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公害対策環境保全委員会栗山会員の論文

東濃の地層科学研究と地層処分の可能性岐阜県弁護士会 栗山 知

第1 東濃地科学センターで行われている「地層科学研究」について

1 東濃地科学センターとは何か

東濃地科学センターとは、核燃料サイクル開発機構(以下「核燃」という。動力炉・核燃料開発事業団が1998年10月に改組したもの。)の一部門であり、現在、岐阜県土岐市及び瑞浪市において「地層科学研究」等を行っている。  もともとは、1965年に東濃探鉱事務所として開設され、東濃ウラン鉱床の探鉱を行っていたが、ウラン探鉱は中止され、1986年から地層科学研究がなされてきた。

2 地層科学研究とは如何なる研究か

地層科学研究とは、高レベル放射性廃棄物の地層処分のための研究である。
 地層処分とは、高レベル放射性廃棄物を地下300m以深に埋設して行う最終的な処分をいう。
 そして、地層科学研究の研究課題は以下の3つである。
 @地質環境特性についての研究(地下水や岩盤、ウランなどの物質移動について、どうなっているのか、なぜそうなったかを研究する。)
 A地質環境の長期安定性についての研究(地下水や岩盤などが今後どのようになっていくかについて研究する。)
 B調査技術・調査機器の開発
 すなわち、東濃地科学センターは、東濃地域において、地表から地下深部までの岩盤(地下構造)や地下水の流れを解明し、今後変化するかしないかまでも研究対象としているのである。

(注)地層とは、通常の意味では「泥・砂・礫・火山灰・生物の遺骸などが海底や陸上で水平に広がって沈積した層状のもの。普通は固まって堆積岩・火山砕屑岩となっている。」(広辞苑)ものをいう。地層処分は花崗岩を対象にもしているが、地下に広がる花崗岩体については、通常地層という言葉は用いられないから地層処分と言う用語はおかしい。深地下埋設処分とでも言うべきであろう。土井和巳氏は「深層隔離」という言葉を用いている。しかし、ここでは、混乱を避けるために既に使われている地層処分という言葉を用いることにする。

3 東濃地科学センターで行われている具体的な研究内容等について

地層科学研究として、具体的には以下の研究が行われている。

@東濃鉱山における調査試験研究
 東濃ウラン鉱山の坑道を利用し、さらに地表や坑道から深さ200メートルのボーリング等をして、岩盤の力学特性や坑道周辺の地質環境に関する研究、岩盤中においてウラン等の物質移動に関する研究、東濃鉱山を横切っている月吉断層部の岩石組成や地下水の流動状況についての研究を行っている。

A金属腐食実験
 厳密には「地層科学研究」には含まれないかもしれないが、1987年3月から1999年3月まで、東濃鉱山の坑道内において、高レベル放射性廃棄物処分に使用される可能性のあるステンレスやニッケル合金、チタン、ガラスなどの各材料の小片を地下水に浸し、腐食・耐食性や化学反応などを長期的に調べていた。高レベル放射性廃棄物処分に直接つながる実験であり、極めて重要な事実である。
 しかし、東濃地科学センターが、このような金属腐食実験を行っていることをマスコミや市民側に直接発表したのは、1989年になってからであった。

B広域地下水流動研究
 1992年度より、東濃地科学センターは、広域地下水流動研究として、地下深部までの地下水の流れや水質に関する研究を行っている。
 1997年、東濃鉱山の北東にある赤河断層、南東に位置する屏風山断層、北西を流れる飛騨川に囲まれた30q四方について航空機(セスナ機)を用いた空中物理探査(磁気探査)を行い、その結果、東濃鉱山を含む約10q四方を詳細な研究領域に設定した。すなわちこの10q四方の範囲における地下約1000mまでの地下水の流れや水質などを総合的に把握する研究をしているのである。
 この研究領域内で、航空機(ヘリコプター)を用いた空中物理探査(放射線(γ線)調査、磁気探査、電磁探査、VLF探査)や、地表における物理探査(地震探査、電磁探査など)、地表地質調査、表層水理定数観測を行い、さらには、表層ボーリング(深さ約30mのもの27本)と深層ボーリング(深さ約500mのもの4本、1000mのもの7本を掘削、さらに1000m級を2本準備中)を行い、直接地下の状況を詳細に調査している。
 高レベル放射性廃棄物処分の研究において、このような詳細な研究がなされているのは日本ではこの東濃地域だけである。

4 予備調査域(4平方km)の設定について

この広域地下水流動研究の中で、特に注目されるのはヘリコプターによる空中物理探査の予備調査と称して、前述の10q四方の地域内に、東濃鉱山を含む4平方q(2.5q×1.6q)の範囲が設定され、かなり詳細な空中物理探査が実施されたことである。
 我々の調査において、なぜこのような4平方qの調査域を設定したか質問したが、東濃地科学センターは「民家や公共施設を避けたら偶然にこの範囲になった。」旨の回答をするのみであった。
 この予備調査域の広さ(4平方q)は、ガラス固化体4万本を平面上に埋設処分する場合に必要な処分場の規模と一致している(1997年7月科学技術庁 原子力委員会 高レベル放射性廃棄物懇談会)。
 さらに、この予備調査域は後で触れる「超深地層研究所」の予定地である正馬様洞用地に隣接するように設定されているが、高レベル放射性廃棄物処分場とその研究施設を隣接しておくという報告書(1988年9月 原子力産業会議「地層処分に関する社会・経済的評価調査研究」)もある。
 また、この4平方qの範囲内には、深層ボーリングは1本も掘削されていない。詳細に地下を研究するための予備調査域ならば、この地域内に深層ボーリングしてもおかしくなく、むしろこの地域内にボーリングをすることが自然であると思われる。
 しかし、もし仮に将来この地域を高レベル放射性廃棄物処分場に想定しているならば、この地域は深層ボーリングをすることなく「無傷」な状態にしておかねばならない場所である。この点を率直に東濃地科学センター側に尋ねたが、ボーリングの場所は地権者等の関係で自由に決められないとの回答があるのみで、この点についての合理的な説明は得られなかった。

5 超深地層研究所計画について

超深地層研究所は、高レベル放射性廃棄物の地層処分のための深部地下環境の研究を行う施設であり、核燃は、東濃鉱山の隣接地である岐阜県瑞浪市明世町の核燃所有地(正馬様洞用地)に設置しようと計画している。その計画によれば、超深地層研究所の地上施設と地下約1000mにも及ぶ地下施設を建設しようとしており、世界的にも例がない深度の研究施設である。
 核燃は、この超深地層研究所計画による地下深部の花崗岩体を直接対象とした地層科学研究を、約20年にわたって展開しようとしており、現在はその第一段階として地表からの調査予測研究を行っており、1000m級のボーリングを4本掘削する等している。
 この超深地層研究所による地層科学研究は約20年の時限的研究であり、その跡利用に関して「超深地層研究所跡利用検討委員会」が設置されている。この委員会は、主として岐阜県、瑞浪市の行政、及び、核燃の代表者と地元議会関係者、婦人会長、岐阜大学教授らによって構成されているが、第1回が1996年8月13日、第2回が1998年6月2日に開催されたのみで、この委員会の開催状況から判断すると、この委員会は極めて形式的なものといえる。

第2 東濃地域に高レベル放射性廃棄物処分場が作られる可能性について

1 東濃地科学センターとは何か

核燃は、東濃地域において高レベル放射性廃棄物処分のための地層科学研究を続けてきており、このような詳細な研究がなされているのはこの東濃地域だけである。さらに前述の4平方kmの区域の設定などは、将来この地に高レベル放射性廃棄物処分場を建設することを想定しているようにも思われる状況である。
 このような状況の中で、地元住民らの間に将来この東濃地域に高レベル放射性廃棄物処分場が建設されることになるのではないかとの懸念が広がり、岐阜県弁護士会にその調査を求めてきた。それを受けて、岐阜県弁護士会と日本弁護士連合会の公害対策・環境保全委員会が共同してこの問題を調査してきた。
 我々は、核燃や岐阜県、土岐・瑞浪両市、科学技術庁などから話を聞き、さらには、アメリカのワシントンDCに行って、アメリカの高レベル放射性廃棄物処分の問題についても調査をしてきた。

2 岐阜県などの行政側の考え方

岐阜県や土岐・瑞浪両市の行政側の話によると、東濃地域で地層科学研究を続け超深地層研究所を建設していったとしても、将来東濃地域が高レベル放射性廃棄物処分場にされることはないと言う。
 その根拠として、平成10年9月18日付けの科学技術庁長官が岐阜県知事宛に出した「動力炉・核燃料開発事業団東濃地科学センターが推進する地層科学研究について(回答)」(以下、「科技庁回答」という。別紙資料5)が挙げられている。そこでまず、この文書の内容等を検討する。

3 科技庁回答の内容・解釈

科技庁回答は、2項に分かれている。
 第1項は、東濃地科学センターが行っている地層科学研究では、研究実施区域に放射性廃棄物が持ちこまれることはないことを約束している。これは、平成7年12月28日に、岐阜県知事、瑞浪市長、土岐市長、動燃理事長の四者で締結された「東濃地科学センターにおける地層科学研究にかかる協定書」(以下「四者協定」という。別紙資料2)の第1項と基本的には異ならない。
 これによれば、超深地層研究所のみならず、地層科学研究実施区域には放射性廃棄物は持ち込まれないことになるが、しかしこの条項は「地層科学研究」において放射性廃棄物を持ち込まないとしているものであって、処分場とは別の問題である。また、地層科学研究においても、廃棄物ではない放射性物質の持ち込みは禁じられているものではない。
 なお、超深地層研究所(仮称)については、高レベル放射性廃棄物の処分場にするものではないとする科学技術庁長官の文書もあるが(資料1、資料3)これも、超深地層研究所に限定しており、それ以外の場所については何ら言及されておらず、超深地層研究所以外の場所が処分場とされてもこの文書に反するものではない。
 第2項は、高レベル放射性廃棄物処分場選定において、「貴職(岐阜県知事を指す。)をはじめとする地元が処分場を受け入れる意思がないことを表明されている状況においては、岐阜県内が高レベル放射性廃棄物の処分地になることはないものであることを確約」している。
 これは、現在、岐阜県知事が処分場を受け入れる意思のないことを表明しているから、その状況においては岐阜県内を処分場にすることはないというものであって、将来にわたって岐阜県内を絶対的に処分場としないことを確約したものではない。
 もし、将来岐阜県知事が受け入れる意思のないことを表明しない状態になれば、岐阜県内を処分場としても何らこの条項に反するものではない。特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律においても、概要調査地区等の選定に当たってはその所在地を管轄する知事及び市町村長の意見を聴きそれを尊重する旨の規定があるが、知事等の同意が要件とされていないことに留意すべきである。
 従って、この科技庁回答をもって東濃地域が処分場とならないと言うことはできず、かつ、地元の知事等の意見が尊重されることは全国どこも変わりがないのであるから、この科技庁回答は岐阜県を他の地域よりも優遇したものでもない。岐阜県を処分場とするという選択肢は、慎重に残されているものと考えざるを得ない。

4 4平方kmの設定について

そこで、東濃地科学センターで行われている地層科学研究について再考すると、やはり、4平方kmの予備調査域の設定が極めて重要であると思われる。
 すなわち、この4平方kmという面積は、前述のように高レベル放射廃棄物のガラス固化体4万本を平面状に埋設処分する場合に想定される処分場の規模4平方kmと完全に一致している。しかし、予備調査域として4平方kmと言う区域を設定する必然性は全く示されない。なぜ、2.5km×1.6kmという中途半端な区域を設定しなければならないのかその理由は不明である。
 そして、この区域は超深地層研究所を避けその隣接地に設定されていること、この区域内には500mを超える深層ボーリングが掘られていないことが重要である。
 もし、この4平方kmを処分場として想定しているのであれば、深層ボーリングをしないことは極めて明確に理解できる。すなわち、処分場の岩体にボーリングで穴を開けてしまうと、その孔が地下水の通路となり、岩盤の天然バリアとしての性能を失うことになるからである。
 東濃地科学センターに調査に赴いた時、地元住民の危惧を払拭するためにこの区域内に1000m級のボーリングを実施したらどうかと尋ねたところ、住民を安心させるためにボーリング費用約1億円をかけることはできない、また、地権者の関係もあるので自由にボーリング位置を決定できない旨の回答がなされた。しかし、我々が瑞浪市長に同じ質問をしたところ、住民の不安を払拭するためにこの区域内で深層ボーリングをして欲しいと望んでいるとのことであった。地元の市長も望んでいるのになお、この4平方km区域内に深層ボーリングをせず、地層科学研究を続けることは、この区域を処分場と想定しているとの疑いを払拭できない。

5 ナチュラルアナログ

核燃は、1999年11月、「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性‐地層処分研究開発第2次取りまとめ‐」(以下、「2000年レポート」という。) を発表した。
 2000年レポートには「ナチュラルアナログ」と言う言葉が出てくる。これは、「類似した自然現象」ということであろう。このナチュラルアナログ研究の事例として、東濃のウラン鉱床が出されている。東濃ウラン鉱床は約1000万年まえに形成されたとされるが、その後に地質変動や月吉断層の活動があったにもかかわらず、ウラン鉱床として保存されてきた。このことから「東濃ウラン鉱床は地質環境がさまざまな天然現象を被ってきたにもかかわらず(また、その結果、一時的に擾乱を受けたとしても)、長期的にみれば安定な状態を維持してきたことを示す天然の実例といえる。」とされているのである(2000レポート総論レポートV−80)。
 我々は、なぜ、東濃地域で高レベル放射性廃棄物のための研究がなされているのか疑問であったが、それはこのウラン鉱床の存在と無関係ではないと考える。東濃地域の岩盤はウラン鉱床を保持してきたのであるから、他の放射性物質も保持し得る能力を有しているのではないかと「類推」されてしまうおそれはないであろうか。

6 処分場計画のスケジュールからの考察

我が国における高レベル放射性廃棄物の地層処分計画は、2010年〜2015年頃までに処分地を選定し、その後処分場の建設を始め、2030年〜2040年までには処分場の操業を開始するというものである。
 安全に高レベル放射性廃棄物を処分しようと考えるならば、処分場候補地の地質、断層、岩盤の状態、地下水の状態などを徹底的に調査しなければならない。これらの調査が数年程度でできるはずはなく、アメリカのユッカマウンテンの調査も1987年から現在まで続いており、さらに2010年まで行われる予定であって、その調査に23年間も要するのである。
 もし、今後、東濃以外の地を処分場候補地にするならば、その選定時点から約20年もかけて右の調査を行い、適地か不適地か決定することになるが、それでは到底当初のスケジュールどおりに処分場の操業をすることは不可能となってしまう。東濃で超深地層研究所が作られ、さらに地層科学研究が進むならば、そのデータは処分場の適不適に使用できるので、別の地を処分場候補地にするのに比べて大幅な時間短縮が可能となり、先のスケジュールに合わせた操業も可能となる。
 このように処分場計画のスケジュールを考えると、地層科学研究が進めば進むほど、別の地を処分場にすることはできなくなってくるのである。

7 特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律について

2000年5月31日、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律が制定された。この法律では、順次、概要調査地区・精密調査地区・最終処分施設建設予定地を選定していくことになるが、その安全性を担保する科学的な選定基準は極めて概括的であり、基準としては定められていないに等しい。詳細な基準は今後、通商産業省令で定めるということになっているが、この基準がどのように決められるかが非常に重要である。
 しかし、右の基準を作るに際しても、机上の理屈だけで作ることは不可能であろうから、東濃で超深地層研究所が建設され、深地層のデータが集積されれば、そのようなデータがあるのは日本で東濃だけであるから、そのデータを利用してその上で基準が作られることになるであろう。東濃のデータを元に基準が作られると、その基準からすれば東濃は処分場に適地となる可能性は極めて大きいことになる。

8 処分場の受け入れは政治的決着しかないこと

現状において、岐阜県も土岐市・瑞浪市も高レベル放射性廃棄物処分場とすることは反対している。おそらく、日本中どこでも自分の裏庭に高レベル放射性廃棄物処分場ができることは望まないであろう。アメリカにおいても、1984年、エネルギー省がネバダ州、テキサス州、ワシントン州の3ヶ所を処分場候補地と選定したが、直ちにこれらの全ての地から激しい反対、抵抗が起こり、大規模な政治的問題となった。そこで、この問題はエネルギー省から議会に委ねられ、1987年、政治的にネバダ州のユッカマウンテン1ヶ所に決定されてしまったのである。
 このように、高レベル放射性廃棄物処分場は、通常の判断からするならばどこも引き受け手のないものであり、またその絶対的な安全性が保証されるものではないことから、その解決は政治的にしか決着しないというおそれが大きい。そうすると超深地層研究所がありそこで研究が進んでいるという事実は、政治的決着に関して極めて重要な要因になってくる可能性が高いと思われる。

9 まとめ

以上の点を考えると、このまま東濃で超深地層研究所が建設され、地層科学研究が進んで行くならば、将来、東濃が高レベル放射性廃棄物の処分場となる可能性は高いと考えられる。

第3 東濃地域は地層処分場の適地か

東濃地域に高レベル放射性廃棄物処分場が造られる可能性があり、前述の4平方kmの予備調査地域が処分場とされる可能性が高いと考えるが、果たして東濃地域は処分場として適地であろうか。我々は、以下の諸点から、東濃地域は高レベル放射性廃棄物の処分場として不適地であると考える。

2 地震・活断層が多いこと

岐阜県は、日本の中でも活断層が密集している地域であり、濃尾地震を起こした根尾谷断層、飛騨地方の跡津川断層、そして東濃地方の阿寺断層と第一級の活断層がある。これ以外にも東濃地方には、赤河断層、屏風山断層、恵那山断層などの活断層があり、数多くの地震を引き起こしてきた。1891年に発生した濃尾地震はマグニチュード8であり、世界でも最大級の内陸型の地震である。1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震はマグニチュード7.2であるから、濃尾地震はこの兵庫県南部地震より16倍も大きい地震である。濃尾地震によって岐阜県内はもとより、広く周辺まで大きな被害をもたらした。
 このような活断層は1000年から2000年に一度の割合で大地震を引き起こすと言われており、高レベル放射性廃棄物が通常のウラン程度の放射能に減衰するまでの10万年の間には、一つの断層で50から100回の大地震は発生することになる。先に上げた断層だけでも6つあるので、この6倍の数の大地震に見まわれることになり、東濃は非常に危険な地域であると言わざるを得ない。
 また、これらの大地震の前には、前震が発生し、周辺の地盤は圧縮されることで微小な割れ目が発生すると言われている。そうすると、地下水の流れ方にも影響が及ぶ。さらに、大地震の後には余震が発生する。余震は断層の外の周辺に及ぶため、処分場が大地震の断層で壊されなかったとしても、余震の直撃を受ければ破壊されてしまうことになる。
 さらに、東濃地域は根尾谷断層の延長線上にある。断層は地震が発生するたびに、割目が広がり数%成長すると考えられているが、根尾谷断層は1〜2万年後には東濃地域まで伸長し、処分場を断層が直撃し、処分場が破壊される可能性がある。そうなれば、高レベル放射性廃棄物は漏出し、人間環境にまで出てくることになる。
 2000年レポートでは、断層の影響は保守的に見ても断層の周辺数kmであり、それ以外であれば地震断層活動による影響はないとする旨の記述がある(総論レポートV‐ 44)。しかし、これはその断層の破壊そのものの影響範囲であり、地震前後の岩盤に与える影響や地下水の変動、強度の地震動の影響は考慮されていない。さらに、2000年レポートでは現在確認されている断層のみが全ての断層であると扱っているようであるが、大きな地震が発生しても地表に活断層が現われない地震も多いのである。このような地震の影響も考慮しなくてはならない。また、今後10万年の将来を考えるに当たっては、断層の成長や新たな断層の出現等も十分考慮しなくてはならないが、その点の考慮はない。従って、地震・断層から見た安全性について、全く不十分といわざるを得ない。

3 誘発地震のおそれが高いこと

地下に坑道を掘ることで誘発地震が発生することは知られている。自然地震がほとんどない南アフリカにおいても金鉱山の採掘に伴って誘発地震が発生し、マグニチュード5の誘発地震も発生しているのである。
 岐阜県や東濃地域は、自然地震も多く、地殻応力の高いところであるから、ここに処分場建設のため坑道を掘削すれば誘発地震が発生することは十分考えられる。
 また、埋め戻した後でも、埋設したところに不連続面ができることは間違いないことであるから、人工的な断層を作ることになる。地殻応力が高まってきた時にそこが弱点となって、地震が起こることは十分考えられることである。もし、そのような地震が発生すれば、処分場を直撃する地震となり、処分場は破壊されることになる。

4 地下水があること

高レベル放射性廃棄物を地層処分するに当たって、地下水の有無は非常に重要な問題である。地下水のある場所に埋設された高レベル放射性廃棄物は、将来、地下水に溶け出して人間環境に出てくる可能性がある。
 アメリカで唯一の処分場候補地とされたユッカ・マウンテンは地下水がない所である。そのような場所でさえ、1万年から2万年前に地下水が上昇してきた地質学的証拠が見つかって、それが問題とされているのである。
 東濃地域の地下には地下水が流れており、大きく北から南へ流れ、土岐川に流れ込んでいる。10万年もの間、高レベル放射性廃棄物を覆う人工バリアが健全で絶対的に人工バリアから放射性廃棄物が漏れ出さないということは想定されていない。ガラス固化体を入れる金属容器は数百年から1000年程度で腐食すると見積られている。地下水のあるところでは、人工バリアの健全性はより早く失われ、その地下水を通じて放射性廃棄物が人間環境に出てくることになる。
 東濃地域では、地下水は土岐川に流れ出ているので、放射性物質は土岐川に流れ込んで汚染し、土岐川流域の岐阜県から愛知県、最終的には名古屋市を通って伊勢湾を放射性物質で汚染することになる。

5 東濃地域の花崗岩は亀裂が多いこと

東濃地科学センターの地層科学研究で、地下1000mにも及ぶボーリングを何本もしているが、そのボーリングのコアを見ると、地下500m以深でも亀裂が多く、場所によっては破砕されている状態のところもある。東濃地域の花崗岩は、地表で見られるものでも方状節理(立方体状の割目)が発達し、鬼岩や恵那峡では花崗岩がブロック状に風化崩壊して奇岩を作り出して景勝地ともなっている。割目の多い花崗岩では、その割目に沿って地下水が流れるため、予想以上に早く放射性物質が地下水を通じて人間環境に出てくる可能性が高い。このように割目の多い東濃の花崗岩体は処分場として不適当である。
 また、東濃周辺には、ラドン温泉などの放射能泉が多く存在するが、これは東濃ウラン鉱床や花崗岩中の放射性物質が地下水を通じて供給され、温泉になって出てきていると考えられている。埋設処分した高レベル放射性物質が地下水中に漏出した場合、岩石の割目を通じて広範囲に影響を及ぼすおそれが大きい。

6 地下資源が存在していること

地下資源の存在は、将来の地下採掘の可能性があるため、高レベル放射性廃棄物の処分場として不適とされるが、東濃地域には次の地下資源が埋蔵されている。
@ウラン鉱床
 東濃地域には、日本最大のウラン鉱床である月吉ウラン鉱床がある。東濃地域全体の確定ウラン鉱量は、金属ウラン換算で約5000tである。このウラン鉱床の濃集機構については、基盤の花崗岩中のウランが風化作用によって溶脱され、地下水系中に移り、局所的な帯水層内で停滞中に吸着され、その後の地下水流や地下水位の変動に伴って再濃集し、現在見られる鉱床を形成したと考えられている。
A美濃炭田
 岐阜県可児郡から中津川市にかけて東西約55km南北約15kmの範囲には、美濃炭田と呼ばれる亜炭田があり、1957年には全国の亜炭生産量の約39%に相当する65万tを生産し、日本最大の亜炭田であった。また、東濃地域と愛知県の尾張・知多地域には、日本における亜炭の理論埋蔵量の約40%にあたる約2.3億tの亜炭が埋蔵されている。
B陶土
 東濃地域から瀬戸周辺にかけては、世界的にも類をみないほど高い可塑性を持つ耐火粘土を産する地域である。瑞浪層群を不整合に覆う土岐口陶土層は、主に石英粒を含む粘土(蛙目粘土)や炭質物を含む粘土(木節粘土)などからなる。このため、東濃地域は古くから陶磁器産業が発達してきた。東濃地域一帯は、我が国最大の窯業地帯を形成している。

第4 まとめ

岐阜県東濃地域では、東濃地科学センターにおいて、高レベル放射性廃棄物の地層処分のための研究(地層科学研究)が進められている。この研究をさらに進め、地下1000mにも及ぶ超深地層研究所を受け入れやすくするために、四者協定や、科技庁回答などが出されてきたが、これらは東濃地域が将来絶対に高レベル放射性廃棄物の処分場とならないことを確約したものではなく、これらの文書が存在しない他の地域と同様に将来の処分場建設の可能性は否定できない。
 現在行われている地層科学研究においても、特に理由も示さず4平方kmの地域を設定し、その範囲には深層ボーリングが存在しないなど、将来の処分場を想定したかのような状況が認められる。
 国の示す高レベル放射性廃棄物処分場建設のタイムスケジュールや処分場建設の基準が今後作られることを考えると、東濃地域で詳細な研究が進めば進むほど、処分場とされる可能性は高まるものと思われる。
 しかし、東濃地域を含む岐阜県は、世界でも最大級の内陸型地震・濃尾地震を発生させた根尾谷断層があり、他にも第一級の活動度を有する断層が多く存在する地域であり、地震・活断層から考えても高レベル放射性廃棄物の処分場として非常に危険な地域である。
 もし、仮に東濃地域に高レベル放射性廃棄物の処分場が作られた場合、埋設された放射性物質が地下水に溶け出せば、それは土岐川に流入し、土岐川流域を放射能で汚染し、愛知県そして中部地方最大の都市である名古屋市までも放射性物質が至ることになりかねない。このように、この東濃地域の高レベル放射性廃棄物処分場問題は、東濃地域だけの問題ではなく、愛知県、名古屋市までもその被害が及ぶ広範囲な問題となる可能性が高く、東濃地域は高レベル放射性廃棄物の処分場として不適地である。
 なお、2000年5月に成立した特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律では、その処分場候補地の存在する都道府県の知事、及び、市長村長の意見を尊重することになっているが、その周辺の住民の意見を汲み取る制度にはなっていない。前述のように、高レベル放射性廃棄物処分場の危険性は広範囲に及ぶ可能性のあることからすると、このように限定することは疑問である。

高レベル放射性廃棄物の処分の問題は、@高レベル放射性廃棄物は非常に危険性が強いので絶対的な安全性が求められること、A将来数万年から10万年以上の先までも考えなくてはならない問題であること、B一旦地層処分してしまうと漏れ出した場合に取り出してやり直すことは不可能であることに特徴があり、今まで人類が経験したこともない難問である。
 原子力委員会は、「これから生まれてくる世代の人々が、高レベル放射性廃棄物の管理に伴う負担を受容するであろうと考える根拠はなく、さらに、何らかの理由で能動的な管理が途絶えた場合、貯蔵による安全の確保は困難となる。そうである以上、高レベル放射性廃棄物については、長期にわたる人間の直接的な管理の継続を前提とせずとも安全が保てるような対策を検討する必要があり、これが原子力の恩恵を受けている現世代の責任と考えられる。」旨述べる(原子力委員会高レベル放射性廃棄物処分懇談会、1998)。
 しかし、地層処分に絶対的な安全性が確保されていない現状で、地層処分に限定して、その候補地を探し処分を急ぐことは、将来の世代に対して極めて無責任な態度であり、倫理的にも許されることではないと考える。もし、現状での原子力発電を継続するために高レベル放射性廃棄物の地層処分を急いで進めると言う考えがあるならば、それは本末転倒であり、将来の世代のことは何も考えず、現世代のそれも原子力発電の推進の立場だけを考える態度であると言わざるを得ない。
 我々は、非常に危険で安全な管理処分方法も確立していない高レベル放射性廃棄物をこれ以上増加させることは直ちに止めるべきである、すなわち、使用済み核燃料の再処理は止めるべきであると考える。その上で、地層処分以外の方法も含めて高レベル放射性廃棄物の安全な処分・管理方法を多角的に議論・研究していくべきだと考える。この点からも、使用済み核燃料の再処理を継続して地層処分をすることを前提として、そのためのスケジュールの中で進められている東濃の超深地層研究所計画は凍結すべきであると考える。

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