現在国会で審議されている7項目のみの憲法改正手続法改正案に反対し、改めてその抜本的な改正を求める会長声明
現在国会で審議されている7項目のみの憲法改正手続法改正案に反対し、改めてその抜本的な改正を求める会長声明
本年5月11日、日本国憲法の改正手続に関する法律(以下「憲法改正手続法」という。)の改正案が衆議院本会議で可決され、参議院において審議入りし、現在参議院憲法審査会で審査がなされている。本改正案は、2016年の公職選挙法の改正(名簿の閲覧、在外名簿の登録、共通投票所、期日前投票、洋上投票、繰延投票、投票所への同伴)の7項目にそろえて、憲法改正手続法も改正し7項目に関する規定を整備するものである。
当会は、憲法改正手続法の制定に関する議論の中で、2007年4月16日の会長声明にて、「最低投票率についての定めがなく、少数の賛成によって憲法改正がなされるおそれがあること」及び「投票日前14日間を除いて広告放送に何らの制約も設けられておらず、資金力のある者のみの広告放送によって、国民の冷静な議論による意思形成が妨げられるおそれがあること」を含む7項目の重大な問題点を指摘してきた。
同法の制定後も、2018年5月28日の総会決議にて、日本弁護士連合会が2009年11月18日付「憲法改正手続法の見直しを求める意見書」の中で8項目の見直すべき課題を提示していることを引用するとともに、特に、法制定時、参議院の特別委員会において、実に18項目に亘る附帯決議をし、その中に「1.低投票率により憲法改正の正当性に疑義が生じないよう、憲法審査会において本法施行までに最低投票率制度の意義・是非について検討を加えること。」及び「1.テレビ・ラジオの有料広告規制については、公平性を確保するためのメディア関係者の自主的な努力を尊重するとともに、本法施行までに必要な検討を加えること。」との項目が含まれていたにもかかわらず、同法施行(2010年5月18日施行)から8年が経過した2018年5月時点においても、これらの点についての検討がなされていないことの問題点を指摘し、上記附帯決議にある必要な検討がなされなければならないこと、及び憲法改正手続法の見直しをすること、を強く求めてきた。
しかし、現在審議中の憲法改正手続法改正案は、これらの重要な2項目について十分な審議がなされないまま成立に向かおうとしている。この点、衆議院において、有料広告規制等については法施行後3年を目途に必要な法制上の措置を講ずる旨の付則が追加されたが、検討の先送りにすぎない上、最低投票率等については触れられておらず、全く不十分である。有料広告規制や最低投票率の問題については、2007年の参議院特別委員会の附帯決議において検討を求められてから既に14年が経過しており、一刻も早く具体的な検討がなされなければならない。それらの検討の先送りを容認し、それらの検討がなされないままで改正がなされた場合、不十分な手続法の下で公平性や正当性に疑義を抱えた国民投票が行われてしまうおそれが否定できない。
言うまでもなく、憲法は、国民の人権保障や権力分立等を規定する根本法である。その憲法の改正手続が、公平性や正当性の十分な確保に欠ける手続法の下で行われるとすれば、憲法改正案の正当性はもちろんのこと、憲法そのものの理念が損なわれる。
よって、当会は、現在国会で審議されている7項目のみについての憲法改正手続法改正案に反対し、改めてその抜本的な改正を求めるものである。
2021年(令和3年)6月7日
岐阜県弁護士会 会長 小 島 浩 一
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