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国選弁護人の報酬引き下げに反対し,増額を求める決議

2003.04.26

国選弁護人の報酬額は,2000年(平成12年)度から地方裁判所における標準的事件(3開廷)について8万6400円とされ,その後2年間据え置かれていた。ところが,本年度の政府予算では,これが8万5600円に引き下げられた。
 国選弁護制度は,刑事被告人の憲法上の権利である弁護人依頼権を実質的に保障しようとする制度である。このような制度趣旨に照らせば,国選弁護人の弁護活動を十分に保障するための経済的な担保が必要不可欠であり,国選弁護人に適正な報酬が支払われることは,憲法上の要請といっても過言ではない。
 現在の刑事弁護の実情としては,国選弁護人が選任される比率は極めて高いものとなっている。しかしながら,国選弁護人は私選弁護人と何ら相違のない弁護活動が要請される一方で,その報酬は求められる弁護活動の内容に比して,きわめて低額となっている。しかも,記録謄写料,交通費,通信費などの実費については原則として支給されず,国選弁護人の個人的な負担となっている実情である。このような実情においては,現在の刑事裁判は国選弁護人の犠牲と負担によって維持されているといっても過言ではない。
 さらに,司法制度改革推進本部では,2006年(平成18年)度から国費による被疑者弁護制度導入を前提に検討作業が進められているが,この制度の実現には,現状を大きく上回る弁護士の確保が要請されている。そのためには国選弁護人報酬を適正なものとし,刑事弁護の担い手を十分に確保することが不可欠の前提というべきである。
 2003年(平成15年)度政府予算は,ただでさえ不十分な国選弁護人報酬をさらに減額するものであり,被告人に対する十分な弁護活動を抑制し,ひいては被告人の弁護人依頼権を侵害するものであるとともに,国費による被疑者弁護制度導入に水を差すものである。
 よって,当会は,本年度政府予算における国選弁護人報酬の引き下げに強く抗議するとともに,国選弁護人報酬の大幅な増額のために必要な予算措置を講じるよう強く求めるものである。
 以上のとおり決議する。

 

2003年(平成15年)4月26日
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