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公害対策環境保全委員会プレシンポジウム「高レベル放射性廃棄物は安全に処分できるか」

第1部 基調報告

開会の挨拶

日 時:平成12年6月24日(土曜日)
 場 所:土岐市文化会館大ホール

【司会】

それでは、予定時刻となりましたので、ただいまからシンポジウムを開始いたします。
 私は、本日のシンポジウムの司会を務めさせていただいております岐阜県弁護士会公害環境委員会委員長の飯田 洋と申します。よろしくお願いいたします。
 本シンポジウムは、日本弁護士連合会が10月5日に岐阜市で開催する人権擁護大会の「原子力・エネルギー政策の転換を求めて」というシンポジウムの一環として行うものであります。今回は、東濃地域の皆さんと一緒に、原子力発電が今抱えている難問の一つであります高レベル放射性廃棄物の処分問題を皆さんと一緒になって考えていきたいと思い、企画したものであります。
 それではまず最初に、岐阜県弁護士会の笹田参三会長より皆様にごあいさつをさせていただきます。お願いいたします。

【笹田岐阜県弁護士会会長】

ただいまご紹介いただきました岐阜県弁護士会会長の笹田でございます。
 きょうは、大変お忙しい中お集まりいただきまして、本当にありがとうございます。また、この集会の準備に当たりました多くの方に本当に感謝いたします。
 今回のシンポジウムを開催することになりました契機は二つございまして、一つは、昨年この東濃地方の地層処分について疑問を持つ住民の方から弁護士会の方に現地調査の申し出がございました。この申し出を受ける形で、日弁連の公害環境委員会、特に原子力エネルギー委員会の皆さんのご協力を得ながら現地調査を実施したということが一つの契機でございます。
 そしてもう一つは、ことしの10月5日に開催される予定の日弁連人権擁護大会の公害問題のシンポジウムを行うということも一つの契機でございました。このシンポジウムは10月5日12時から開催するわけでございますが、場所は岐阜市の国際会議場というところで開催することになっております。この案内につきましては、お手元の資料集の中にグリーンの用紙、どんな内容でやるのかということがございますので、ぜひともごらんいただいて、ご参加いただきたいと思っております。
 この人権大会のシンポジウムにおきましては、高レベル放射性廃棄物の問題、それにとどまらず、原子力規制の問題、そしてその他のエネルギーの代替ができるのかどうかという問題も含めた総合的な議論がされる予定でございます。ぜひともこのシンポジウムにもご参加いただくように、この場をおかりいたしましてご案内をいたします。
 さて、この廃棄物問題につきまして多くの方が当たっていただけると思いますが、私が最近印象に残りました事件に、  (四国、香川?)の豊島(?)の産業廃棄物処分場問題のことがございました。この処分問題につきましては、25年の長きにわたって困難を抱え、そして公害調停の中で問題解決をした。そして、6月6日に調停が成立したものでございます。この問題に示される教訓は、一たん被害が発生すると、その回復にいかに甚大な時間と労力と費用がかかるのかということを示していること、そしてその廃棄物問題が避けて通れないという問題になっていること、そういう意味でも、この一たん被害が出たら大変なんだということを示す、そういう意味でも教訓であろうと思っております。
 放射能の高レベル廃棄物につきましては、そのレベルとは全く違うわけでありますけれども、その甚大性、その期間の長期性、いずれをとっても比較にならない深刻な内容を持っているわけでございますので、慎重の上にも慎重な対応と対策が必要であるということで、きょうのシンポジウムにおきましても、現地調査、そして海外調査も踏まえた、その積極的な調査報告、提言がされると期待しています。ぜひとも最後までご清聴いただきたいと思っております。
 最後に一言、司法改革問題についてお願いをさせていただきます。
 「もんじゅ」やジェー・シー・オーの事故で記憶が生々しいわけでございますが、こういう原発の関連で、先般福井の裁判所でその危険性がないということを認めた判決が出されております。その判決を聞いて、多くの方は憤慨にたえないということに思った方も少なくないと思います。そこに示されております問題は、やはり行政寄りの判決に傾きやすい今の裁判所の内容を指摘、そういう内容を問題にしなければいけないと思うわけでございます。そのような裁判を変える、そういう司法改革問題が今進められております。そのために、皆さんにぜひともご協力をお願いしたいということでございます。
 司法はなかなか遠いということが言われておりますし、遠い司法を取り戻すためにも、今お手元の資料に署名用紙を中に入れさせていただいております。この署名用紙にぜひとも多くの方にご協力をいただき、入り口にも署名用紙がございますので、それにも署名していただきながら、ぜひとも同封の封筒でご返信をいただきたいということもお願いさせていただきまして、弁護士会を代表しての開会のあいさつとさせていただきます。よろしくお願いいたします。

【司会】

続きまして、日本弁護士連合会の人権擁護大会第2分科会の実行委員長 津留崎直美がごあいさついたします。

【津留崎第43回人権擁護大会第2分科会実行委員長】

今ご紹介いただいたシンポジウム実行委員長の津留崎です。
 実行委員会を代表しまして一言ごあいさつを申し上げたいと思います。
 きょうお忙しい中、これだけ集まっていただき、またきょうのシンポジウムに向けていろんな準備をしていただいた方々に改めてお礼を申し上げたいと思います。
 今回のシンポジウムに至った経過につきましては、先ほどお話がありましたので、それについては省きますけれども、このテーマ、一番大きな問題からいいますと、原子力をどうするかという問題になるわけです。今我が国の原子力政策、これは大きな転換期に至っています。これは、きょうおいでの皆さん方も同感であろうと思います。高速増殖炉の「もんじゅ」、それからジェー・シー・オーの核燃料転換工場での相次ぐ事故、こういったことで、原子力エネルギー利用の安全神話といったものを大きく揺るがされるということになっています。既に自治体レベルでは、隣の三重県で芦浜原発の計画について白紙撤回を表明するに至っていますし、世界的に見ましても、スリーマイル島事故、それからチェルノブイリ事故を経て、今や世界的に原子力発電に対しての撤退が潮流となっています。ついせんだってもドイツで、脱原発に向けての電力会社と政府との合意というのが見られました。
 私たちの日弁連公害環境委員会では、早くからこの危険性を指摘して、国の原子力エネルギー政策の見直しということを提言しておりました。その危険性が、残念ながら今、動きとすれば、これが結局原発に関してのブレーキということにもなりますけれども、事故が起こってしまいました。この重大事故が相次ぐ中で、原子力についての厳しい批判ということが世論としても盛り上がってきました。しかしながら、国はそれにこたえようとしていることにはまだなっておりません。いろんな諸立法についても、これをとめるという方向には進んでおりませんし、先ほども話がありましたけれども、「もんじゅ」の判決のように、世論に背を向けるような判決も相次いでいるという状況です。
 原子力について問題になっていますのが、次の三つの点が一つの焦点になっているだろうと思います。まず第1は、こういった相次ぐ事故をどうやって防ぐかということが1点です。2番目は、放射能に汚された原子力発電所からの廃棄物をどうするか、こういう問題があります。第3には、原子力に依存しないエネルギー政策をどうするか。こういう三つの点があります。
 日弁連ではことしの秋、10月5日に岐阜市で人権擁護大会に伴うシンポジウムを開きます。このシンポジウムでは、お手元にはまだありませんかもしれませんが、岐阜市で行われるシンポジウムでは、「原子力・エネルギー政策の転換を求めて−安全規制・放射性廃棄物処分・自然エネルギー」という題でシンポジウムを行います。この三つの点についてそこではすべて議論をしたいと思っております。ぜひともここのシンポにもおいでいただいて、いろんな点でご意見をいただきたいと思います。
 今回のシンポでは、そのプレシンポとしまして、高レベル放射性廃棄物の処理について絞って討議を行いたいと思っております。高レベル放射性廃棄物は、原子力発電を稼働する中で日々増加して、既に大量となっています。その安全な処理・処分の方策ということについては、しかし不十分なままであります。国は、それにつきましては、再処理をして、プルトニウムをつくり出すことを推進し、それについては、世界各国でいまだ安全な方法が確立しないということで、危険性も指摘しているわけですけれども、その流れに反して行おうとしております。
 そして、それから出てくる、放射性廃棄物の処理から出てくる残りかすにつきましては、ガラスに固めて、人目につかない深い地面に埋めてしまおうというもので、その前提としての法律も制定されています。そのため、この東濃の地域を初めとしまして幾つかの地域では、自分のところが核のごみ捨て場になるのではないかという不安が渦巻いているという状況であります。その意味でこのテーマは、この土岐の地でプレシンポを行うにはふさわしいテーマであると思いますので、その三つの柱のうちの一つに絞ったプレシンポを行いたいと思っております。
 今回のシンポジウムでは、国が推進しようとしている深地層処分の問題についての討議のために、お忙しいパネリストの皆さん方が集まっていただいて、今からパネルディスカッションを行っていただくわけですけれども、特にケビン・カンプスさんには、遠くアメリカから来ていただいて、ネバダの地層処分の問題に取り組んでこられた経験、それから教訓をお話しいただくことになっております。
 こういったパネルディスカッションが主体とはなりますけれども、もとよりこのシンポの主役というのは皆さん方だと思います。積極的にこのシンポに参加いただき、ご意見、討議をいただきたいと思います。
 時間の都合で、なかなか全員参加という形でしゃべっていただくことは難しいかもしれませんけれども、できるだけ活発なご意見をいただきまして、このシンポを実りあるものにしていただきたいと思いますので、ぜひともよろしくお願いいたします。
 今からシンポジウムということになりますけれども、ぜひともよろしく皆さん方のご参加をお願いいたします。
 以上をもちまして、ごあいさつにかえさせていただきます。どうもありがとうございます。

【司会】

ただいまから第1部の日本弁護士連合会実行委員による基調報告を行います。
 既に皆様のお手元に資料を配付しておりますが、まず「高レベル放射性廃棄物は安全に処分できるか」、基調報告と題しております上田文雄作成のレジュメが既に渡っていると思いますが、それをごらんください。
 上田弁護士は、長年北海道の幌延の貯蔵工学センター、それから深地層研究計画にかかわってきた弁護士でありまして、今回は札幌よりこの東濃に来ていただいております。それでは、お願いいたします。

基調報告「高レベル放射性廃棄物は安全に処分できるか」

【日弁連実行委員 上田 文雄 氏】

ご紹介いただきました弁護士の上田ございます。札幌から参りました。
 「核のごみ処分場があなたの町にやってくる」、これ、「サンデー毎日」の7月2日号ですが、これに処分場になりそうなところ、たくさん書いてございますが、一番てっぺんにあります北海道の幌延町というところの問題について、この十五、六年の間ずっとかかわりを持っておりまして、日弁連の委員ということでもいろんな問題についてかかわりを持ってまいりました。皆様方と同じ問題を北海道で抱えているということで、この項目を担当させていただくことになりました。
 私の方で基調報告ということでございますので、きょうここにお集まりの皆さん方についてはもう既にたくさんの知識を持っておられるかとも思いますけれども、一応議論の前提といたしまして、高レベル放射性廃棄物とは何なのかという概念の問題、あるいはこの問題についてどのような政策がとられているのか、どういう法制が現在あるのか、日弁連の立場はどういうふうになっているのかというようなことについてお話をさせていただきたいと思います。
 余り時間がありませんので、はしょって申し上げますけれども、まず、高レベル放射性廃棄物とは何かということでございます。原子力発電に伴いまして、使用済み核燃料といったものが発生いたします。この使用済み核燃料の中には、まだ各分裂していないウラン235、それから核分裂をした後出てくるプルトニウム、こういったものが残留しております。これらを燃料にもう1回使うことができるということで、これを取り出す作業をいたします。それが再処理という過程でございます。この再処理をする過程で取り出した後に出てくるのが、これらが「死の灰」というふうに言われておりまして、廃液なんです。液状のものが残るわけであります。我が国は、このような再処理をして取り出したウランだとかプルトニウム、こういったものを再利用するという核燃料サイクルであり、こういったものが作り出されているわけであります。そういう意味では、使用済み核燃料といったものは全量、すべての量が再処理をされる、こういうことになるわけであります。
 つづめて言いますと、原発が稼働している以上、必ずこの政策のもとでは、高レベル放射性廃棄物といったものが出てくる、こういう状況になっているわけでございます。
 この廃液の中には、使用済み核燃料の中に存在いたしました核分裂の生成物というものの大部分がとじ込められているわけでありますから、非常に高い放射能を持っているわけであります。そして厄介なのは、この放射能が減衰していく、半減期といいますけれども、半分の能力になっていく、この期間が物すごく長いという代物でございます。例えば、ヨウ素129というのは、1700万年、ことしはミレニアム、2000年で喜んでいるわけでありますが、2000年というような単位のものはないんですね。1700万年、そういう間ずっと力を発揮していくという代物が入っている。ネプチュウム237、これは214万年、プルトニウムは皆さんよくご存じですね、プルトニウムは2万4000年、こういう長い間放射能を出し続ける、それが人間に当たりますと、有害になる、こういうことでございます。
 それから、崩壊熱といいまして、放射性物質が崩壊していく、それに伴って熱を出す、こういう作用、特質を持っているということになります。発生量は、100万キロワットの原発を1年間運転した場合に、使用済み核燃料は約30トン発生する言われております。これを再処理いたしますと、約30立方メートルの高レベル放射性廃棄物が発生する、こういう計算になっております。高い放射能、高い崩壊熱、超長期にわたります半減期、こういう三つの特色を持った高レベル放射性廃液の管理をどういうふうにするかということでございますが、液状ではなかなか厳しいものがありますので、これを固形化するという作業が行われるわけであります。この廃液を溶融いたしましたガラス、どろどろにしたガラスをこの中に溶かし込むということで、その溶かし込んだガラスを、ステンレスでつくりましたキャニスターという容器の中に入れまして、そして固形化する。ガラス固化と言っておりますけれども、そういう状態で管理、処分をしていこうというのがキャニスターでの高レベル放射性廃棄物の固形化したものであります。こうしてできました固化体1本には、約1立方メートルの高レベル放射性廃棄溶液が入ると言われておりますので、100万キロワットの原発1基で年間約30本の高レベル放射性廃棄物のガラス固化体ができ上がるということになるわけであります。
 この高レベル放射性廃棄物をどのように処分していくかということの政策でございますけれども、我が国におきまして、この非常に取り扱いが困難な高レベル放射性廃棄物を貯蔵、処分するという方法について、1984年(昭和59年)の8月に原子力委員会の放射性廃棄物の対策専門部会というところが中間報告というものを出しております。これによりますと、「使用済み燃料の再処理により発生する高レベル放射性廃棄物は、発生量自体は少ないものの、極めて高い放射能を有し、また長半減期核種も含まれていることから、この放射能が減衰して環境汚染あるいは放射線の影響のおそれが十分軽減されるまで、長期間にわたり人間環境から隔離する必要がある。このため、安定な形態に固化し、処分に適する状態になるまで冷却のための貯蔵を行い、その後地層に処分することを基本的な方針とする」と、こういうふうに言っているわけであります。これが基本政策でございます。要するに、ガラス固化し、そして地層に処分する−地中に埋めるということですね−というのが基本原則であると言っておるわけであります。
 そして、使用済み核燃料再処理、ガラス固化、冷却のための一時貯蔵−一時貯蔵というのは、熱いまま埋めちゃいけないということで、30年から50年ぐらいの間冷えていくのを待つ、一時的に貯蔵する。その後、地下の数百メートルより深い地層中へ埋設処分するという方針がここに記載されているわけであります。
 この中間報告によりますと、地層処分を行うスケジュールということが決まっておりまして、4段階になっております。第1段階というのが、有効な地層の選定をするという段階でございまして、これは84年の段階でもう、有効な地層の選定というのは終わったと記録をされております。第2段階として処分予定地の選定、第3段階として模擬固化体による処分技術の実証、第4段階として実固化体の処分、こういう形になっておりまして、この1984年のころから既に、第2段階、処分予定地の選定手続に入る、こういうふうに記載があるわけであります。
 この中間報告によりますと、84年段階では既に、最終処分をするための有効な地層の選定というものが、先ほど言いましたように終了しているということとされておりますので、処分予定地の選定段階にあるということは、ここで確認されたということで、これが後々非常に大きな問題になるところであります。
 その後、昨年(1999年)11月に公表されました核燃料サイクル開発機構の「地層処分研究開発第2次取りまとめ」という文書がございます。これも基本的には、この中間報告といったものを現在に引き継ぐという形で記載がされておりますので、この84年の中間報告というのは、まさに日本の地層処分に関する非常に決定的な思いを持った重要な政策であるということができると思います。
 ところで、この有効な地層の選定といったものが終了されているということなんでありますが、我が国において有効な地層というのは一体何なのかということについても、この中間報告では述べております。それは何かというと、こういうふうに記載があります。「未固結岩等明らかに適性に劣るものは別として、岩石の種類を特定することなく、むしろ広く考え得るものであることが明らかとなった。すなわち、同一種類の岩石においても、それが存する地質条件によって地層処分に対する適性にはかなりの差が認められることから、岩石の種類を特定するものではなく、むしろその地質条件に対応して人工バリアを設計することにより、地層処分システムとしての安全性を確保できる見通しが得られた。その結果、処分予定地等の選定に当たっては、自然的条件、社会的条件に柔軟に対応する余地があるものと評価される」と記載されているわけであります。
 未固結岩等明らかに適性に劣るものは別として、どんな岩石でも人工バリアと組み合わせすることによって、処分可能な有効な地層になり得るんだということを記載したのが、この中間報告であるわけであります。
 しかし、ここで「見通しが得られた」と言っておりますが、地層に関する調査研究だとか、あるいは人工バリアに関する調査研究というのは、その段階でまだやっていないわけでありますので、どうもこの「見通しが得られた」というのは、まさに「そうありたい」という希望を述べているだけでありまして、政策が先に決定されて、現実を見た上での見通しが得られたというわけでもないわけであります。それが後々、この東濃の地区の問題にも、あるいは幌延の問題にも重要な影響を与えていくということになると思います。
 このような状況の中で、人工バリアを重視いたしまして、その分、天然バリアの要件といったものを総体的に緩和するという考え方は非常に危険だということができると思います。世界的に見ても、人工バリアで補強するといいますか、比重を高めるというような考え方はほとんどないと言ってよろしいと思いますので、かなり特異な考え方で地層処分といったものをこの国は考えているというふうに、私どもが危険性を感じるゆえんであると言うことができると思います。
 高レベル放射性廃棄物最終処分に関する法律制度はどうなっているか。政策に対して法律はどうなっているかということでございますが、これは従来、余り何も法律はなかったという状態が続いておりましたけれども、この5月31日に「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」といったものが、余り長時間の審議ではなくて、わずか1カ月程度の審議の中でするすると通ってしまったという現状でございます。これについては、規定されている内容は、「通産大臣は、閣議決定を経て、高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針を定める」。「通産大臣は、閣議決定を経て、最終処分計画を定め、これを公表しなければならない」とされているわけでありますが、原子力発電環境整備機構という実施主体もここで決まって、その費用も電力料金の中から取っていくんだということが書かれているわけであります。
 肝心の、どういう条件のところで処分場を選定していくかということについての調査の日程といいますか、段階については書いてありますが、どういう条件でといったことは何も書いてない、ほとんど書かれていないというのが現状でございます。そういう意味で、この法律には幾つかの基本的な問題点が指摘されているわけであります。
 四つばかり指摘いたしますけれども、これはまず、この法律によって使用済み燃料というのは、全量再処理をするということが前提になっている法律だということが第1でございます。再処理によって取り出されたプルトニウムの余剰、プルトニウムが余ってしようがないという状況が現在あるわけでありますが、そういう問題と、何でそういう時に再処理をするのかということが問題である、疑問であるということもありますし、ガラス固化体の技術といったこと、完全に技術が完成したわけでもなければ、地層処分ということについても、そんなに確たる技術が発達しているというわけでもないというようなことを考えますと、使用済み燃料のまま直接処分するという余地も残しておくべきではないかという重大な問題提起が行われております。
 それから、地層処分が唯一の処分方法とされているという点についてもかなり問題があるというふうに問題提起がございます。そもそも地層処分が安全に実施できるかどうかについて、不確定要素が多過ぎるという指摘でございます。国際的にいいましても、例えばアメリカだとかフランスだとかスイスだとか、こういうところでは、地層処分を見直すというような動向が現在あるわけでありまして、回収可能性の確保といったことをきちんと保障している、法的に担保する、そういうことが少なくとも必要ではないかと言われているわけであります。
 それからもう一つは、概要調査地区の選定基準が極めてあいまいであるということも一つ問題であります。これでは、文献調査で地震等の自然現象による著しい地層の変動記録がないこと、それから将来に向かって地震等の自然現象の著しい地層の変動が生ずるおそれが少ないと見込まれることと、漠然と規定がされているわけでありますけれども、これをだれがどのように評価して、どういう基準でやるのかという評価というものが何もないということからいいますと、まさに先ほど申し上げました84年の中間報告の「どこでもいいんじゃないか」という議論が、この法律によって裏打ちされている ……(録音漏れ)…… (以下、AbPB)ございます。
 それから、国民的議論がこの問題について本当にされているかどうかという疑問も提起されております。最終処分問題というのは、北海道幌延町においては、貯蔵工学センター計画というものがございまして、それが深地層研究所計画というものになりました。そして、この当地、東濃地区における超深地層研究所に関しては、非常に多くの住民から、このような施設ないしは周辺地域が最終処分場になるのではないかという重大かつ深刻な懸念といったものが表明されているにもかかわらず、その問題について国民的議論がされたとは全く言いがたいのではないかということが非常に重大だという認識でございます。
 こういう状況に対して、日弁連がどういう態度をとってきたかということを最後に申し上げたいと思います。
 高レベル放射性廃棄物に関しましては、日弁連はこれまで、1987年に「核燃料サイクル施設問題調査研究報告書」といったものをつくりました。そして、1990年、もう10年たちますけれども、「高レベル放射性廃棄物問題調査研究報告書−幌延「貯蔵工学センター計画」をめぐって−」ということで冊子をまとめました。調査研究したそのたびたびに意見を明らかにしてまいりました。
 その意見の概要は、そこに記載がございますけれども、そういうものを踏まえて、さらに日弁連では、海外調査等を実施いたしまして、1994年、今から6年前でございますが、11月に「孤立する日本の原子力政策」を公刊いたしまして、具体的な提案をいたしました。それはこういうことになります。
 使用済み核燃料を再処理するか否かの問題に関しては、明確に「再処理をしてはならない」という政策をとるべきである。使用済み核燃料は、再処理せずにそのまま管理する方がずっと安全なんだと、管理しやすいんだと、こういう提言でございます。
 さらに、日本に存在する高レベル放射性廃棄物の処分については、勇気を持って立ちどまることの必要がある。すなわち、高レベル放射性廃棄物を地層の中に閉じ込めて処分するという考え方は、その半減期が数万年単位であることにかんがみて、火山国、地震国である日本では危険が多過ぎるということを率直に認めるべきである。
 再処理をやめて、高レベル放射性廃棄物やTRU廃棄物の量がこれ以上ふえることを抑制いたしまして、現存する高レベル放射性廃棄物をどのように処分するかについては、廃棄物を常に監視し続けることができる状態に置いて、将来の核技術開発の利益が得られるように、厳格な管理のもとに一時貯蔵を続けるべきであるということ。
 それから、原子力委員会は、有効な地層の選定が終わったという認識を撤回しろと、こういうふうに申し入れをしております。 このような、前述いたしました最終処分に関する法律が成立した今日に至りましても、この日弁連の提言というのは、いささかも変更するところはないと思います。
 核燃料サイクル開発機構が行っている東濃地区での超深地層研究所、それから北海道幌延町において計画しております深地層研究所計画などについて、地元住民から高レベル放射性廃棄物の最終処分場となるのではないかとの深刻な懸念が表明されている今日、日弁連のこの提言を踏まえて、いま一度、高レベル放射性廃棄物は本当に安全に処分できるのかということについて、地域住民の方々とともに検討して、あるべき法制度、あるいは処分政策について実りのある議論をこのシンポジウムを得たいと私は考えている次第でございます。
 以上、ちょっと時間をオーバーしましたけれども、基調報告といたします。ありがとうございました。

【司会】

次に、地元の皆さんが一番ご関心がありますこの岐阜県の東濃で行われております超深地層研究所問題について、日本弁護士連合会が昨年の夏から検討してきました結果、いろいろな問題点について岐阜県弁護士会所属の栗山知から報告をいたします。

基調報告「東濃の地層科学研究と地層処分の可能性」

【日弁連実行委員 栗山 知 氏】

岐阜県弁護士会の栗山といいます。
 昨年6月、岐阜県内の市民団体の方から、東濃地域で地層科学研究が進められているが、将来東濃地域が、高レベル放射性廃棄物の処分場とされてしまうのではないだろうか、その点について調査をしてほしいとの要望がありました。私たちはそれを受けて今日まで調査を続けてきましたが、ここではその調査を踏まえて、この問題に対する私たちの考えというものを報告したいと思います。
 ここ岐阜県の土岐市には、核燃料サイクル開発機構の一部門である東濃地科学センターというものがあります。岐阜県東濃地域には、日本最大級のウラン鉱床がありますが、その東濃地科学センターは、もともとこのウラン探鉱の事務所として開設されました。しかし、現在はそのウラン探鉱はもうやめておりまして、1986年から地層科学研究というのを行っております。その地層科学研究という言葉からは、何を研究しているのかわかりにくいのですが、実は高レベル放射性廃棄物を地層処分するための研究が行われているのです。高レベル放射性廃棄物を地下300メートル以上深いところに埋めて、最終的に処分してしまおうというのが地層処分ですが、その地層処分の研究として東濃地域の地下の花崗岩の様子や地下水の状況などを詳細に研究しているのです。
 東濃地科学センターで行われている地層科学研究はいろいろ多くありますが、その中で重要と思われるのは、広域地下水流動研究です。これは、東濃ウラン鉱山を含めて広い範囲で、その地下水の流れ方や水質を調査しています。高レベル放射性廃棄物を地層処分した場合に、その地下に埋めた放射性物質が私たちの生活環境に出てくるおそれとして一番可能性のあるのは、その放射性物質が地下水に溶け出して、そして地下水に乗って私たちの生活環境に出てくる、そういう可能性が一番高いために、本来ならば地下水がないところに処分することが望ましいとされていますが、地下水があるとすれば、その流れ方はどうなっているのか、水質はどうかとか、それを十分に調査しなければなりません。
 東濃地科学センターは、東濃鉱山を含む10キロメートル四方、詳しく地下水の状態を調べる研究領域に設定して、そこに地下500メートルから1000メートルにも及ぶ深層ボーリングを10個以上掘って研究を進めているのです。そして、その研究区域の中に、さらに2.5×1.6キロメートルの4平方キロメートルの領域を設定して、詳細に地下の状況を調べております。
 きょうお配りした資料の中に、「東濃の地層科学研究と地層処分の可能性」と題した資料がありますが、その13ページに図1というのをつけてあります。そこに、その4平方キロメートルの区域を図示してあります。この領域は、東濃地科学センターによれば、広域地下水流動研究の予備調査区域であると説明されておりますが、この4平方キロメートルという広さは、高レベル放射性廃棄物のガラス固化体4万本分を地層処分するのに必要な処分場と言われている広さと完全に一致しております。私たちは東濃地科学センターに「なぜこのような広さの区域を設定したのか」尋ねたんですが、「この一致は偶然である」と回答されただけで、その予備調査域を4平方キロメートルにする理由、それも2.5×1.6キロという中途半端な数字にする理由は何も示されませんでした。このことから、ここが将来の処分場として想定されているのではないかと考えられているのです。
 そして、さらに重要なのは、この4平方キロメートルの領域内には、500メートルより深い深層ボーリングが1本も掘られていないということです。広域地下水流動研究の予備調査域だけならば、ここに深層ボーリングをしない理由はないと思われるのですが、東濃地科学センターに尋ねても、ここに深層ボーリングをしない合理的な説明は何もありませんでした。
 しかし、ここを将来の処分場に想定しているならば、その深層ボーリングがないことの理由は明確に理解できます。すなわち、ここの岩盤に深層ボーリングで穴をあけてしまえば、その穴が将来地下水の通り道となって、処分場に予想以上の地下水が入ってくる、もしくは放射性物質を含んだ地下水がそこから出てくる道になってしまう。vあてに出した回答が挙げられています。その回答は、今示しました資料の後ろの方、21ページに資料5というものでつけてありますが、そういった回答が出されています。その回答を根拠としておりますが、これを見ますと、大きく2項に分かれております。
 まず第1項は、地層科学研究において研究実施区域に放射性廃棄物が持ち込まれることではないということを確認しております。この条項は地層科学研究について述べたもので、処分場とは別な問題です。すなわち、地層科学研究において放射性廃棄物を持ち込まないというだけのことであって、もし将来処分場が建設されて、実際に処分がされるという段階になれば、それはもはや研究ではありませんので、放射性廃棄物を持ち込むことは可能だということになります。
 次に第2項は、ここで、岐阜県内が高レベル放射性廃棄物の処分地になることはないと確約しているようですが、よく読めばこれは、知事が現在処分場を受け入れる意思がないことを表明していることから、この状況においては、岐阜県内を処分地にしないという条件つきのものであって、将来にわたって絶対に処分地にしないということを確約したものではありません。もし将来知事が、処分場を受け入れるというようなことを言えば、岐阜県内に処分場をつくる道は残されているんです。
 したがって、この科技庁の回答をもっても、岐阜県内が処分場にならないということはできず、処分場の可能性は慎重に残されていると言えます。
 また、さきに成立しました特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律では、その処分場の候補地の選択についての基準が極めてあいまい、大まかでありまして、絶対的な安全性が必要とされるにもかかわらず、この法律では基準がないに等しい状況だと言えます。今後別の法律や通産省令などでその基準が定められていくことになろうと思いますが、どのような基準ができるかが極めて重要です。しかし、この基準をつくるに当たっても、当然何らかのよりどころが必要になってくると思われますが、東濃で超深地層研究所がつくられ、そのデータが集積されていけば、それを考慮して基準がつくられることになっていくのではないかと思われます。そうすると、この東濃のデータをもとに基準がつくられるということになりますと、東濃が不適格だという基準にはならないだろうと考えられます。現に、核燃が昨年11月に出した地層処分研究の第2次取りまとめ、いわゆる「2000年レポート」というものでは、東濃のデータがよく出てくるのですが、それによりましても、地層処分は安全にできるんだ、そういう結論が示されております。
 このように、科学技術庁が出している文書でも、東濃が処分場として除外されているわけではなく、またその超深地層研究所がつくられて、地層科学研究が進めば進むほど、東濃に処分場がつくられる可能性、危険性は大きくなっていくんではないかと私たちは考えております。
 それでは、東濃地域は処分場として適地なんでしょうか。地層処分の考え方は、高レベル放射性廃棄物を入れる容器等の人工バリアだけで安全性が保てるというものではなく、その処分する岩盤によって放射性物質が生活環境に出てこないようにする、天然バリアの機能が大変重要です。そして、その放射性物質の危険性は、数万年から10万年にも及びますので、その間、その処分した岩盤は安定で、絶対的に放射性物質を漏らさないということが必要になります。しかし、東濃地域の地下の花崗岩は、以下の理由により、地層処分の対象としては不適格であると考えます。
 まず、岐阜県は、地震が多い日本の中でも第1級の活動図を持つ活断層が密集しているところです。先ほどの資料の図2を見てください。これは、岐阜県内の主要な活断層を示したものですが、その中で一番有名なのが、約100年前(1891年)にマグニチュード8という世界的にも最大級の内陸型地震を起こした根尾谷断層があります。そのほかにも飛騨地方には跡津川断層がありますし、この東濃地方を見ても、阿寺断層、赤河断層、恵那山断層、屏風山断層という活動度が高い活断層が密集しております。これらの活断層は、1000年から2000年に1度の割合で大地震を起こすというように言われておりますので、10万年の間では、一つの断層だけで50回から100回の大地震を起こすということになります。これだけを考えても、岐阜県東濃地域は、高レベル放射性廃棄物の処分場として非常に危険な地域だと言わざるを得ません。
 また、このような大地震の前には、岩盤が圧縮されて、地下の岩盤中に微小な割れ目ができ、地下水が流れやすくなるということも言われておりますし、大地震の後には、断層周辺で余震が発生します。もし大地震で処分場自体が破壊されないとしても、その余震域に入れば、その余震で処分場が破壊される可能性もあります。
 さらに重要と思われるのは、処分場とされる可能性のある4平方キロメートルの区域は、その根尾谷断層の延長線上にあるということです。先ほどの資料の図3を見てください。これは、岐阜県活断層図に私が加筆したものですが、根尾谷断層は南東部で少し曲がっておりますが、その延長線上に4平方キロメートルの区域がぶつかっております。断層は、地震が発生することで数%ずつ伸びていくということが言われておりますが、根尾谷断層の端から4平方キロメートルの区域まで約20キロ程度ですので、10回程度の地震が起これば、根尾谷断層はこの区域まで伸びて、処分場を破壊するという可能性があると思います。
 さらに、東濃地域の地下には地下水が流れております。また、東濃地域の花崗岩の状況も、地下500メートルより深いところでも割れ目が多数入っております。ヨーロッパなどの安定した大陸の花崗岩のように割れ目がない、完全な岩体とは大きく異なっております。地下水は、このような岩盤の割れ目を流れますので、放射性物質が地下水に溶け出した場合、この割れ目を通じて、予想以上に早く生活環境まで放射性物質が出てくる可能性があります。
 図4を見てください。これは、この地方の放射能泉を示した図です。東濃地域周辺には、放射能を含んだ温泉が多く出ています。これは、ウラン鉱床を供給源とした放射性物質が、地下水脈を通じて温泉として出てきていると考えられますが、高レベル放射性廃棄物を処分した場合、それが地下水中に溶け出して、このような地下水脈を通って広範囲に影響を及ぼす可能性は否定できません。また、このあたりの地下水は、北から入って、土岐川に流れ込んでいると考えられていますが、土岐川に放射性物質が入って汚染された場合、土岐川流域から下流の庄内川、愛知県、名古屋市まで汚染して、伊勢湾に達することにもなりかねません。
 私たちは、この高レベル放射性廃棄物の問題は、非常に難しい問題だと考えております。それだからこそ、取り返しのつかなくなる可能性の高い地層処分を急ぐことには反対です。「まず地層処分ありき」ではなく、その他の管理する方法も含めて、地層処分政策自体を見直すことが必要だと考えております。
 このような観点から考えると、今現在東濃で進められている地層処分を前提とした地層科学研究や超深地層研究所計画は凍結すべきであると考えます。
 以上です。

【司会】

ただいま、東濃の状況について幾つかの指摘がありましたが、実はアメリカ合衆国のネバダ州ヤッカマウンテンでも同様な地層処分の計画が持ち上がっております。その問題点について最も詳しく調査研究をなされておられます放射性廃棄物のスペシャリストであるケビン・カンプス氏を本日はアメリカから特別にお招きしております。
 ケビン・カンプス氏は、ミシガン州のご出身で、学生のころは生物学、化学などを研究され、その後アメリカのインディアン、そのほか原子力等の市民運動にも深くかかわってこられました。現在は、ワシントンにありますNIRSという原子力情報提供サービスというNGOに所属しておられます新進気鋭の研究者であります。
 そして本日は、ケビンさんの通訳をお願いしておりますのは、市民エネルギー研究所の田窪雅文さんです。
 それでは、ご講演をいただきたいと思います。どうぞ拍手でお迎えください。

特別講演「ヤッカマウンテン(ネバダ州)における高レベル放射性廃棄物の地層処分問題」

【NIRS(原子力情報資料サービス)ケビン・カンプス】

こんにちは、皆さん。
 今日こうしてお話しする機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 2カ月ほど前に、海渡さんと、それから日弁連の代表団の方々にワシントンでお会いしました。ちょうどヤッカマウンテンの方に行って、帰ってきたばかりのときでありましたので、皆さんに最新の情報についてお伝えすることができました。お話ししているうちに、ここの状況と、それからネバダの状況は非常に似通っているということが明らかになってきました。それで、今回このようにして機会を与えていただいて、ネバダのお話をできることを非常に光栄に思います。
 ネバダ州にあるヤッカマウンテンというところは、アメリカの中で地層処分の候補地として研究がされている唯一の場所であります。
 アメリカ合衆国は、1950年代に原子力発電の推進を行ったわけでありますけれども、その際に、電力会社側に対して、もし原子力を受け入れて推進するならば、そこから出てくる高レベル廃棄物については政府が引き受けようという約束をいたしました。アメリカの場合には、原子力発電で出てきた使用済み燃料は、現在のところ、それが生み出された原子力発電所の敷地内に置かれております。日本の場合には、原子力発電所から出てきた使用済み燃料は、再処理をするという計画になっておりますから、アメリカとは非常に違ったところがあります。
 アメリカにも再処理の計画は以前にありました。そして、1960年代の末に2カ所で実際に再処理施設が建設されております。一つはニューヨーク州、それからもう一つはイリノイ州につくられました。しかし、この再処理計画は、ジミー・カーター政権の時代に放棄されることになります。その主な理由は、カーターが世界に対してあるメッセージを発したからであります。それは何かといいますと、再処理をすると、それが核の核兵器の拡散につながるということであります。なぜかといいますと、原子力発電所から出てくる使用済み燃料の再処理をすると、そこでプルトニウムが取り出されて、このプルトニウムが核兵器に使用される可能性が出てくるということであります。原子力発電で出てきた使用済み燃料ですけれども、これは現在のところ、その敷地内にあるプールに貯蔵するという形になっております。そして、発電所の中には、このプールが満杯になってきているところがふえてきており、現在のところ、12ないしは15の発電所で、プールに貯蔵するのではなくて、乾式貯蔵という形で、水から出した形で貯蔵するという方式がとられるようになっております。これは、古い燃料についてこういう方式をとっております。現在までに既に4万トンの使用済み燃料がこうした形でアメリカ各地の原子力発電所に置かれております。
 これは、現在アメリカにある使用済み燃料の総量でありますけれども、もし原子力発電所が、今想定される寿命を通じて運転をされ続けますと、これは20年あるいは30年ぐらいの間で運転されることになるわけですけれども、そうしますと、使用済み燃料の量は2倍余りに達します。その量は約8万5000トンに達することになります。
 アメリカの場合には、この原子力発電から出た廃棄物のほかに、もう一つの範疇に入るものがあるんですけれども、それは軍事用の原子力利用から来たものであります。その一つは、原子力潜水艦から出てくる使用済み燃料であります。それから、もう一つのグループは、核兵器を製造する過程で再処理を行ってやるわけですけれども、その際に出てきた高レベル廃棄物であります。1986年にレーガンが、この軍事部門から出てくる高レベル廃棄物も、やはり商業用の高レベル廃棄物と同じように、同じ場所で処分をするということを決定しました。
 この軍事用の利用から出てくる高レベルの廃棄物ですけれども、これは今現在、例えばどういうところにあるかといいますと、ワシントン州のハンフォード、ここで再処理が行われて、軍事用のプルトニウムが取り出されたわけですけれども、例えばこういった場所に置かれております。
 この軍事用から来る高レベル廃棄物ですけれども、その総量が約3万トンほどに達します。ですから、これも、先ほど言いました商業用の利用から出てくる高レベル廃棄物と合わせますと、その総量は10万トンをはるかに超えるということになります。
 このネバダ州のヤッカマウンテンがなぜ最終的にアメリカで今唯一の候補地になってしまっているかというのは、話せば非常に長いことなんですけれども、ごくその一部だけをかいつまんでお話ししてみたいと思います。ここで皆さんにお伝えしたいのは、この候補地の選定過程というのが、決して科学的、あるいは技術的な要素に基づいて行われてきたものではないということです。むしろ、政治的な理由によって選定されてしまっているということです。ヤッカマウンテンが選ばれた過程では、公衆の健康、あるいは環境といったことが非常に軽視されてしまいまして、原子力産業とか、あるいは政府がとにかく早く処分場を見つけようという、この意図の方が重視されるということになってしまいました。そして、研究をする中でいろいろ問題が判明してくるんですけれども、そのために、規則の方を変えて、計画がそのまま遂行できるようにということをしてきております。ですから、法律があるとか、あるいはさまざまな規則、これがねじ曲げられてきております。そういった形で、ヤッカマウンテンは実は廃棄物の処分場には適していないということが明らかになって、その証拠がいろいろ出てきているにもかかわらず、計画が遂行され続けております。ヤッカマウンテンの歴史というのを簡単にお話しした後、どういう法律の変更、規則の変更が行われてきたということをかいつまんでお話ししてみたいと思います。
 ネバダ州のヤッカマウンテンというところは、ネバダ州にあるアメリカの核実験場のすぐ近くにあります。アメリカは、1945年に日本に核爆弾を落としますけれども、その後、太平洋に行って核実験を続けて行います。しかし、アメリカの本土から非常に離れたところで実験をするというのは、コストがかさみますので、アメリカ政府、そして軍部の方では、本土の中で実験ができるような場所はないかということで、その場所探しを始めます。最終的にこのネバダの実験場が選ばれたのは、この地域の人口が非常に少ないという理由によるものでした。1951年にはこの辺には余り人口がありませんでした。実は、アメリカの東部でも核実験場を探すということが行われて、例えばノースキャロライナ州が候補地として挙がったことがあるんですけれども、しかしこのあたりは人口が多いということから、政治的な抵抗も非常に強く、アメリカ政府、軍部としては、東側に核実験場をつくるということはできませんでした。その結果、ネバダが選ばれまして、1951年から92年の間に1000発近くの核実験が行われてきております。
 廃棄物の処分場を探すための整備をするということで、重要な法律が1982年に制定されております。これは、核廃棄物政策法と呼ばれるものです。この法律は、商業用で出てくる高レベル廃棄物を処分するための候補地をどういう過程で、どういうプロセスで探すべきかということを定めております。ゲームの途中で規則を変えるということが何度も行われておりますけれども、その最も初期の例の一つが、この処分場を探す場合には、最初の規定では、アメリカの東部で1カ所、それから西部で1カ所選ぶということになっておりましたけれども、この規則の変更に見られます。処分場の選定を任されたのがエネルギー省というところです。。
 実は、このエネルギー省というのは、核兵器の開発、生産にも当たっているところであります。恐らくお手元に資料があると思いますけれども、それを見ていただければ、簡単な歴史がわかるのですけれども、そこにもありますように、アメリカのエネルギー省は、この82年に定められた法律に従って、実際に九つの場所を候補地として選定しております。その一部は東側にもあります、それから西側にもあるというものでした。やはりお手元に、アメリカの原子力発電所がどこにあるかということを示す地図があろうと思いますけれども、それをごらんになっていただければ、なぜ東部の方にも処分場をつくらなければいけないという規定が設けられたかということがおわかりだろうと思います。アメリカの原子力発電所の大半は、実はミシシッピー川の東側に位置しております。ですから、処分場に向けての輸送を長距離を経て行うということになれば、それだけリスクが高まりますから、そのリスクを減らすということで、東部の方にも1カ所処分場をつくるということが規定されたわけです。
 それから、もちろんもう一つは、国民の間に正義と公平ということですけれども、もともと東の方で出てきた廃棄物は東の方で処分をすべきじゃないかという考えがそこにあります。しかし、ここでも核実験場の選定をするに当たって見られたような政治的圧力というのが働きました。つまり、東側の諸州の政治的な力というのは非常に強いものがありましたから、これを無視して東側にも処分場をつくるということはできなくなってしまったわけです。そのために、82年の廃棄物の法律の最初の大きな変更というのが1987年に行われます。これは、「ネバダをやっちまえ」とか「ネバダを陥れてしまえ」、「ババ抜きをさせてしまえ」というふうな意味です。候補地として挙がっていた諸州の政治家たちが結託しまして、それでネバダだけに全部かぶせてしまうということになります。ネバダというのは政治的な力の弱いところでありますから、ネバダがこれを引き受けることになってしまいました。ネバダの政治的な力の弱さを示す例を一つ挙げたいと思います。それは、この1987年の時点でアメリカの下院にいた議員の数ですけれども、ネバダ州選出の議員というのは1人しかいませんでした。
 そのほかに、ほかの政治的な要因が働いてしまうんですけれども、これは核廃棄物とは全く関係のないものです。ネバダ州の政治家がおりまして、この人は、自動車の効率を高めようということに非常に献身的な努力をしておりました。それによって自動車から出てくる排ガスの量を減らそうと、公害を減らそうとしていたわけです。アメリカの三つの大きな自動車メーカー−GM、フォード、クライスラー、この3社はミシガン州のある政治家−これは下院の有力な政治家ですけれども、この人に働きかけました。その結果、このミシガン州の議員は、いつかどこかでネバダに復讐をしてやろうと思っていたわけです。これを見ていただければわかると思いますけれども、非常に政治的な、低いレベルの考え方というのが働いて、ネバダが廃棄物の処分場になってしまうということになったわけです。 エネルギー省は1987年以後、ネバダ州のサイトについての研究というのを始めます。この研究の当初から、科学的あるいは技術的にいって、ネバダのこの場所は廃棄物の処分場には適しないということを示す証拠が次々と上がっておりました。1980年代の末から90年代の初めにかけてエネルギー省が行った研究の結果、このネバダの候補地では、廃棄物から出てくる放射性のガスを閉じ込めておくことができないということが明らかになりました。これは、ヤッカマウンテンが地震帯の中にあるからです。ヤッカマウンテンの周辺では33もの断層があります。頻繁に地震が起こっておりますから、その結果、岩盤に亀裂が生じて、そのためにガスが漏れ出したり、あるいは水が廃棄物の方に及んできているという道ができてしまっております。
 1982年にできた最初の法律によりまして、アメリカの環境保護庁(EPA)が基準の選定を任されます。これは、放射線の防護ということで、どういう基準を設けるべきかという、その基準設定をEPAが任されたものです。漏れ出してくるガスの一つは炭素14でありますけれども、そのガスの放出だけをとってみても、世界全体で2万5000人のがんによる死亡が発生するという計算が出てきました。このがん死の発生というのは、非常に長期にわたって起こるものでして、しかも世界全体に及ぶものです。しかし、それでもこれはやはり、EPAが定めた規則に反するものであります。この事実だけでも、ヤッカマウンテンは処分場としては適さないという決定を下すべきでした。それで、この事実が明らかになった後は、それ以上の調査はもう中止をして、この計画を放棄するのが正しい道だったと思います。
 しかし、原子力産業の側が議会に対して圧力をかけまして、それでもともとの規則を変えさせることになります。そして、1992年にまた法律が変えられることになります。87年にネバダを陥れる法律ができておりますけれども、そのわずか5年後にもう1度変更が加えられます。議会がEPAに対して指示を出しまして、規則を書きかえろと言います。ネバダのヤッカマウンテンに適した規則をつくるようにと、余り無理のないようにするようにという指示を出します。このためにEPAが規則の書きかえの作業を始めます。しかし、それでも地下水については、この安全を守るという立場を貫きました。ヤッカマウンテンというのは、砂漠地帯にはありますけれども、しかしやはり雨は降りまして、そのために放射能が漏れる道というのは、この水を通じて地下水の方に及ぶというものです。ヤッカマウンテンからこの地下水の流れの下流20キロメートルほどのところに小さな村がありまして、そこでは、このヤッカマウンテンの地下の水を使っております。その水は灌漑にも使われておりますし、それから家畜に水をやるためにも使われております。そして、住民たち自身の飲料水にもなっております。このためにEPAは、安全な飲料水のための法律というのを厳守してきたという主張をずっと続けております。この法律というのは、飲料水の中にある基準以上の放射能が含まれていてはいけないということを定めております。
 それで、このEPAの抵抗を何とかしようということで、さっき言いました2度目の法律の転換が行われた2年後に、またまた原子力産業が議会に圧力をかけまして、その議会の中で原子力産業側と協力をする人たちと一緒になって、また法律の変更を試みます。つまり、1994年以来原子力産業は、何とかしてEPAを完全に外してしまおう、つまり核廃棄物の処分場に関する規則の権限をEPAから奪ってしまおうということをずっと試みております。このために、私たちNIRSを初めとするグループ、その中にはシェラクラブといったような非常に有名な団体も含まれておりますけれども、こういったNGOがEPAに放射能の基準の設定を任せようという闘いを続けております。この5、6年ほどこういった闘いを続けております。
 クリントンは、私たちの考え方にこの点では同意をしておりまして、この4月にもある法律に対して拒否権を発動しております。つまり、EPAを基準の設定から外してしまおうと、その権限を奪ってしまおうという法律ですけれども、これに対して拒否権を発動しております。原子力産業が、そして彼らと結託をしている議員たちが、大統領の拒否権に挑戦しまして、もう1度議会でこの決定を試みます。これは、拒否権が発動されてから1週間のうちに行われた投票ですけれども、ここでわずか1票の差が何とか大統領の拒否権を維持するということができました。この闘いに何とか勝利をすることができましたから、クリントン政権が続いている間はこういった試みはもうされないんじゃないかと考えております。しかし、原子力産業の支持派は、ある議会の規則を使いまして、この法案をまたいつでも持ち出せるという策動を試みました。ですから、彼らが望めば、いつでもこの法案についてもう1度投票ができるような形になってしまっております。ですから、私たちの方では、ずっとこの動きを監視し続けなければいけません。
 こういった形の法律の変更というのが何度も行われてきましたけれども、それだけではなくて、エネルギー省の方針というのも何度も変わっております。1984年にエネルギー省は、処分場の候補地の選定に当たってどういう基準を使うのかというガイドラインを定めております。このときにはまだエネルギー省は、アメリカ全土で候補地を探すという作業をしておりました。その中にはヤッカマウンテンも含まれておりましたけれども、そのほかにもいろいろな地点を候補地として検討しておりました。エネルギー省は、サイトの選定に当たって、満たされなければいけない条件、要素、こういったものをこのとき規定しております。その中には、地質学的なもの、それから水文学的なもの、さらに地震に関連したもの、これらの点について条件が定められました。しかし、この規則が定められてから12年後、つまり1996年ですけれども、エネルギー省の科学者はある発見に驚いてしまうことになります。
 それは何かといいますと、ヤッカマウンテンの山頂から300メートルのレベル−これが廃棄物の処分場がつくられるべきレベルなんですけれども、ここで塩素36の含有量が高まっているという発見です。この塩素36がどこから来たかということですけれども、その唯一の場所として考えられるのは、太平洋の核実験場であります。つまり、核実験をした際に、海の水が放射化されてできた塩素36がネバダまで届いたということです。この太平洋でできた、放射化された塩素が上昇しまして、そして風に乗ってネバダまで届いて、雨の水となってヤッカマウンテンに降り注いだわけです。ですから、非常に皮肉なことなんですけれども、この核実験で生じた放射性の物質が一つのトレイサーの役割を果たしまして、地上に降った雨の水が亀裂を通って、50年以内に処分場の想定されている深さまで届いてしまうということを示して見せました。
 1984年に定められたガイドラインですけれども、こちらの方では、1000年以内に水が動くということが判明すれば、直ちにその場所は廃棄物の処分場としては適さないものとみなすべきだということを言っております。ですから、エネルギー省は、この自分に対して決めた基準よりも20倍の速さでヤッカマウンテンの水が動いてしまったということを発見したことになります。しかし、自分たちが定めた基準に従って、この地域での研究を直ちに放棄してしまうということではなくて、基準自体を変えるということを選びます。そもそもこの地層処分という考え方が出てきた理由は、この地層がバリアになって、放射性の地層が隔離されるという考えがあるわけです。この隔離によって、放射性物質が環境中に放出されるのを防ぐことができるという考え方が根底にあります。しかし、この隔離ということがヤッカマウンテンでは不可能だということが判明してしまいましたので、エネルギー省はこの根本的な考え方自体を直ちに変えてしまいます。
 それで、隔離ということを口にするのをやめまして、「工学的なバリア」ということを言い始めます。それから、廃棄物の放射性物質が外に出るのを防ぐという言い方もやめてしまいまして、かわりに「その速度を緩める」という表現に変えていきます。アメリカの科学アカデミーというところが1995年に報告書を出しまして、その中で、処分場の放射性物質は100万年にわたって隔離できなくてはならないと言っております。これは、放射性物質には非常に長い寿命を持っているものがあるから、こういう結論を出したわけです。しかし、エネルギー省、それから原子力規制委員会(NRC)、そして環境保護庁、こういったアメリカ政府の機関は、今では1万年という数字しか挙げておりません。これは、放射性物質の寿命から比べると、非常に短いものであります。そして、この1万年の間隔離をするということに関しても、容器がどういった能力を持つかということについて非常に楽観的な想定をエネルギー省の方はしております。エネルギー省の想定によりますと、最初の1000年間の間に問題を起こしてしまう容器は1体しかないということになっております。最初の1000年間では、それしか問題は起きないということになっております。
 しかし、さっきも言いましたように、アメリカでは、ドライキャスク(乾式貯蔵)のための容器の使用というのが始まっておりますけれども、その開始から数年のうちにさまざまな深刻な問題がアメリカ全土で生じております。大規模な放射性物質の放出というのは起きておりませんけれども、しかしさまざまな驚くべき事態が生じております。その中でも最も驚くべき例というのは、これはウィスコンシンで起こっております。これは、予期していなかった化学的な反応が生じてしまった結果、爆発が起きたということです。それからもう一つの問題は、このキャスクのふたを溶接でとめるということをやりますけれども、この溶接に亀裂が生じております。そのために、中にあるヘリウムガスが漏れ出すということが起きております。このヘリウムガスというのは、この容器の中におさめられている使用済み燃料が腐食しないようにという目的で入れられているものですけれども、これがキャスクから外に漏れ出すということが起きてしまっております。しかしこれは、ヘリウムガスが漏れ出していますから、中の使用済み燃料の腐食、あるいは損傷が早く進行してしまう可能性があります。そのために、将来この貯蔵用のキャスクを動かすということになりますと、労働者に大変な危険が及んでしまう可能性があります。ですから、さっき言いましたエネルギー省の側の考え方というのは、余りにも楽観的にすぎると言わざるを得ません。ヤッカマウンテンに貯蔵した後、1000年の間に1体しか問題は起きないという想定は楽観的にすぎると言えます。
 このゲームの途中に規則を変えるというやり方というのは、現在でも続いております。原子力規制委員会は、当初からヤッカマウンテンの選定に当たっては、完全な形の公聴会を開くということを約束してきております。この原子力規制委員会(NRC)というのは、エネルギー省に対して許可を与える権限を持っています。エネルギー省がヤッカマウンテンに処分場をつくって、これを運転するという許可を与えるのはこのNRCであります。
 先月のことですけれども、NRCは公聴会に参加する住民の権利を奪うという策動に出ております。NRCの委員長自体がわざわざ議会に赴きまして、そこで公聴会に参加する権利というのを住民から奪ってしまうようにということを訴えております。この試みが成功しますと、たとえ公聴会が開かれても、住民の側は反対尋問を行ったり、あるいは資料の開示を求めるという権限を失ってしまいます。 一方、エネルギー省の方もガイドラインの変更を試みております。さっき言いました融量率が非常に速いということがわかったわけですけれども、これにもかかわらず、ヤッカマウンテンの計画をそのまま進められるようにしようとしております。それで、私たちNGOの側は、こういった形の法律あるいは規則の変更に抵抗するということを進めております。ヤッカマウンテンというのは、環境に与える影響が非常に大きなものになってしまう、処分場として適切ではないということが明らかなわけですから、これを阻止するための運動を進めていきます。
 ご清聴、どうもありがとうございました。

【司会】

大変貴重なお話を伺うことができました。どうもありがとうございます。
 今ケビンさんのお話をお伺いしたんですが、時間の都合によりまして、ケビンさんに対するご質問の方は、パネルディスカッションの方の途中段階でご質問を受けることにいたします。
 今からパネルディスカッションの準備に入りますが、そのまま少々お待ちください。

第2部 パネルディスカッション

パネラー紹介

コーディネーター

河合弘之(日弁連実行委員)

パネラー

福島瑞穂(参議院議員、弁護士)
 西尾 漠(原子力資料情報室)
 石橋忠雄(青森県弁護士会弁護士)
 ケビン・カンプス(NIRS)
 栗山 知(日弁連実行委員)

パネルディスカッション

【河合弘之】

日弁連公害対策環境保全委員会のエネルギー原子力部会の部会員であります弁護士の河合弘之であります。
 ただいまからパネルディスカッションを開始いたしますが、その開始に先立って、皆様方に申し上げたいことがございます。
 きょうのパネルディスカッションは、いわば推進派と反対派の両方の議論を闘わせたいということで、公平な場を設定するという趣旨でございます。その趣旨にのっとって、科学技術庁に今回のパネルディスカッションについてパネリストを派遣してほしいということを数回にわたって要求いたしました。ところが、科学技術庁は、かたくななまでにそれを拒否しました。私は電話で何回も口論をいたしました。そして、彼らの言い分は、要するに「自分たちは自分たちで説明会をやっているから、そういうものに出る必要はない」、こういうことでございました。私どもは、「日本弁護士連合会という半分公的な団体が、非常に賛否両論あるこの重大な問題について公平な場を設定するのだから、本当に自分たちの政策ややり方に自信があるのなら、みんなの前に出てきて説明をすればいいじゃないか、そして反対派の人たちと議論をすればいいじゃないか」ということを言いました。そして、「いろいろなところに出かけていって説明をするのが公務員たる、公僕たる科学技術庁の務めではないか」ということを言いました。それから、「あくまでも拒否をするなら、その集会で科学技術庁は拒否をしたということを言うぞ」ということまで言いましたけれども、ついに彼らは出てきませんでした。そのことを初めに申し上げておきたいと思います。
 では、パネリストの皆さん方を紹介いたします。
 こちらから西尾 漠さんでございます。この方は、原子力資料情報室の共同代表のお1人でございまして、また「反原発新聞」の編集長で、反原発運動に数十年にわたって粘り強く取り組んでおられる方です。著書としては、「地球を救うエネルギーメニュー」、これは今入り口で売っております。また、「原発を考える50話」ということで、岩波ジュニア新書で出ております。これも、私も読みましたが、大変な名著でございます。
 次に、福島瑞穂さんを紹介いたします。今、政権を左右する総選挙が行われている最中、社民党の看板参議院議員として東京でいろんな演説をして、打って回らなければいけないのを、日弁連と夫の海渡弁護士の力で今日ここに引っ張ってきました。ただ、そういう関係がありますので、途中で失礼させていただくことになると思います。この福島瑞穂さんは、社民党の参議院議員であるとともに、その中で自然エネルギー促進議員連盟−これは超党派の連盟ですが、これの事務局次長をしておられます。そして、今回成立しました特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律の審議の中で質問に立って、その内容は非常に鋭い追及的な内容だったわけですけれども、その内容については、皆様のお手元に議会の議事録がありますので、ごらんいただきたいと思います。
 次に、石橋忠雄さんです。この方は青森県弁護士会の弁護士でございまして、長い間原子力発電の問題、特に高レベル廃棄物の問題について取り組んでおられます。そして、現在は原子力委員会の高レベル放射性廃棄物処分懇談会の委員でございます。そしてまた、原子力長期計画策定会議及び第1分科会−これは「国民社会と原子力」というテーマの分科会でございますが、そこの委員も務めておられます。そういう委員会に入って、批判的な立場から粘り強い発言を繰り返しておられる方でございます。石橋先生、よろしくお願いいたします。
 次に、栗山 知弁護士です。岐阜県の弁護士会で、先ほど基調報告をいたしました。この若い弁護士さんが何であんなに専門的なことをぺらぺらぺらぺらしゃべるんだろうかと、本当によく知っているのかなと思われた方もいらっしゃると思いますが、この方は京都大学の地球物理学の修士を修了しているという、非常に変わり種の弁護士さんでございまして、本来は原子力、物理、地球物理とか地震とか、そういうことを研究しているはずの方でございますが、7年前から弁護士をして、地元で粘り強く活動しておられるわけですが、今回この問題に本当に熱意を持って取り組んでいる弁護士さんです。
 では、お一人お一人に、初めに10分ぐらいずつ基調のお話をしていただきたいと思います。
 時間の関係で、まず福島瑞穂さんにお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【福島瑞穂】

皆さん、こんにちは。私はちょっと声がかすれていまして、どうも申しわけありません。
 今国会の中では、原子力を巡るさまざまな問題が議論になっております。先ほど河合さんの方から自然エネルギー促進法の話がありました。やっと国会の中で、エネルギーの問題についての議論がかなりなされるようになっております。私は、いただいた時間が10分なので、ぎりぎり衆議院解散の直前に、残念ながらずさんに成立いたしました高レベル放射性廃棄物の法律、中身の問題点と、そのことについて。二つ目は、自然エネルギー促進法を巡る、今法案ができ上がっておりますので、国会の中でどうなるのか、通したいと思っているんですけれども、そのお話。それから、原子力安全規制行政、第三者機関、これは民主党がとても熱心にやっておりまして、私も基本的には大賛成です。その3点について申し上げたいと思います。
 ただ、ちょっと先ほどの感想を申し上げますと、カンプスさんの話を聞きながら、ポリティカルリベンジ、例えば政治的報復のためにネバダに決まったとか、いろんなことが、やはりなぜこんな廃棄物が、例えば北海道、青森、岐阜においてよく議論になるのか。つまり、科学的な問題ではなく、政治的な問題であると彼はおっしゃったんですけれども、実際日本のエネルギーの問題も、本当は政治的に決められているわけですけれども、国会の中のレベルになったということは、大変大きいと思います。
 まず初めに、高レベル放射性廃棄物の問題点について、廃棄物の法案について申し上げたいと思います。
 私の、審議録がありまして、皆さんの資料の中に参議院の議事録が入っております。もっと興味のある方は、全部、衆参合わせた議事録がありますので、おっしゃってください。
 先ほどの基調報告などとも若干重なるのですが、まずこの法案の質問をしまして、本当に思ったのは、プルトニウム政策をそのまま前提にして、この法律を成立させようとしているという、そういうことです。今日本にはプルトニウムが30トンあります。日本と外国も含めて、日本のプルトニウムは30トンも今だぶついております。しかし、この法律は、プルトニウム政策が日本がやり続けることを前提につくられております。先ほど、「孤立する日本の原子力政策」という日弁連の本、あるいは政策の紹介がありましたけれども、そのことが本当に問題であると思います。再処理をして、どんどんどんどんプルトニウムを出す、その過程において廃棄物が出ることを前提にこの法律がつくられているということが第1の問題点です。
 第2番目には、この法律は全くの白紙委任の法律であると思います。弁護士は、白紙委任状にはサインをするなと依頼者に言うわけですけれども、この法律は全くの白紙委任です。例えば、候補地の選定基準というのは全く明らかになっていないんですね。それは別の法律をつくりますと言っているわけです。安全基準についても、それは別の法律ですと。つまり、わかりやすく言うと、今度の法律は、とにかく地下300メートルに埋めるということと、電気料金にその処分のためのお金を上乗せしますよということだけ決めて、「原子力はトイレのないマンション」とか言われますが、とにかく捨てるということだけ決めて、その基準や中身については、これから別の法律をつくりますという形になりました。ですから、順序が逆だろうと思っております。極めて白紙委任です。ですから、今後また法律をつくるときに、どういう基準でやるのかということをかなり私たちは注意をして、今度はきちっと審議がされるようにと、国会の内外で一緒に努力をしたいと思っております。
 それから、先ほどから岐阜のことが話題になっております。ちょっとそのことで申し上げますと、国会での質問の中で、「深地層研究所やそこでの研究結果は、選定、処分の実施主体の事業にどのように反映されるのか」という質問もしました。でも、非常に明確ではないんですね。それで、何度も質問をして、「試験研究と実施は別ということであれば、深地層研究所などの試験研究施設のあるところは処分実施の候補地には選定されないということを法律上明記すべきではないか」というふうに何度聞いても、そのことについては明文規定を設けるというふうには一切言っておりません。ですから、今回はとにかく、こういう法律をつくって、これは中間的なものだから、これは試験的なものだからとして、とりあえず私が思うには、青森、岐阜、北海道を黙らせるという、そういうための法律かもしれないと思います。
 国会の中でもう一つ争点になったことは、地元の同意という、この問題があります。それで、通産大臣は本会議で、「都道府県知事と市町村長の意見を重く受けとめ、十分尊重していく」と述べました。それは同意ということと同じことなのか、どういう意味なのかということは、参議院でも非常に議論になりました。それは、またここがちょっとあいまいなんですね。ただ、「十分に尊重していくということは、意に反しては処分場とはしない、意に反しては行わないということと同義語だ」ということを政府は答えております。弁護士の立場からすると、十分に尊重するということと、同意ということは、法律のレベルとしては違うわけです。ただ、国会の段階では、意に反しては最終的な決定はしないということを言っております。ただ、ポイントは、地元の同意というのは首長の同意でいいんですね。都道府県知事と市町村長の同意ということを通産大臣は国会で答えております。でもそれは、住民投票なり、もっと住民の同意が必要ではないかということは、国会でかなり意見が出ました。
 それから、行政は行政区画の単位にこだわっています。でも、これはやっぱりおかしいんですね。例えば、長野県には原子力発電所はありません。でも、新潟で原子力発電所の事故が起きれば、明らかに行政区画、全く関係ないわけですから、長野県にも被害が及ぶと。しかし、国会の答弁では残念ながら、都道府県知事、市町村長という、それだけ上がっております。極端に言うと、青森県知事、それから岐阜県知事、北海道知事を黙らせれば、やれるということではないかと私自身は大変危機感を持っております。
 この高レベル放射性廃棄物は、国会の中で実質審議が衆議院と参議院の4日間ずつしか行われておりません。一時は、ロビー活動などが市民団体から非常に活発になされたので、つぶれるんじゃないかという話も途中出ました。しかし、残念ながら、例えば民主党は途中までは反対だったんですが、賛成に転じて、国会の中では社民、共産反対ということで、残念ながら成立しました。ですから、これは国会の内外でもう少し力を、もっとロビー活動なり、私たちの、私自身の課題でもあるんですが、もう少し頑張って、いい審議をするか、あるいは廃案に追い込めなかったものかということは思っております。ですから、国会で何が起きているかという情報発信ももっとしていくことは課題かと思います。時間がないので、次に行きます。
 自然エネルギー促進議員連盟が超党派230人で−神道政治連盟、自民党の政治家の数と同じですが、自然エネルギー促進議員連盟超党派230人で発足しました。たくさん与党の先生たちもかなり入っております。法案はほぼできました。自然エネルギー、要するに原子力に依存しないで、太陽光、風力、バイオマス、地熱などを使って、環境に負荷を与えない、循環型のそういうエネルギーをどうやって高めるか。買い取り義務というところまで行きたかったんですが、一応基本計画を電力会社でつくって、それについてチェックをさせるということと、それから買取約款について、それを公表するということの中身で法案を超党派でつくりました。これは、公明、民主、社民、共産、これはこの法案オーケーと言っておりました。しかし、自民党の中がまとまらずに、通常国会に出すということが目的だったんですが、残念ながら通常国会に上程ができませんでした。
 これは、国会の中では、原子力推進側と自然エネルギーを推進しようという側の強力なバトルが行われて、原子力促進法は出さない、しかし自然エネルギー促進法も出さないということが自民党の中で、一応両方痛み分けという形で決着をしたというふうに聞いております。どういうことかといいますと、私たちは、自然エネルギーの割合を高めたいんです。今1%、2010年には政府は3%と言っています。そんなけちけちするなということで、EU並みに20%台、もっときちんと自然エネルギーがテークオフして、ある程度きちっとできるように法律をつくりたいと考えて、その法案をつくりました。そのお金、費用をどうするかということで、特別会計、つまりこの電気料金の中に含まれている立地勘定、原子力発電を推進するために料金に上乗せされております。しかし、原子力発電所の立地がなかなかできないので、お金がプールされて、余っているんですね。そのお金を自然エネルギーに振り分けたいと思っているんですが、原子力推進側は、特別会計以外に一般会計からもっと原子力に対してお金を出してほしいと。要するに、バトルが行われまして、今国会では自民党の中はまとまらず、法案は残念ながら出せませんでした。ですから、油断もすきもならないのが国会で、次、特別国会、それから通常国会で、原子力促進法が出るのか、自然エネルギー促進法が出るのか、万が一両方出た場合に、どっちが勝つかみたいな、そういう形になっております。
 あと、原子力安全規制行政の推進からの独立を確保する。推進するのと安全というのを分離して、独立しようということに関して、民主党が非常に熱心にやっております。基本的にはこれは正しいと思っております。そういう意味では、国会の中は、どうやってもっと原子力に依存しない社会に移行していくのかという勢力と、いや、やっぱり原子力だという−これは実は与野党問わないんですけれども−という側の非常なバトルの中で今議論が進んでおります。
 高レベル放射性廃棄物処分法、残念ながら成立しました。しかし、中身についてはかなり白紙委任なので、これから私たちは頑張って、変に悪用されないように、あるいはとどめを刺すようにということがこれから必要だと思います。
 ちょっと時間をオーバーして、済みません。どうもありがとうございました。

【河合弘之】

では次に、西尾 漠さん、お願いいたします。

【西尾 漠】

西尾です。
 お手元に、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律審議の中で明らかになったこと」というのが入っていると思います。
 ただ、むしろお話ししたいことは、そこで明らかになったことではなくて、むしろ明らかにならなかったこと、このペーパーでいうと、もう1枚目の方に書いたことなんです。国と、それから放射性廃棄物の発生者である電力会社の責任ということについて、この法案そのもの、それから審議の中でもおよそ明らかにならなかった、そのことについてお話ししようと思っているんですが、実は最初の段階で、時間がないというので、その話は後にして、何か明らかになったことのうちで、その中に幾つか書いたことというのは、まさにこの東濃が処分場にはならないというふうに言われている。しかし、そうではなくて、むしろ処分場にされてしまう危険性というのは非常に多く持っているということがあると思います。それも後の議論の中でということにして……。というふうにやっていくと、どんどんなくなってくるんですけれども……。
 最初の、頭のプルトニウムの話とか、ここら辺は上田さんの基調にもあったしということで、ちょっと飛ばしまして、3番目、今福島さんが「白紙委任」というふうに言われた問題なんです。
 候補地等の選定の要件、それから安全規制について後回しになっている。候補地の選定の要件については、通商産業省令で定めるということになっています。まだ法律そのものの中には幾つか例が書いてあるけれども、非常に漠然としたものしか出されていない。それから、安全規制の方については、これは別の法律で定めるというふうにこの法律の中で書いてあります。普通に考えると、原子力等規制法の改正という形になっていくんだと思いますけれども、いずれにしても、そういったことが後回しになっている。
 そのことは、お手元の裏側の方に、これは原子力安全委員会の放射性廃棄物安全規制専門部会というところが出した基本的考え方についての中間整理という段階でのものをとりあえずコピーしました。このスケジュールで見ていただいても、表の右側にある安全規制については、処分の候補地が決まった後で安全審査の基本指針がつくられる、処分予定地が決まった後で安全審査の指針がつくられる、そんなふうに読めると思うんです。実を言うと、この専門部会がつい先週に開かれて、若干修正になったんです。言葉遣いもかわっていて、この「処分候補地」と書いてあるところは「概要調査地区」、それから「処分予定地」と書いてあるところは「精密調査地区」、それから「処分地」と書いてあるところは「最終処分施設建設地」、つまり今回通った法律に沿った形で名前がかえられているんですけれども、別の言い方をすると、要するに今言われている「概要調査地区」というのは、ただ単に調査地区ではなくて、これが処分の候補地なんだということを、逆に言うと非常によくわかります。「精密調査地区」というのは、まさに処分の予定地であるということになって、その上で「最終処分地」が決まってくる。その名称のところは直っていますけれども、説明のところは、その案は、「概要調査地区選定」と書いてありながら、「処分候補地における調査」というふうに、説明のところはそのまま残っているんです。
 そんなことを含めて、結局のところ、あらかじめ決められた場所に合わせていろんな基準がつくられていくというふうに、順序がどうしても逆になっていくんではないか。しかも、その審査の基本指針から安全審査指針の間には新しい知見を取り入れるという形になっている。処分場の技術基準等についても、実際の建設段階、操業段階とかで適宜見直すということになっている。結局のところ、選ばれた場所に合わせてそういった基準がどんどん変わっていくんじゃないか。これは、先ほどケビンさんが話したアメリカの話がおそらく同じような形になってくるんではないかと思います。その辺が一つどうしても大きな問題として残るんではないか。しかも、その選定の要件の中では、例えば地下資源の存在というのは除外条件にならないということが、かなりこの法律ではっきりしているという問題があります。
 それと、これも今福島さんが言われたことですけれども、都道府県知事、市町村長の同意については、十分に尊重するといいながら、住民の意見は、そうは書いてない。法律そのものを見ると、この法律の中では住民のことについてはどう書いてあるかというと、「概要調査地区等の選定に係る関係住民の理解の増進」というのを基本方針に書くというわけです。まさに、地元の関係住民は理解をするだけというのがこの法律だということが非常によくわかります。そういう形でこの法律がつくられてしまっているということをもう1回改めて、もう通ってしまったわけですけれども、こういう法律なんだ、こういう問題点があったんだ、しかもそれがまさにだれもほとんどの人がわからないうちに決められてしまったということ、であるとすれば、私たちの側からきちんとそのことをさらに広く知らせていくということが必要なんではないかと思っています。

【河合弘之】

はしょらせて申しわけないんですが、福島さんがまた東京で選挙の最後の追い込みに行かなきゃいけないので、最後に発言していただきます。

【福島瑞穂】

そうしたら、先ほど私は時間をオーバーしたので、一つだけちょっと見せびらかしますと、これはキャニスターで私のパートナーがもらってきたミニチュアなんです。この巨大なものが地下300メートルに埋められるということになります。岐阜は、水もおいしいですし、地震も多いところで、地層処分をなぜやるのか、あるいはもし漏れ始めたときに回収を一体どうやってやるのかというのを国会で聞いたんですが、それもまた「別途これから考えます」ということで、非常に恐ろしい審議だったんですが、ちょっとこれを持ってきましたので、見せびらかして、音もなく途中で帰ります。済みません。

【河合弘之】

それでは、西尾さんに大変はしょらせてしまったので、もう少し話をしていただきたいと思います。申しわけありませんが、西尾さん、もう1回もとに戻って、このレジュメに基づいて話をしてください。

【西尾 漠】

今度は逆に時間をうんとオーバーしそうなんですけれども…。

【河合弘之】

じゃ、そうしましょう。私の不手際で申しわけありません。それから、西尾さんの補充コメントは後にしまして、石橋忠雄さんに各種委員会の審議に携わったインサイドからの報告というのをお話し願いたいと思います。よろしくお願いします。

【石橋忠雄】

委員会というよりも、私がここに呼ばれた理由の一つというのは、恐らく青森に住んでいるということだろうと思うんですね。私のいるところは青森県のむつ市というところで、ご承知のように原子力船「むつ」が放射線漏れ事故を起こして、長く係留されていたところであります。
 ことし、5回目でしたか、フランスからの高レベル放射性廃棄物の搬入がありました。これは、廃棄物がガラスで固められたガラス固化体という形になって来ているんですけれども、合計で272本でしたか、現在青森県の六ケ所村にあるわけであります。この海外から来るガラス固化体、これの放射性廃棄物は、日本がイギリスとかフランスに再処理をお願いしているところから出てきているわけであります。たしか今年だと思いますけれども、フランスの国会で、海外−日本から来ている放射性廃棄物の返還の期限を早くすべきである、こういう報告が両国会で了解されておるわけであります。
 一方、昨年私、ちょうどジェー・シー・オー事故の後に、10月でしたか、マレーシアでマレーシア政府の主催する放射性廃棄物、放射性物質の海上輸送に係るシンポジウムというのがあったんですけれども、それに招待されて出たんです。そこではやはり、日本のプルトニウムとか高レベル放射性廃棄物の海上輸送に関するさまざまな検討がなされたわけです。特にあの辺の海洋国家は、事故とか危険というものに対する不安というのは非常に根強いものがあったわけです。今、両先生から特定放射性廃棄物の法律の問題点というのが出されたわけでありますけれども、その処理、処分といいましょうか、あるいは問題のあり方をどうするかということについては、非常に国内・国際関係で対応が複雑な問題というのが中にあるわけであります。
 この高レベル放射性廃棄物の処分懇談会というのが4年前にできて、3年ほどかけて一応報告書を出したわけであります。その中で、ちょうどこちらにも来たんですが、全国で国民との意見交換会を開きました。西尾先生にも出ていただいたわけですが、ちょうど九州でやったときに、九州の長崎の方から私こういうことを言われたんです。原子力船「むつ」が放射線漏れ事故を起こして、佐世保で修理をしたことがあります。そのときに我々むつ市民といいましょうか、青森県民は、「もう帰ってくるな」ということでシュプレヒコールを上げて、気勢を上げたんですけれども、結局戻ってきたんです。その長崎の方から、「どうして我々は、青森県で起こした事故の後始末というものをつけなければ、責任を負わなければいけないのか」というようなことでありました。それを聞いて私は個人的には、青森県から高レベル放射性廃棄物よ出ていけと、どこかへ持っていって処分してもらいたいと、こういうことを言うのはもうやめようと、こういうふうに思いました。
 この処分懇談会で検討したテーマというのは、どのような条件が整ったら、国民がこの問題にかかわりを持って、そして議論をしてもらえるのかというような視点から議論、検討をしてきたわけでありますけれども、なかなか、今先生方のお話を聞いても…

【福島瑞穂】

何て失礼な女だろうという感じですが、申しわけありません。実は選挙で、党には内緒でここに来ている……。
 それはさておき、東京に戻らなくちゃいけないので、石橋さんのお話の途中に済みません。二つだけちょっと短く言わせてください。
 例えば、イギリスのBNFL社のデータの捏造の問題に関して、全部、日本の通産省とか、資料を隠していたんですが、国会で質問があって、資料が出てきて、全部それが暴露されるという、MOX燃料についてBNFL社が捏造していたということなどが出てきたりしています。ですから、国会はくだらないところだけれども、情報公開などを極力やろうと思っているのと、それから今日カンプスさんが来てくださっているのは大変ありがたいんですが、例えばイギリスの労働党の国会議員でイギリスの原子力政策を変えようと努力している人などが日本に来て、日本で国会議員同士交流するとか、アメリカで、さっき言った安全行政と推進をどう分離するかという問題に関して、NGOの人たちと交流するとか、世界の中でこのプルトニウムの問題、原子力政策を、力を合わせて、NGOのレベルで、国会のレベルで政策を変えようという動きも大変始まっています。そういうときに、外国での情報公開が日本の国会の中で聞けるとか、非常にネットワークが広がっております。
 だから、今日私が来たのも、ぜひいろんな国会の内外で、あるいはNGO間で、世界中でネットワークを強めて、やはり政策の転換をしていこうと思っております。
 石橋さん、お話の途中で、しかも皆さん、途中で退席をする失礼をどうかどうか許してください。その分また頑張って働きますので、よろしくお願いします。どうもありがとうございます。(拍手)

【河合弘之】

福島さん、どうもありがとうございました。
 石橋さん、途中で遮って申しわけありません。どうぞお話をお続けください。

【石橋忠雄】

いや、もう終わりなんですけれども、そういうことで、今福島先生が言われたような広範な形でこの議論というものが行われるということが今後とも、恐らく30年、50年の長いそういう期間、そういうスパンの中で必要になってくるんではないかなと思っております。以上です。

【河合弘之】

どうもありがとうございました。
 それでは、皆さん方に質問書、質問用紙が配られていると思いますが、今までの議論の中でわいた疑問等について質問状を書いていただければ幸いでございます。始まって1時間24分たちます。大変お疲れだと思いますので、ここで10分間の休憩をいたします。その後、今度はパネリストの間でディスカッションをし、また皆さん方の質問も取り入れていきたいと思います。35分から再開いたします。よろしくお願いいたします。


休憩

【河合弘之】

ご着席をお願いいたします。
 初めにお断りしたいと思うんですが、今日のプレシンポジウムの勧誘のビラに、元動燃で地質問題、それから放射性廃棄物の問題について大変詳しい土井和巳さんという方にご出席願うというふうに書いてあったんですが、この方は急遽、世界中の高レベル放射性廃棄物の処分場候補地を見学して回る企画に入りまして、今世界中を見て回っているという状況でございます。その関係で出席いただけなくなりました。ただ、10月の本シンポジウムのときにはご出席をお願いすることになっておりますので、そのときをご期待いただきたいと思います。
 それでは、パネルディスカッションを再開いたします。
 初めに、西尾 漠さんの方から、この高レベル放射性廃棄物というのは、処分の責任はだれが持つべきなのかという基本的な問題について問題提起なり意見をお願いしたいと思います。西尾さん、お願いします。

【西尾 漠】

最初に言いましたように、そのことを今日は言いたいと思って、表をつくりました。お手元の資料の2枚目の方に、高レベル放射性廃棄物発生者、処分実施主体、国の役割という表をつくってみました。つくってみて、改めて、本当にその責任の所在というのが明らかになっていないと思いました。
 一応その三つに主体を分けています。発電用の原子炉設置者、これが法律の表現ですけれども、実際には電力会社と「ふげん」、「もんじゅ」を持っている核燃料サイクル開発機構がこの発電用原子炉設置者ということになります。それから、原子力発電環境整備機構というのが、今回新しくつくられようとしている、今年中に、もう既に7月の頭ぐらいには準備組織ができると言われていますけれども、処分の実施主体と言われている部分です。それからさらに国ということになるわけです。
 例えば、先ほど話があったアメリカの核廃棄物政策法なんかですと、安全の確保ということと、それから国その他の責任の所在を明らかにするということが法律の目的にうたわれているわけですけれども、この場合にはそうは全然なっていない。特に処分の実施主体をつくるということは、逆にいえば、そこにおいてどういうふうに責任を分担させるのかということが問題になると思うんですけれども、結果的にはわけのわからない形になっているというのをその表で示しました。
 上からざっと見ていきますと、事業の計画についていいますと、これは国の方が基本方針、それから最終処分計画というものを策定して、公表します。それから、原子力発電環境整備機構では実施計画というものを作成するということが書いてありますけれども、これは通産大臣の承認が要ります。ただし、これを公表しますというふうには法律には書いてない。別の条文の中で「機構は、適切な情報の公開をしなくちゃいけない」ということが書いてありますし、普通に考えれば、公表するとは思いますけれども、法律には明記されていないということです。そうした計画に沿って、実際に調査地区とか処分場、候補地を選んでいくわけですけれども、これはだれが選ぶのかということがもう一つよくわからないんです。原子力発電環境整備機構が選定をするというふうになっていますけれども、じゃ、国はどうするのか。この法律を読むと、一つは、実施計画で選定をする。それについては、国が承認をするというふうになっています。ですので、先ほど見ていただいたスケジュール表の方には、ここに「国による確認」と書いてあるんですが、この「確認」は、法律の表現に従って「国の承認」というふうに今新しいものでは直っています。いずれにしても、国は承認をするんだというのが原子力安全委員会の部会の考え方です。法律にもそういう書き方をしてあります。
 ところがもう一方、同じ法律の中に、「通商産業大臣は、調査地区等の所在地区を定めようとするときは」云々というふうに「定める」という表現が使ってあります。国会の答弁の中でも通産大臣は、「これは自分が決定するんだ」という表現を使っている。その辺も非常におかしいんですけれども、そうすると、じゃ、選ぶことの責任は一体どっちが持つのか。逆に言うと、選ぶことにどれほど国が関与してくるのかということにもかかってくる、その辺が非常に不明確という気がします。
 それから、技術開発について、これは法律には何も書いてないわけですけれども、その法律のもとになった、もともとは石橋先生が入っている処分懇談会、さらに総合エネルギー調査会原子力部会というふうに、だんだんに法律に近づいてくるに従って、むしろいろんなことがわからなくなっているような気がします。その原子力部会の報告書の中では、処分の実施技術については、原子力発電環境整備機構、つまり実施主体の開発を支援するというような表現があるわけですけれども、実際に行われているのは、まさに核燃料サイクル開発機構、つまり発電用原子炉設置者そのものが、処分の実施技術も、それから安全規制の技術も、どちらも開発している。処分の実施技術を行う、それは本来だったらば、まさに処分の実施主体が行うべきことだと思うんですけれども、それを核燃料サイクル開発機構という国の機関がやっている。自身は、発電用原子炉設置者、つまり廃棄物の発生者でもあるということになります。 一番おかしなのは、安全規制にかかわる技術開発をそこがやっている、つまり廃棄物の発生責任者が安全規制のための技術開発をやっているという非常におかしな形になっている。それについてこの法律では何も書いてないということなんです。
 それから、安全管理の責任をだれがどこまで持つのかということについて言うと、発生責任者である電力会社等は、廃棄物を搬入するまでというふうに原子力部会の報告書には書いてあります。法律には全く何にも書いていない。もちろん、事業が終わるまでの間、原子力発電環境整備機構−処分の実施主体が責任を持つことになっているわけですけれども、じゃ、その事業が終了した後はどうなるのか。
 「事業を終了した後は、国が責任を継承する」というふうに原子力部会は言っています。しかし、安全の責任を継承するということは、何らかの安全の管理が必要だということになるわけですから、それを国がかわってやるということは、そもそもおかしいというふうに思います。最後まで責任は実施主体であって、安全規制は国がやるというのが本来の正しいあり方だと思いますけれども、この今の形だと、事業が終わるまでは実施主体が実施をして、国が安全規制をする。ところが、事業が終了した途端に、安全規制をしていた国が事業そのものまで行うことになってしまうという、非常におかしな形になっているということがあります。
 しかも、「何らかの形で業務が困難な場合には、その全部または一部を国が継承する」ということが書かれている。そのときには、慌てて法律をつくって、その法律に従ってやりますということになっていますけれども、いずれにしても、放射性廃棄物そのものの発生者である電力会社、核燃料サイクル開発機構の責任どころか、処分の実施主体の責任というのも非常に小さなものにしかなっていないということがあります。
 それから、施設の閉鎖の記録は、機構がつくって、それを国が永久保存するということになっています。
 さらにわからないことだらけなのが、費用の拠出責任。これは、一応電気事業者が、つまり発生責任者が電気料金に転嫁します。いずれにしても、費用を負担するという形で、これが唯一の責任のとり方なんです。しかし、これがどれだけの範囲をやるのかというと、基本的には事業の終了までですね。終了した後については、全く何にもわからない。
 それから、事業終了の前の段階ですけれども、いわゆる地域共生費というふうに言っています。まあ、地元にお金を落とす。そのお金については、国が財政的な支援をするという言い方はしてある。逆に言うと、電力会社はどこまで責任を持つか、非常にはっきりしないということになります。さらに、業務困難な場合には、その全部または一部を国が継承していくということ。
 そういう意味で、本来責任を持つべき発生者である電力会社の責任を非常に小さくしているというのがこの法律であるわけです。しかも、そのことがはっきりわからない形になっているということが大きな問題だと思います。
 それから、いざというときの損害賠償の責任ですけれども、これは、今現在の原賠法−原子力損害賠償法の普通の考え方に沿うと、原子力発電環境整備機構が責任を負うことになると思います。しかし、それはおかしいのであって、少なくともある程度は発生者である電力会社に負わせるべきだという意見が、例えば電力中央研究所みたいな電力会社の機関からも出ているということが一方であって、もう一方では逆に、こういった賠償責任が出るような場合というのは、結局業務困難な場合、非常事態になっちゃうから、実は国がそれをカバーするという話にもなりかねない。そういうことも含めて、そういう責任問題が非常にあいまいになっているということが、この法律の大きな問題点だというふうに思いました。
 これは、石橋さんが最初にかかわった処分懇談会からすれば、大きな後退という気もするんですが、その辺について、できれば石橋さんの方からもコメントをいただければありがたいと思います。

【河合弘之】

石橋さん、今の点について何かコメントはありますか。お願いします。

【石橋忠雄】

私の理解の仕方が十分でないかもしれませんけれども、この責任が不明確であるということについては、少し分けて考える必要があると思います。
 最終処分の実施主体をどこにすべきか、あるいはだれが責任を負うべきかという問題が一つあると思います。その点では、これは一応今のこの法律は、処分懇の報告を受けて、民間が責任を負うということに、これははっきりなっています。ただ、西尾さんの言われるのは、あるいは民間が主体となってこの処分事業を進める、あるいは最終処分地を決定するということが問題である、こういうことであれば話は別だと思います。私自身は、処分懇あるいはその他の場でも、この件については、アメリカあるいはフランスの制度と同じように、国が最終責任を負うべきであるというように考えております。
 それと、これと関連する問題なんですが、安全基準についても不明確である。先ほど福島さんのお話にも、その点が国会でも問題になった、こういうお話があったわけです。この点は大きい問題といいましょうか、午後からのいろんなプレゼンテーションを聞いても、私は若干違う考え方を持っております。これは、地下研究施設のあり方というもの、あるいは地層処分是か非かという大きいテーマと直結する問題であると思います。あるいは、もっと、私は科学者でも、あるいは哲学者でもないので、わからないんですけれども、個人的な感想を言いますと、この今の我々が享受している科学とか技術、そういうものを背景とした社会というもののあり方にも関連すると思います。現在我々が直面している高レベル廃棄物というのは、全く未知の問題、経験したことのない問題なわけであります。したがって、安全基準といえども、たくさんの学者や研究者がいろいろ研究発表されております。しかし、それとて、明日になってみれば、これはどういうものになるかわからないです。そうすると、地層処分是か非かという問題はさておいて、一応地下研究施設をつくって、この問題についての研究をするということについては、私は必要だと思います。それはつまり、現在未知のものについての人間の英知を結集して、そして安全という目標に向けて何らかの答えを出していかざるを得ないという、こういう状況にあるかと思います。それが、安全基準を現在ここではっきりさせなければ前に進めないということであれば、私は物事というのは前になかなか進まないんじゃないかなと、こういうふうに思います。

【河合弘之】

ありがとうございました。
 大分根本的な問題になってきたので、果たして高レベル放射性廃棄物というのは、安全に地層処分ができるのかどうか。要するに、地層処分をすれば安全なのか、今日のタイトルそのものについて、栗山さん、どうですか。いろいろ勉強されて、超深層地に処分をすれば安全なのかどうか、その辺について、わからないなら「わからない」、わかるなら「わかる」と、ちょっとお答えいただきたいんですが。

【栗山 知】

極めて大きな問題を振られてしまいましたけれども、その辺については、結局まだ世界中どこでも結論がいないだろうと思いますが、特にこの日本においては地震が多い、また地下水が多い、地殻変動地帯であるということで、地層処分する場所があるのだろうか、日本でできるのだろうか、それが根本的な疑問としてあります。
 今回成立しました法律の一番の問題点というか、いろんな問題点が指摘されているんですけれども、私は、そういった点についてほとんど議論もされずに地層処分というのがそれで選択されてしまった、そういうことが一番の大きな問題だろうと思います。
 そうすると、日本においてどこかに処分場を選択しなきゃいけない、そういうことになります。そうすると、この日本の中で探していくことになるんですが、先ほどネバダの報告でもありましたように、一つの犠牲となる地というか、そこを見つけていかなければいけない。
 その押しつけ合いになってしまうんではないか、そういう目に見えるところで行われるか、それとも目に見えないところで行われるかわかりませんが、そういった押しつけ合いといいますか、処分地の探し合い、ごみを押しつけ合うというようなことが行われていく、そういった状況はやっぱりやめさせなきゃいけない、止めなきゃいけない。そのために、やはり地層処分自体をもう1度きちんと根本的に検討し直す、そういうことをきちんとし直さなきゃいけないんじゃないだろうかと私は思います。

【河合弘之】

西尾さんに聞きたいんですけれども、世界中のどこかで、高レベル放射性廃棄物をきちんと処分した実績−要するに完全に埋めたとか、埋めて完全に安全な状態にした、そういう実例はあるんですか。

【西尾 漠】

そういう実例はないですね。最終的に処分地を完全に決めたという国自体、まだない。ほとんど決まりかけているみたいなところはあるにしても……。

【河合弘之】

でも、とにかく原発を毎日毎日、例えば日本でもアメリカでもやっているわけですよね。もう高レベル放射性廃棄物、もしくは再処理した高レベル放射性廃棄物、もしくは使用済み燃料−アメリカなんかはそれ自体を高レベル放射性廃棄物と呼んでいるわけですが、それが地球上にたまっていることは事実ですよね。これはほうっておくわけにいかないでしょう。幾ら地層処分が危ないからとか何とかいっても。これはどうすべきなんですか。これからつくるのはやめようということをまず言わなきゃいけないけれども、それにしても、もう既にできてしまっている部分はどうしたらいいんですか。それについて、長い間この運動に携わっている西尾さんとしてはどう思われますか。

【西尾 漠】

基本的にそれは、容易に回収が可能な形で管理を続けていくしかないだろうと思っています。

【河合弘之】

それじゃ問題解決しないじゃないですか。

【西尾 漠】

もともと地層処分ということを考えた考え方というのは、地下深いところに埋めてしまえば、後の人たちは全く何もしなくて済む。ですから、後の世代に何の負担も与えないというので、地層処分というのはもともとはスタートしたわけですけれども、現実にはそうはならないかもしれない。後の人たちに、実は何らかの形で回収が必要になってくるかもしれない、そういったことも含めて、あるいは何かとんでもない、まさに不測の事態が起こるかもしれないということを考えて、じゃ、深層処分をしても、回収が可能なようにできるんじゃないかみたいな議論が今盛んに行われてきているわけですけれども、そうなってくるとすれば、そもそも深地層である必然性というのはほとんどない。むしろ、いざというときに一番回収が可能な形で管理をしていく。それは、ある意味で言うと、後の世代に負担をまさに押しつけざるを得ないわけですけれども、押しつけないよというふうに言って地下に埋めておいて、実は後になってとんでもない負担がかかるよりも、きちんとした形で負担をしてもらう、引き受けてもらう。もし引き受けてもらうんだとすれば、そのときにどういう形で管理をしていくのが一番いいのかというのは、私たちの世代の責任としてきちんとした管理の方法を研究開発する。それから、おっしゃられたように、後に残す放射性廃棄物の量を少しでも少なくする。さらに、これは福島さんが言われたことに関係して、後の世代にどうしても放射性廃棄物を残さなくちゃいけないんだとしたら、少なくとも後の世代が原子力に頼るとか、あるいは化石燃料に頼らなくてもきちんとやっていけるようなものを我々の世代が今から準備していく、そういったことを含めてお願いをするしかほかないだろうと思います。

【河合弘之】

石橋さん、とにかくどう言おうと、高レベル放射性廃棄物や使用済み燃料がたまってきているわけですね。じゃ、これをどうすればいいんだと。深地層処分が非常に危険だとか、いろんなことを言われているとすれば、どうすればいいんだという素朴な質問が寄せられているんですけれども、それについては石橋さん、今の西尾さんと同じ質問になるんですが、どう思われますか。

【石橋忠雄】

素朴でありますけれども、一番重要なテーマだと思います。私は、ここにこういう表題が掲げてありますけれども、安全に地層処分できるかという、こういうテーマそのものについても疑問を持っております。
 その前に、今西尾さんの方から、後世代というようなご指摘もありましたけれども、我々ができ得る範囲のものを何かしなくちゃならないと思います。しかし、後世代の人たちのいろんな利益というものも、これは考えておかなければいけないと思います。そういう意味では、この法律にあるように、今ここで地層処分をしなければいけない、こういう考え方とか、あるいは地層処分が現時点で安全かどうかというような、こういう議論というのは、余り重要でないと思います。問題は、そのために何をなし得るかというようなことだと思います。 ということで、幾つかの現時点で考えられる選択肢というのをここで我々が検討する。その一つが地下研究施設だと思います。しかし、この地下研究施設の最大の問題点、つまり言葉をかえて言うと、地層処分の最大の問題というのは、地下研究施設に入ることができるかどうかという問題であると思うんです。地下研究施設の問題というのは、やはりそれが最終処分場になるんではないか、こういう不安とか懸念だと思います。先ほどカンプスさんが言われたように、この問題というのは、科学技術の問題もありますけれども、もっと現実に出てきている問題は、やはり政治的な問題、社会的な問題、そういうものが大きな障害になっているわけです。したがって、その社会的な障害というものを除去するためにはどういう手だてがあるのかということだと思います。私が具体的に言いますと、地下研究施設というのも必要だと思います。しかし、そのためにはやはり、最終処分場との分離を制度的に保障する、こういう今質問も出てきておりますけれども、その問題にもなります。そういうことが必要だと思います。これは現実には、フランスの法律がそういう幾つかの困難を乗り越えて、そういう法律をつくってきているわけです。
 最終的に、国民の代表の国会が、どういう処分方法、あるいは管理方法をするのかということを決定するということになっているわけでありますけれども、その一つが、そういう地下研究施設の完全な独立分離ということを制度的に保障するということ、それからさらに、先ほども言いましたように、現時点で考えられている地上管理のあり方、あるいは消滅とか分離の方法というものを科学的にさらに進めていって、次世代にその結果を残していく、こういうことも必要になってくると思っております。

【河合弘之】

ありがとうございます。
 西尾さんの見解と石橋さんの見解、微妙に違うことはおわかりだと思います。西尾さんからさらにもう1回コメントをお願いいたします。

【西尾 漠】

後で時間切れになってしまうといけないので、一つ手前の話から、反論というか、違うところを言っておきます。
 一つは、国が最終的な責任を持つべきだと石橋さん言われたわけですけれども、私はやはり、本来は発生者が責任を持つべきであって、その安全の規制をきちんと国が責任を持つ。その意味では、最終的に放射能の災害を起こさないという意味で、それが最終責任ということであれば、確かに国かもしれないけれども、そういう言い方をすることによって、むしろ発生者責任がぼやかされてしまっては困るというのが言いたいことです。特にこれは、電力会社自身が、これは東京電力の前の社長の荒木さんが、「国の政策で原子力をやっているんだから、廃棄物は国が面倒を見てほしい」ということを平気で言っているわけですね。そういう考え方がある以上、「最終責任は国だ」と言ったときに、そういうふうに電力会社の責任がどこかへ行ってしまうようなことにイコールになってしまっては困るという気がしますので、あくまで国の最終責任というのは安全規制の責任だといいたいということが一つです。
 それから、安全基準について、確かに現実にさまざまな知見がつけ加わっていく中で基準が変わっていくということはあり得ると思います。だけども、だから最初の段階では何にもなくていいという話はやっぱりおかしいだろう。少なくとも、どういう形で安全を確保するのかという基本的な考え方はあらかじめあって、処分の候補地を選ぶんだったら、まさに候補地になり得るところを選ばなくちゃいけないわけですから、だとすれば、どういう要件が必要なのかということは、やはりそれは後でいいという話にはならないだろうと思います。 それから最後に、地下の研究施設の話なんですけれども、地下研究施設の問題というのは、確かにそれが最終処分場につながるかもしれないというおそれがあるという問題はあって、それについてどういうふうに歯どめをかけるかということを今石橋さんは話されたんですけれども、もっと、もともと基本的な考え方からすれば、その研究というのをだれが何のためにやるのがということを抜きにしては、処分場になるかならないかだけを言うのはおかしいと思います。まさに今現在やろうとしているのは、核燃料サイクル開発機構という放射性廃棄物の発生者自身である。そこが安全規制も含めた研究開発をやろうとしていること自体が全くおかしいわけで、「だれが」というときに、核燃料サイクル開発機構がそういう研究開発をする、しかもそれを国民の税金を使ってやるのは全くおかしい。
 じゃ、研究の中身としてはどうなのか、そこが一番はっきりしなくてはいけないにもかかわらず、今まさに瑞浪の深地層の研究所にしても、どういうことを実際にやるのか、何のためにやるのかということを、むしろほとんど隠すような形でしか進んできていない。むしろ、どういう研究が本当に必要なのかということをはっきりさせるところからスタートするべきだと思います。私自身は、これは石橋さんが最後に言われたように、必ずしも地層処分だけじゃなくて、ほかのことも含めてきちんとした、どういう形で後の世代に廃棄物を管理してもらうのか、そのためにどういうことが必要なのかというところから出発をするべきだと思います。その場合には、地下研究施設というふうに、いきなり地下というふうにいくのはどうかなと思います。

【河合弘之】

この議論は、これをやっていると、これだけで尽きませんので、今度はいきなり具体的な、東濃の問題に入ります。皆さんから、整理に困るぐらいの質問が来ています。それをできるだけ多く取り上げたいと思います。
 名前を読み上げると、後で弾圧されたりするといけないので、名前は言いません。こういう質問があります。「瑞浪市は、6月15日広報で「この法律の成立により、瑞浪市が最終処分場にならないことが明確になりました」と報じ、全戸配布しました」。これです。これ、瑞浪市の方は皆さん受け取っていますね。「法律家の立場でこのようなことをどう思われますか」ということで、これは石橋さんにご回答をお願いしたいと思いますが、どう思われますか。

【石橋忠雄】

このご質問というのは、地下研究施設をつくることを前提としたご質問というふうに理解していいんですか。

【河合弘之】

これだと、「研究所と最終処分場とは明確に区別されました。この法律の成立により、瑞浪市が最終処分場とならないことが明確になりました」と太文字で書いてあるんですが、このようなことが言えるでしょうかということです。

【石橋忠雄】

いや、それはわかりますけれども、瑞浪市で出したこのペーパーというものが、東濃の地下研究施設の建設を前提としたペーパーであると理解していいですかということです。

【河合弘之】

そうでしょうね。

【石橋忠雄】

これについては、私はそういうようにはならないと思います。先ほどカンプスさんが挙げておられたアメリカの核廃棄物政策法、82年の法律と、それからそれを修正した87年の法律がありますけれども、その法律がある程度答えていると思います。これは、アメリカでは、処分場と、それからMRS−監視つきの中間貯蔵所と訳すんでしょうか、そういう制度があったわけです。テネシー州にこのMRSを建設していたわけですけれども、結局まだ最終処分場がどこにいつできるのかというのがわからないままに、そういう中間貯蔵施設というものをつくるということについては、最終処分場への大きな不安、懸念というものがあったわけです。州知事挙げて反対運動を起こしておったわけです。したがいまして、それらをなくすために87年法がつくられ、その眼目の一つがこれだった。もう一つの眼目というのは、さっきカンプスさんが言われたことであります。その中で、最終処分場の建設許可がおりるまでは、中間貯蔵施設というものをつくってはならないと。もし最終処分場の許可が取り消された場合には、中間貯蔵施設というものも取り消されるということがありました。 それから、フランスの制度では、やはり地下研究施設というものには放射性廃棄物を搬入しないとか、あるいは中間貯蔵施設に長期の貯蔵というものをしないということが明記されているわけです。
 日本においても、経験的に言うと、先ほど言ったように、私のところの原子力船「むつ」が放射線漏れ事故を起こして、長崎で修理をして戻ったわけですけれども、地元の反対というのは非常に強くて、そして国の総理大臣の特使までも来たような状況です。その中で政府は、早期に母港を撤去する、こういう確約をしたわけですけれども、その後もずっと長い間その約束というのは守られなかったわけであります。
 そういうことで、やはりこれは、そういう内外の状況から見て、地下研究施設が最終処分場に直結するということにならないという何らかの法的な担保というものが必要だと思います。そういうものが現在はまだ保障されていないわけですので……。

【河合弘之】

先生、諸外国の例では、そういうことを研究所は絶対処分場にはしないとか、そういう明確な法律を定めているところもあるんですか。

【石橋忠雄】

絶対ということではないんですけれども、地下研究施設に限って−アメリカと日本では制度もちょっと違うので、あれなんですが、フランスはよく似ておりますので、フランスは最終的には2006年にさまざまな要素を検討して、どういう処分方法をするかを国会が決定するということになっています。

【河合弘之】

それでは、栗山先生、こういう質問が来ているんです。協定書についてなんだけれども、先ほど基調報告で報告されましたね。「協定書、回答書は、法律的にどのような拘束力がありますか。交わした協定書や科技庁からの回答書に違反があった場合、裁判などに訴えることは可能ですか」、こういう質問が来ているんですが、どうお答えになりますか。

【栗山 知】

先ほど示しました回答書というのは、私が述べたのは、何も違反がなしに、回答書そのとおりに見ても、将来処分場となる可能性は残されているものだと、そういうふうに思いますというか、字を読めば、そのとおりですので、何らこれに違反することなしに、将来の処分場にするという道は残されているというふうに考えます。だから、これが確実に守られたからといって、岐阜県がその処分地にならない、そういうことにはならないと思います。

【河合弘之】

それでは、ケビン・カンプスさんに質問、いいですか。「最終処分場の選定は、法改正などをやったり、さまざまな困難にぶつかっているようだが、米国では具体的に原発を廃止していこうという政策についてどうなっているか。ヨーロッパではかなり、ドイツ、スウェーデンなど具体的になっているので」、こういう質問があるんです。それで、先ほどケビン・カンプスさんの講演を聞いていてわかったのは、要するにあるところにねらいをつけると、それに合うように基準をどんどん動かしていく。不都合なAという障害要素ができてきたら、Aという障害要素は問題にならないよという規則をつくっていく。ウナギが逃げようとしても、先回り先回りして、網をかけてウナギをすくい取ろうとするような、そんな感じのいわばバトルが行われている。ゲームの最中にルールを変えるのはひきょうじゃないか。寄り切りで勝ったと思ったら、もう一つ先に土俵が移動しちゃった、そういうしょうもない闘いを私たちは続けているんだ、でも、頑張ろうという、そういう話だったと思うんですね。
 私なんか、今回の法律を見て、今回の法律はもっとひどい。というのは、土俵を一たん設定しておいて動かすんじゃなくて、おおよそ土俵だか何だかわからないような、「著しい変動の記録がないこと」とか、「おそれが少ないと見込まれること」とか、非常にあいまいな言葉で土俵をつくっていくから、どんなこっちが不都合な事由を見つけても、いわば非常に価値判断的な要素で、あいまいな表現でくくろうとしているから、もともと土俵を割らないようになっている。土俵をはっきりしておけば、土俵を押し切ることができますけれども、土俵があいまいだと、いつまでも、僕たちが勝ったといっても、いやいやまだまだと、こういうことになるんじゃないかなという、カンプスさんの話を聞いて、そういう感じがしました。
 それで、カンプスさん、この今の質問について、これは大変ご苦労しているようだけれども、「そもそも原発廃止というのは、アメリカではどうなっているんですか」という、極めて素朴なご質問だと思うんですが、お答え願いたいんです。よろしくお願いします。

【ケビン・カンプス】

アメリカでも、原子力をなくそうというキャンペーンがあります。私の属しているNIRSという団体は、そういったキャンペーンの中で主導的な役割を果たしているグループの一つであります。私たちのグループはこの夏に大きなキャンペーンを計画しております。これは、ニューイングランド、それから五大湖のある中西部の地域で原子力発電をやめさせてしまうためのキャンペーンであります。 その第1段階として考えているのは、特に大きな危険性を抱えている原子炉にねらいを定めて、これらの原子炉をとにかく閉鎖してしまおうというものです。先ほどドイツの例が出ましたので、ちょっとお話をしたいことがあるんですけれども、それは、アメリカの中で第3の政党−民主党、共和党のほかにもう一つの政党をつくって、そこで大統領を出していこうというこのキャンペーンが久しぶりに大きな力を持ってきております。今回の選挙の中で、グリーンパーティーという第3の政党が相当票を集めるんじゃないかという期待が今高まっております。このグリーンパーティーの代表として大統領選挙に打って出るのがラルフ・ネーダーという人物であります。このラルフ・ネーダーというのは、原子力発電に反対をするさまざまなNGOを始めた人であります。例えば、パブリックシチズン(公的市民)というグループがあります。それから、PIRG、公益を推進するためのグループ、こういったグループをラルフ・ネーダーは過去に始めた実績を持っております。ラルフ・ネーダーが大統領になるためにということで立候補するわけですけれども、その副大統領候補として挙げられているのが、先住民の女性の人で、ミルノ・ラルークという人です。この女性は、何年もの間にわたって、先住民の居留区が廃棄物の処分地にされてしまうのを防ぐための活動をしてきた人です。ヤッカマウンテンというのは、ウェスタンショショリという先住民の部族に属している土地であります。それから、ユタ州に中間貯蔵所をつくるという計画が持ち上がっておりますけれども、この土地は、ユタの別の先住民の部族に所属している土地であります。
 ですから、この原子力の問題というのは、グリーンパーティーにとっては非常に重要な問題の一つになっております。そして、原子力を今とめることができたら、問題の半分は片づいてしまうということがあります。つまり、もし今原発をとめてしまえば、将来つくられるはずの5万トン近くの使用済み燃料が出てこないで済むわけですから、廃棄物がつくり出される前にとめてしまう、この予防措置というのが非常に重要なものなんです。

【河合弘之】

次に、石橋さんに質問ということで、「特定放射性廃棄物処分法の中の保護区域の規定は、憲法の財産権の侵害ではないか。また、反対運動を抑圧する手段として使うのではないか」という質問なんですが、どうでしょうか。

【石橋忠雄】

まだその点については、私は検討したことがありません。申しわけございません。

【河合弘之】

大変難しいですか。わかりました。
 じゃ、栗山先生、どうですか、その点については。今この場で考えて。

【栗山 知】

私は余り考えてないんですが、憲法に規定されている人権も、絶対的なものではなしに、バランスによって制限といいますか、いろいろ加えられることもあるわけですけれども、どうでしょうか。それがどの程度の、もし本当にそこに処分場をつくるとすれば、そこを掘り返すということは、人体、生命に関する物すごい危険ですので、それは何らかの規制をしていかなきゃいけない。もししなければ、危険だろうと思います。ちょっとその辺まだ、私も十分考えておりませんので、何ともご回答はできませんが……。もし処分場をつくるとしたら、何らかのそういう規制がかかってくる。こなければ、むしろ危険だというようにも思います。

【河合弘之】

今の保護区域の問題というのは、ここが処分場だとしますと、この周り全体に保護区域ということで指定してしまって、そこでは、例えば深い井戸なんか掘っちゃいけないよと、こういう規定なんですね。これは、普通所有者は、自分の土地に何を掘ろうと自由ですから、それは私的財産権の侵害ではあるわけです。じゃ、そんなのは憲法違反じゃないかというのがこのご質問の趣旨で、法律家は慎重ですから、特に石橋先生は慎重ですから、その場で即答できるような質問ではないというのはよくわかります。
 結局、今栗山さんの言ったように、じゃ、私権の制限−井戸を掘っちゃいけないという私権の制限と、それから私権を制限することによって守られる利益−要するに放射能が外に漏れ出さない、そういう保護区域で穴を掘ることによって漏れ出すことを防ぐ利益とどっちが大事かということで、そうなると、非常に難しい法律論争になっていくことは理解できると思います。

【石橋忠雄】

私今回答しましたのは、法的に検討したというわけじゃないんですけれども、法的には一般論では、弁護士がたくさん来ておりますけれども、適正な補償のもとに、そういう公益を図るために、何らかの個人的な財産を収用するとかということは、一応適法だということにはされておるわけです。
 しかし、私が言いたいのは、この処分懇談会の中で成田空港の問題を取り上げて、そこでその団長の方を呼んでお話を聞いたことがあります。そういう法的に適法かどうかということで、個人の財産を国家の利益という名目のもとに取り上げていいのかという大きいテーマがあります。それはもう10年も20年も30年も大変な闘いというのが続くわけで、何の利益というものも結果的にはもたらさないわけです。そういうような問題も乗り越えて、そして新しい解決というものを生み出すには、どういう手当てが必要なのかというのが、この高レベル廃棄物の問題では出てくると思っているわけです。

【河合弘之】

はい、わかりました。
 西尾さん、どうぞ。

【西尾 漠】

ちょっとだけ。要するに、そういう保護区域が必要になってくるというのは、まさに地下に有望な資源があっても、なおかつそういうところを処分場に選ばなくちゃいけないようなことがある、例えば東濃地域については、そういう地下資源があるから、ここは選ばないんだというふうに言ってきたけれども、でも、それでも選ばなくちゃいけないとしたら、そういう措置はしなくちゃいけない。逆に言うと、そういう措置をするということを法律で決めることによって、いわばどこにでも処分地をつくれるようにしていくというのがこの法律の問題かなというふうに思うのが一つ。
 その上で、結局そういうふうに保護区域をつくっていくということは、まさにそれをずっと後の世代まで引き継いでいかなくちゃいけないということになるわけですから、地下に処分すれば、後の世代は何もしなくていいという、まさに地層処分の考え方というのは、ここの一つを見てもやっぱり成り立たないと思います。

【河合弘之】

次に、愛知大学の学生さんから意見と質問があります。「愛知大学の学生自治会の学生大会(夜間、短大生を含めて約1000人)において、東濃への高レベル放射性廃棄物処分場建設に反対する決議が上がりました。私たちにとっても無関係な問題ではありません。多くの反対しておられる方々とともに頑張っていきたいと思います」という意見があります。そして、「友達と話をしていて、この問題で疑問に思ったことがあります。1、政府は、約30年前に原発を進めると決定したときに、核のごみが問題になるということは考えなかったのでしょうか。安全な処分方法が決定するまでは原発をストップさせた方がいいのではないでしょうか。この疑問に、西尾さんに答えていただけたらと思います」。どうですか。原発を始めるぞというときに、核のごみの問題を政府や電力会社は考えなかったんだろうかということですが、どうでしょう。

【西尾 漠】

考えになかったかどうかというふうに言われると、わからないんですけれども、しかしきちんと考えてこなかったということは間違いないことだと思うんです。本来ならば、いや、やっているうちに、何とかうまい処分方法が見つかるだろうというので、見切り発車したというのが現実じゃないかな。結局、全部そういう意味でいうと、原子力に関しては見切り発車であり、その場しのぎであり、泥縄でやってきているんですね。今回の法律そのものも、実際この法律を一生懸命慌ててつくったというのは、すぐ目先に、たまってしまっている使用済み燃料を六ケ所の再処理工場の附属のプールに入れないと、アメリカと同じで、使用済み燃料が満杯になっている。そのために、安全協定を結ぶいわば前提になっているので、何とか急いでこの法律を通すみたいなところから始まっています。
 そういう意味で、いまだにその場しのぎ、泥縄というのは全く変わっていないということが一つ言えると思います。

【河合弘之】

「安全な処分方法が決定するまで原発をストップさせた方がいいのではないでしょうか」というのは、どう思いますか。

【西尾 漠】

私ももちろん、ストップした方がいいと思いますけれども、そもそもそういうことをちゃんと考えないで原子力をやっている。さっき、電力会社の荒木さんの発言を伝えましたけれども、まさに国が「やれ」と言うから原子力はやっているんで、あとは国が面倒を見てほしいという、そういう考え方があるから、まさに放射性廃棄物を出しながら原子力発電ができてしまうということだと思います。

【河合弘之】

もう一つご意見があります。「岐阜弁護士連合会の栗山氏が述べたように、当地区の処分場決定には、状況証拠がそろい過ぎている。今日までの地区反対運動も、隔靴掻痒の感を脱し切れず、行政サイドは粛々と調査、港湾整備などを整えてきた。今、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律の成立で、いよいよ秒読みの段階に入ったと認識すべきである。よって、1、早期にリーガルディフェンス(法的防衛)を強く望む。日弁連の提言も、力強いバックボーンであるが、岐阜県弁護士会の具体的なリーガルディフェンスを望む。現地は岐阜県であるが、現地から等距離にある名古屋圏が存在し、予想される被害のおそれは同じはずである。中部の名古屋の弁護士会の回答を望む。地域エゴのそしりを免れぬが、あえて、最も危険な当地区の積極的介入を求める」、こういうご意見がございます。
 それから、「高レベル放射性廃棄物処分法がいかに危険なものであるかわかりました。それにしても、なぜこのような法案がマスコミにも取り上げられず、国民に知らされないまま通ってしまうのか、先生方にお伺いしたい。プルトニウム政策と一体のものだと言われたことについて、もう少し詳しく教えてください」、これは西尾さんがいいと思います。どうですか。

【西尾 漠】

なぜマスコミがちゃんと取り上げてくれないのかというようなことについて言うと、正直言ってよくわかりません。確かにマスコミの方は、取材には随分来ていたはずですけれども、残念ながら、少なくとも法律が通るまでの間、ちゃんとした記事にほとんど、その問題点をきちんと書くような記事にはならなかった。通った後になって、幾つかのマスコミがちょっと問題点を書いてくれていますけれども、もう少し早く何とかならなかったのかなという気はします。
 それはおいておいて、要するにこの法律、まさに再処理ということが前提になっているという話が、これは最初の基調報告にもありました。この法律でいうところの特定放射性廃棄物というのは、再処理をした後に出てくる廃液をガラス固化して−ガラス固化というのは法律の文章にはないですけれども、国会の議論によると、ガラス固化というふうに言っています−ガラス固化したものをと言うんですけれども……。そこにちょっと書いたんですけれども、そう言いながら、じゃ、それだけの再処理をして、ガラス固化体ができる。一方ではプルトニウムもできるわけです。「どれだけのプルトニウムができるんですか」と国会で質問されたときに、通産省も科学技術庁も全く答えられませんでした。実は、100億トンオーダーという言い間違いもありましたけれども、それは言い間違えとしても、いずれにしても、わからない。まさに数百トンものプルトニウムが出てくる。今現在でもプルトニウムが余ってしまって、どうしようかということを言っているときに、数百トンのプルトニウムが出てくることを前提とした法案を通しながら、そのことを全くまじめに考えていないというのが実情だと思います。
 まさにそういう建前、前提。とにかく六ケ所村に運び込めればいい、あるいは中間貯蔵施設というものを今つくろうとしているわけですけれども、その使用済み燃料の中間貯蔵施設をつくろうとしているところにも、やはりそこがあくまでも中間貯蔵であるからには、使用済み燃料はやがて出ていって、いつか再処理をされてということでないと、出ていかないわけですから、そのために再処理が前提になっている。そういう非常に泥縄的なやり方の、まさに象徴的な法律というふうに感じます。
 ちょっと質問からずれてしまいましたが……。

【河合弘之】

次に、ちょっと技術的な質問なんですが、通産省令、安全基準なんかで決まるようですが、これを「安全基準とか、その他の多くのことが通産省令に委任されているわけですけれども、これを国会などで縛りをかけられるか」ということですが、それは栗山さん、どうでしょうか。

【栗山 知】

それは、今後もし法律をつくれば、法律をつくって、それでまた法律で決めるんだということにやっていけば、できると思いますが、その今できた法律によれば、通産省令でできますので、そのまま通産省で決めてやっていくといって、何の問題も起こらない、そういうことだと思います。

【河合弘之】

この法律の一つの問題は、国会の関与が全くないということですね。今のご質問と関連するわけですけれども、いろんな重要な決定というものを政策官庁の方にゆだねてしまっている。先ほど白紙委任ということがありましたけれども、国会が関係したのは、わずか何日間この法律を審議しただけであって、この高レベル放射性廃棄物の基本計画なり基本方針というものについて国会が全く関与していない、関与する内容となっていないというのは、これは、これだけの世界的な重要案件であるにもかかわらず、国民の代表がこれに関与しないというのは、非常に大きい問題だろうと思っております。

【河合弘之】

ありがとうございます。
 ひとつ切実な意見というのが来ています。「旧動燃(核燃サイクル機構)の事務所のある泉町何とか寺の在住者です。4キロ平方の深地層の処分予定地と言われているところに該当する地域に住んでおります。1600年代の終わりから先祖が現在までここに住んでおりました。自分の住んでいる地下に核廃棄物の貯蔵施設ができる、そう考えるのは、日常に生活感情のはるか圏外に出てしまうような思いです。みずからは小さくささやかな家庭と生業を営んでみながら、降ってわいた深地層処分地としての有力地と言われると、問題は余りに大きく、漠として、しかし決して無関心ではいられないこのもどかしさを理解してください。まとまりませんが、気持ちを書きました」、こういう思いでいらっしゃる方もこの現地にはいるということでございます。
 大分時間が迫ってきましたので、これからは最後、そろそろ詰めにいきたいと思います。これからケビンさんに、今日の討論を聞いてもらった感想なりまとめの意見を言ってもらいたいと思います。その後、パネラーに各自最後のまとめの言い残したこと、それからこれだけはぜひ言っておきたいことという最後のコメントの機会を差し上げますので、今から考えをまとめておいてください。
 では、ケビンさん、きょうの討論とか全体のやりとりを見て、考えていること、また皆さんに送りたいメッセージがあれば、お願いします。

【ケビン・カンプス】

パネルの皆さん方のお話、質疑応答などを聞いておりまして、幾つか考えたことがあります。
 先ほど、国会の会期の最後にこの法案が通されたということを議員の方がお話しなさいましたけれども、これは非常に興味深いことでありました。ほかの方々からも、この法案が急に出されて、余り討議もしないまま通ってしまったということを聞いております。
 先ほど、1987年にネバダをサイトとして決めてしまうという法律が通過したという話をしましたけれども、この法律も実は、最後ぎりぎりの段階になって、真夜中近くの段階で、まともな議論もせずに通過したものであります。これがどういう形でなされたかといいますと、全く関係のない法律の修正案のような形で、最後にちょこっとつけ加えられたというものであります。ですから、そもそもこの条項が入っているということを全く知らない議員も多くおりました。ですから、いろいろ問題がある上に、さらに非常にこそくな手段でだますという形でこの法案が押し通されたということが起きたわけです。
 もう一つ気がついたのは、回収についてのお話があったということです。つまり、地下に1回埋めた後、これを回収することが可能かどうかという問題です。実は、アメリカのエネルギー省と原子力規制委員会も同じように、回収の可能性というのを言っております。つまり、ヤッカマウンテンに埋めて、何か問題が起きたら、これは取り出すんだと。だから、ヤッカマウンテンの計画を中止する必要はないというふうなことを言っております。しかし、これを真に受けることはできません。といいますのは、さっきお話をしましたけれども、アメリカで既に乾式貯蔵という方式がとられておりまして、このドライキャスクというものの中に燃料を入れているんですけれども、1回このキャスクにおさめられた後取り出された例というのは全くありません。つまり、このドライキャスクに1回使用済み燃料を入れた後、それを安全に取り出す方法というのは、今のところ全くないわけです。ですから、地層処分をした後、そこから簡単に廃棄物を取り出せるなんていうのは、信じられません。
 きょうのこれまでのお話でわかってきたことがあるんですけれども、それは、日本の場合には、廃棄物の最終責任者がだれかということが余りはっきりしていないということです。アメリカの場合にはそもそも、この原発を推進してきたのは、核兵器の製造に使われている原子力技術の悪い側面を隠すために、平和のための原子(Atoms of Peace)というプログラムを政府が打ち出してきたということが読んでとれると思います。
 ヤッカマウンテンについてこれまでいろいろ法律が変えられてきたわけですから、そのことを考えれば、アメリカの場合に、政府が廃棄物の責任をとるということを電力会社に対して約束をしているわけですけれども、これを破らないという保障は全くありません。
 どうもありがとうございました。

【河合弘之】

それで、今日質問を寄せられて、お読みできない質問や意見がいっぱいあって、大変恐縮ですが、一つどうしても読まないといけないのがあります。「青森県・北海道・岐阜県知事にとっては、処分場にならない担保としての法律であるということを言っている人がいます。また、瑞浪市長は、この法律により、当地は処分場にならないと広報で述べています」。先ほど石橋さんも言ったように、何でそういうことになるのか、あの法律をどこを読んでも、そういう結論にはならないので、研究所は核燃サイクルがやるかもしれませんが、それの隣もしくは近くに最終処分場ができないなんてどこにも読めないわけですよね。だから、何であの法律を読んで、ああ、これで安心だと言えるのか、私は法律家のセンスからいうと、およそ信じがたいというふうに思います。
 それで、その後、「処分地の選定の基準の決められるタイミング、再処理施設の運用開始のタイミング等、核燃料サイクル全体のタイミングについて説明願います」、これは西尾さんの担当だろうと思いますが、ごく簡単にご説明願えますか。

【西尾 漠】

お手元にあるスケジュールというのは、進めようとしている人たちの考え方で、それに従ってつくられようとしているんだと思うんです。そうすると、当然ながら、地区を選定する前に地区の選定基準というのはつくらなくちゃいけないということは言えるんじゃないかと思いますけれども、それがどこでどういうふうに入ってくるのか。これは実は、原子力安全委員会の方なので、安全審査のことしか書いてない。通産省の方は、別に通産省任せということに多分なっていると思います。それは全く、ある日突然通産省が「通産省令です」と出せば、それまでということになりますけれども、恐らく少しは、総合エネルギー調査会原子力部会等で議論もあるとは思いますけれども、その辺の具体的なことについてはちょっと、正直言ってわかりません。

【河合弘之】

そういうタイミングについては、まだ皆目見当がつかないと。

【西尾 漠】

ちょっとわかりませんけれども、いずれにしても、通産省令は早くつくらざるを得ない。それがどれだけの中身を持ったものになるかについても、わかりません。

【河合弘之】

じゃ、極めて例外ですが、1分か2分で質問をお願いします。

【質問者藤村】

貴重な時間、申しわけありません。京都から来た藤村と申します。
 お手元にある地層処分の技術的信頼性は確立していないと、7月20日に高木学校、原子力資料情報室で核燃サイクル機構の出した技術報告書を批判的に検討した報告会をします。で、そのグループを担当している者なのですが、今タイムスケジュールの話があって、石橋さんや西尾さんも来ているので、その検討の中で一つわかったことがあります。それは、BNFLやホジェマ(?)から返還されてきているガラス固化体というのが、この報告書で検討している日本原燃のスペックのガラス固化体よりずっと放射能が高いので、この地層処分の技術報告書にあるような条件では発熱量が非常に大きくて、人工バリアの機能を果たす条件ではとてもできないということが明らかになりました。そのことは、この20日の日に、これは東京ですけれども、そういう意味では、青森で、今度の法案が通ったから、どんどんガラス固化体をまた190本運ぶというようなことを聞いていますけれども、海外から持ってきた分の発熱量では、今核燃機構が出している報告書の基準ではできない、そういう計算になるということが最近わかりました。一言だけです。

【河合弘之】

ありがとうございました。
 ということになると、ますますスケジュールなりそのタイミングというのはやみの中というか、五里霧中ということになるということがわかったと思います。
 では、大変長時間になってきましたので、そろそろこの辺で終わりにいたします。
 最後に、パネリストの方々からまとめのコメントをお願いしたいと思います。
 まず、西尾さん、お願いします。

【西尾 漠】

私の紙にも書いたことを含めて言うと、この東濃地区が処分地にはならないというふうにはとても言えない。むしろこの法案そのもの、あるいは法案審議の中で、そういう可能性というのはむしろ十分過ぎるほどあるということがわかったということ。
 それから、さらに言えば、この超深地層研究所というものが仮につくられて、このまま進んでいけば、ますます処分地になる危険性というのは大きくなるということ、そのことだけとりあえず最後の一言とします。

【河合弘之】

では、石橋さん、お願いします。

【石橋忠雄】

私は、この問題というのは、地域の感情的な対立の中で進められてはならないと思っております。そのためには、対話と相互理解、これを基礎とした制度をつくることが必要だと思っております。そういう視点から今の法律を見ますと、大きな問題点が欠落しているわけでありまして、またしばらくしたら、この法律というのは改正されるなり、あるいは新しい制度というものができるんじゃないかというふうに思っております。

【河合弘之】

じゃ、栗山さん、お願いします。

【栗山 知】

この高レベル放射性廃棄物の問題は、もう数万年から10万年先を見通した、そういった問題でありますので、すごく想像力が要る問題になるだろうと思います。要するに、プレートテクトニクスとか言われていますけれども、変動する地球、安定しているんではないんだと、長い年月の間に変動していくんだと、そういった想像力が必要だということと、もう一つ、研究だけなら受け入れてもいいんじゃないか、ここでやられるのは研究だけだと、そういった議論もあるかと思うんですが、私たちも聞きに行ったときに、ここでやっているのは地層処分の基盤的研究だと、そういう言い方をされました。いわゆる普遍的な研究をしているような言い方をしているんですが、この地層処分に関しては、普遍的な研究というのはあり得ないと思います。岩盤というのは個々別々、全然違いますので、東濃でやったのは東濃の岩盤、地下水、そういう研究をしているんだと、地層処分をするという前提の上でその研究を受け入れるということは、かなり危険であると私は思います。

【河合弘之】

それで、大変申しわけない。一つ重要な質問に対する答えを忘れておりました。「超猛毒の放射能で、危険であることはわかりましたが、実際にどの程度でしょうか。事故が起きた場合、想定される被害について教えてください」。どうですか、西尾さん、この辺、コメントを簡単に。

【西尾 漠】

ですから、事故というのも、先ほど言ったように、地下水の汚染を通じて広がっていくような事故もあるし、埋めたものが何らかの自然現象で、いきなり人間環境に来てしまう、あるいは人間の方からそっちに掘り進んでいってしまう、さまざまな形のものがあり得るわけです。そのときに、あるいはそういうことが起こるかもしれないから、回収をする。その回収をすることによって、さまざまな形で被曝、汚染もあるかもしれない。そういうことも含めていうと、いろんなことがあり得る。
 それから、処分場が仮につくられれば、そこにどんどん廃棄物が運ばれてくるわけです。輸送中の事故、これはむしろ十分に、一番起こりやすいかもしれない。まさに30年、50年貯蔵して、そのキャニスター自体がかなりぼろぼろになったようなものを運んでくるわけですから、運び出すところ、運び込まれるところ、途中、さまざまな形の事故が考えられれるというふうにしかとりあえず言えないわけです。

【河合弘之】

今のお答えを最後の締めにいたしまして、きょうのパネルディスカッションを終わりたいと思います。
 そして最後に、海渡さんの方から総括をお願いしたいと思います。

【司  会】

それではここで、日本弁護士連合会の実行委員で、長年原子力エネルギー問題の委員、部会の副会長をしております海渡雄一がまとめをしたいと思います。

【海渡雄一】

長いシンポジウムを最後まで聞いていただきまして、本当にありがとうございました。
 まとめというほどのことはないんですが、今日聞いていて、皆さんが感じられたことと重なるかもしれませんけれども、幾つかの点を確認したいと思います。
 まず、高レベル放射性廃棄物の処分場の決定というのは、ネバダの例を見てもわかるんですが、決して科学的には決定されないで、政治的に決定されるであろうということが1点目の確認です。
 2点目は、このことと関連しますけれども、科学的な基準というものが設定されても、それは途中で変えられてしまうんだということです。そのことを学んだせいかどうかわかりませんが、日本では、処分予定地が選定された後に基準を決めるという、大変賢いやり方がとられることに決まった法律ができました。調査結果に基づいてから基準を決めるわけですから、調査結果に合うような基準になるだろうということが予測されます。これが2点目です。
 3点目、これは先ほど来の日弁連の基調報告でも述べましたが、この東濃地域というのは、断層の問題、巨大な地震が起こっているという点、地下水が非常に豊富であることといった、あらゆる点から見ても、アメリカのヤッカマウンテンと比較しても比較にならないぐらい条件が悪い。明らかに処分地としては不適地だというふうに考えています。これが日弁連の結論です。
 しかし、にもかかわらず、この地が処分地に選ばれる可能性はあるというふうに我々は考えています。
 今日のいろんな議論が出てきましたけれども、4平方キロの問題点、日本国内にはほとんど、未固結岩というところを除けば、どこでも処分は可能なのだという政策が現に維持されていると。協定書は結ばれていますけれども、地元の意思が変われば、可能であるという抜け道が残されています。そして、地元の同意というのは、決して住民の同意ではなくて、首長の同意で足りるということも、国会の審議等の中ではっきりしてきました。
 処分地と研究地は分けるということが法律上はっきりしたとされていますけれども、石橋先生から非常に貴重な指摘がありましたけれども、その点を制度的に保障する、研究地になったところは必ず処分地から外すんだということは、法律の中では明記されませんでした。その点を国会答弁の中でもはっきりさせようとしましたけれども、その点もはっきりならなかったということが先ほど福島議員の方から説明されました。
 これらの状況を総合すれば、この東濃地域が処分地になる可能性というのは否定されていないというのが日弁連の結論です。
 そして、一つ非常に重要な指摘がありました。石橋先生の方から、そうはいっても、研究は続けていかなければならないはずだという非常に貴重なご指摘がありました。もちろん、日弁連もそう考えています。しかし、深地層処分をするという政策をまず決めて、その前提ありきで研究開発をしていくということでは、受け入れられないというのが我々の考え方です。研究地が処分地になるという法律的な可能性が否定されていないこと、そのような状況のもとで深地層研究を行えば、そこが処分地になってしまう危険性があるわけですね。そのような前提での深地層の研究自体にも反対せざるを得ないというのが我々の見解です。
 最後になりますけれども、将来の世代に負担をかけてはならないという意味では、地層処分を推進する側も反対する側も、同じことを言っています。同じことを言っているように見えます。しかし、私どもはこう考えているわけです。今の時点で高レベル放射性廃棄物を埋め捨てにしてしまう、目に見えないようにしてしまう、そしてとりあえず数百年、何世代かまでは安全性は保たれるでしょう。しかし、結果的には取り返しのつかないことになるかもしれない。安全性が確認されていないやり方、それを今とってしまうということについては、やはり反対すべきなのではないか。そうすると、先ほど西尾さんも指摘していただきましたけれども、少なくとも100年単位で時間をかけて、様子を見ながら研究を続けていくという、そういう選択肢しか残されていないわけですね。これはとても中途半端です。我々の行った誤った選択の結果、残されている高レベル放射性廃棄物というのを目に見えないところにしまってしまうのではなく、我々の目に前に置き続けて、見続けなければいけない。しかし、この中途半端な立場に踏みとどまって考えを続けていくしかない、研究も続けていくしかないというのが日弁連のこの問題に関する現時点での結論です。
 この問題の続きは、10月5日、岐阜の人権大会で、長良川の国際会議場で議論を続けていきたいと思います。会場は、1000人以上入る、大変な規模の会場をとってしまいました。ここに来られた皆さんは、ぜひもう1度来るだけではなくて、ご友人やご親類とか誘っていただいて、1人でも多く来ていただきたいというふうにお願いして、きょうのつたないまとめとかえさせていただきます。
 どうもありがとうございました。

【司  会】

それでは最後に、日弁連公害対策環境保全委員会委員長の藤原猛爾から皆様にお礼とごあいさつを差し上げます。

【藤原猛爾】

紹介いただきました藤原です。
 私は、最後のごあいさつということなんですが、二つのお願いをしたいと思います。
 一つは、皆様のお手元に入っている三つの用紙があります。タイトルは「ご署名のお願い」というのと、「市民にやさしい司法を目指して」というのと、封筒であります。これは、冒頭に岐阜県弁護士会の会長の笹田会長からあいさつとお願いがありましたように、こういう問題を弁護士が、あるいは弁護士会がやっております。こういうことをしながら、なおやはり基本的に国民の立場で、あるいはもっとわかりやすく言えば、人間の尊厳とか命とか暮らしとか健康とか、そういうことを大事にしながらこういう活動をし、かつそれを法廷の中でも訴え、そして司法のゲンソクサイバン(?)の中でもそういう憲法の理念みたいなものが貫徹されるような裁判を求めていくというようなことを求めて、今新聞等で問題になっておりますが、司法改革ということで、弁護士の数をどうする、法曹、裁判官の数をどうする、裁判の進め方をどうするというようなことが問題になっております。そういう意味で、日弁連の基本的な目指す方向がこのビラの中にありまして、その裏側に書面欄が5行あります。これをお持ち帰りいただきまして、今書いていただく方は出していただければいいですが、お持ち帰りいただきまして、ご家族の方、あるいは職場でご署名いただきまして、封筒に入れて出していただくだけで、切手を張っていただかなくてもいいということになっておりますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
 二つ目のお願いは、同じ緑色のペーパーが入っておりますが、これが、先ほど来お願いしております10月5日のシンポジウム等の呼びかけであります。本日は、核燃サイクルの末端のところになります高レベル放射性廃棄物の処分の問題でありました。しかし実は、ジェー・シー・オーなども問題になりましたように、ウラン鋼の採取から精練、それから利用、運転、再利用、再処理まで行きますと、もっとありますけれども、核サイクルにおける問題というのは、キーワードは安全性の問題であります。そういう問題を全般的に取り上げようというのが、10月5日にやりますシンポジウムの内容であります。ぜひもっといろんな視野で考えまして、本当に安全性というのは、きょうの議論の中でも出ましたけれども、技術や科学の問題ではありません。これを選択するのはだれか。これは、学者でも政治家でもないし、知事さんでも市長さんでもない。安全性を決めるのは私たちなわけです。私たちが安全と思う方向でやれるならやりましょう。それができない限りは、やはりいろいろ議論しましょう。こういう姿勢を貫徹すべきだろうと思います。そういう視点で、10月にはもう少し間口を広げ、かつ少し深みを入れながら議論したいと思いますので、ぜひご参集いただきまして、またきょうのように多数のご意見をいただきまして、より安全な、そして次の代に引き継げるような対策を今後考えていきたいというふうに思っております。
 本日は、久しぶりの梅雨の晴れ間で、非常に貴重な土曜日だったと思いますが、1時から5時まで長時間ご参集いただきまして、かついろんなご意見もいただきまして、ありがとうございました。
 そして最後に、こういう場所を設定していただきました岐阜県弁護士会の皆様、あるいは地元の支えていただきましたいろんな運動団体の皆様方、多数の参加を得ることによりまして、大体この記録上、300通用意しました記録もなくなりました。300以上の参加がありました。本当にありがとうございました。岐阜でお会いすることを祈念しながら、最後のごあいさつにさせていただきたいと思います。本当にありがとうございました。(拍手)

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