすき間を埋める包括的民事ルールということになり、要点は次のの二点と言えましょう。

1つは契約過程に関する規定です。事業者 が「重要事項に関する情報」を開示しなかったり虚偽情報を伝えた場合、また消費者を困惑させて契約に至った場合には、消費者は契約の取消を主張できることになりました。

2つ目は、契約内容に関する規定です。消費者にとって「不当に不利益な」契約条項については、消費者はその無効を主張できます。

これまでも基本である民法の規定を用いて消費者を救済しようとする努力がなされてきましたが、消費者契約法の制定により簡明な解決が可能になります。

5 広い適用範囲(2条)

消費者と事業者の間で締結されるすべての契約(消費者契約)が対象となります。商品の購入だけでなく、例えば、医師の診察(診療契約)にも適用が考えられ、契約の重要事 項と思われる治療の内容・薬の内容等についての開示も、この法律を通じて進むことが期待されます。
 *(ただし,保険診療の場合,診療契約を保険者を要約者,医師を諾約者,患者を第三者とする,第三者のためにする契約ととらえる判決例に注意)

6 契約締結過程の適正化(4条)

1つは「重要事項」に対する事業者の情報提供義務です。重要事項とは、「契約対象、契約条件」に関することとされ、「購入動機 ・購入目的」がストレートには含まれないな ど範囲が狭すぎる点にうらみが残りますが、 重要事項を告げなかったり、不実告知をした りすれば契約の取消ができます。
 2つ目は「不退去・監禁」によって「困惑させて契約」した場合です。この場合も取消 ができます。
 注意したいのは、これらの場合,取消ができるのは原則として契約のときから六か月(7条)と短いことです。

7 契約内容の適正化

7項目の不当条項リスト(8・9条)が定められました。このリストにある不当条項はその効力を生じず、消費者が一方的に不利益な条項を押しつけられる可能性が減りました。

具体的には、事業者の責任を全部免除する等の条項は無効(8条)、事業者が消費者に損害賠償する場合の額が同種通常の平均的損害に限定(9条1号)、延滞の場合の損害金・違約金が年14.6% までに限定(9条2号)(貸金の場合には適用なし)されたりしています。*(14.6%は日歩4銭)

また、不当条項リストを補うため「民法等の一般法の任意規定より消費者の権利を制限する条項であって信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」(10条)も無効とされました。この条項の活用はこれからの課題と思われます。

今回の法律の原案(要綱案)を検討していた国民生活審議会では,その最終盤に事業者の側からの激しい巻き返しがあり、当初の内容が相当後退してしまったと伝えられます。この点は国会の議論でも問題となり、法案成立の際の付帯決議(衆議院商工委員会参議院経済・産業委員会) には五年を目処に法律の見直しをすることが定められました。

他にもこの決議には、国民生活センター・各地の消費生活センターの充実・強化、そこで活動する消費生活相談員の育成・人材確保をはかることや、今回見送られた差止請求・消費者団体に対する訴権の付与(これは悪徳商法の被害拡大の防止に極めて有力な手段となります)の検討が盛り込まれています。

この法律を、今後更に良い内容とするためにも今後の使いこなしが期待されます。


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