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消費者契約法とはどんな法律か2鷲見和人会員

消費者問題救済センター委員長鷲見和人

この4月から施行された消費者契約法のポイントは次の3点です。

@広い適用範囲(2条)
 消費者と事業者との間で締結される契約すべてに適用される基本的な法律です。
A契約締結過程の適正化(4条)
  契約が適正に結ばれるように,業者が重要事項に関する不実告知によって誤認さた場合,不退去・監禁によって困惑させた場合,消費者に契約の取消権を認めました。
B不当条項リスト(8・9条)
 消費者の利益を害する条項をリスト化し,消費者が一方的に不利益な条項を押しつけられることを防止しました。

 さて,新しい法律はどんな使いこなしができるか,いくつかのケースで検討してみましょう。

2【ケース1】

「学習教材のセールスマンが,長々と説明・勧誘を繰り返して帰ろうとしません。途中で何度も「お引き取りください」と断ったのですが,二時間も粘られ,とうとう根負けして契約をしてしまいました」

クーリングオフができれば問題ありませんが,制度を知らなかったりして,8日間の権利行使期間が過ぎてしまうこともあります。

消費者契約法ができる前ですと,業者が居すわって長時間の勧誘を行なったことが,民法で契約の取消事由に定める「強迫」(民法96条)にあたることが必要で,業者に「奥さんと子供さんの教育についてお話をしていたら,つい時間が経っちゃって」などと言い訳をされると,「強迫」の立証はなかなか困難でした。

しかし,消費者契約法では,「帰ってくれといったのに帰らなかった」ことを「不退去」ととらえて,契約の取消を行なうことが可能です。(消費者契約法4条3項1号)

3【ケース2】

「異性から勧誘の電話があり,喫茶店などで会員になれば安く海外旅行に行けると話し込む内に,いつのまにか高額のビデオ教材を買わされてしまっていた」

こちらは若者に多発している被害です。これには「重要事項に関する不実告知」の条項が使えそうです。安く行けるはずの旅行が一般のツアーの代金と差がなかったり,やめたくなったら既払金分だけで中途解約できるといったセールストークがされることが多く,これらは,重要事項に関する不実の告知として消費者契約法では取消事由となります。

従来は,これらの不実告知が取消理由になるためには,「詐欺」(民法96条)や「錯誤」(民法95条)に該当する,相当程度に重大なものであることが必要と考えられており,消費者契約法で取消事由が広がったと言えましょう。

また,この商法の代金は50万円を超えるようなことも多く,支払にはクレジットが利用されることがほとんどです。

クレジット契約は,業者との販売契約とは一応別個の,クレジット会社との間の立替払契約と考えられています。販売契約に取消事由があるときには,割賦販売法(30条の4)によって,立替払契約にも取消を抗弁として主張できるとされている関係上,クレジットの支払を止めることはできても,既に支払ったお金を取り戻すことは困難だとされてきました。

消費者契約法では,媒介の委託を受けた第三者(販売業者)が不実告知等を行なった場合,媒介の委託をした者(クレジット会社)に対してもその効果が及ぶとしていますので(5条),この条項により,直接クレジット契約を取り消せば既払金の返還請求もできることになります。

4【ケース3】

「賃貸アパートを出る際に多額の修繕費用(原状回復費用)を請求された」

アパートや借家の退去時に,畳替やクリーニングの費用として多額の原状回復費用を請求されるトラブルも多く見られます。ところが,これらの契約書には「建具・畳・フスマ・壁紙等の破損,汚れは一切賃借人の負担において現状に回復する」のような特約が付されることが多く,やむなく支払をする消費者も多いと思われます。本来,通常の利用によって生じる損耗は,家賃に折込み済のものであって,退去時に原状回復費用として徴収するのは二重取りとなりましょう。消費者契約法の10条によれば,この特約は,通常の損耗費用を家主負担とする民法の原則を,一方的に消費者に過重しているため,特別の事情がない限り無効となりましょう。

消費者契約法自体は,抽象的な規定のため,劇的に消費者取引を変えるものではありません。しかし,以上に例として挙げたように,あらゆる分野の消費者取引の過程に,この法の精神がしみ込んでゆけば,消費者の権利を確立することに大いに役立つものと思われます。


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