自衛隊等のイラク派遣に反対する会長声明
国際世論と国際法を無視して敢行された米英によるイラク侵攻は、戦争状態の終結が宣言された後も、連日のように米兵等に対する攻撃や自爆テロが続き、その矛先は国連や赤十字に対しても向けられ、ついに日本の外交官2名が殺されるという、痛ましい犠牲が出るに至った。
しかるに政府は、昨年12月9日自衛隊派遣基本計画を閣議決定し、同月19日には航空自衛隊の先遣隊に派遣命令を出し、それに基づいて同月26日には航空自衛隊の先遣隊がイラクに出発し、本年1月9日には航空自衛隊の本隊と陸上自衛隊の先遣隊に派遣命令が出され、同月16日に陸上自衛隊の先遣隊がイラクに出発する予定となり、自衛隊派遣の実施に踏み出している。
そもそもイラク特措法は、イラクにおける自衛隊の武力行使を容認するもので、他国領土における武力行使を禁じた日本国憲法の前文および第9条に違反するおそれが極めて大きく、日弁連及び当会などもその制定に反対したものである。
今回の派遣は、国連のPKO活動に対する協力としてなされるものでもなければ、国連の要請もイラクの同意も存しないもとでのものであり、現地における自衛隊等の活動は、米英による侵攻の戦後処理としての占領行政に対する協力にほかならない。
また、イラク特措法制定時とは現地の状況が大きく変化しており、イラクへの自衛隊派遣は、「自衛隊等の対応措置は非戦闘地域において実施し、武力による威嚇または武力行使にあたるものであってはならない」との同法の基本原則にも反している。すなわち、イラクでは、その治安はますます悪化し、国際機関職員や外交官の安全すら確保されていない状況にあり、米軍も認めるように、「イラクは戦争状態にあり、その全土が戦闘地域」である。イラクに安全な「非戦闘地域」などが存在しないことは明らかで、そのため国連、国際赤十字、スペイン等はその要員をイラクから全面的に撤収しており、アメリカから派兵を要請されていたトルコやインドも派兵を見合わせ、パキスタンも未だ派兵に応じていない。
このような状況下で、もし自衛隊がイラクに派遣されるならば、米軍の協力者として格好の攻撃目標となり、自衛隊員等が死傷する事態ばかりか、自衛隊員がイラク国民に対し武力行使をせざるを得ない事態が発生するおそれが大きく、さらに大使館員やNGO関係者など、イラク国内の日本人が広く攻撃の標的となるおそれすら指摘されている。「テロに屈してはならない」との掛け声のもとに自衛隊員等の尊い生命が軽視され、犠牲とされること、また自衛隊の武力行使によりイラク国民に犠牲者を出すことは決して許されない。
当会は、以上の観点から自衛隊のイラク派遣に強く反対し、政府に対し自衛隊のイラク派兵の撤回を強く求めるものである。
岐阜県弁護士会
会長 安藤 友人
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