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弁護士から警察への依頼者密告制度(ゲートキーパー制度)に反対する会長声明

2006.05.13

政府は、弁護士に対し、不動産の売買等一定の取引に関し、金銭の移動がマネーロンダリングやテロ資金の移動であるとの「疑わしい取引」を警察庁へ報告することを義務づける法案を作成し、平成19年の通常国会に提出予定である。しかし、この制度は、弁護士をして、依頼者を警察庁へ密告することを求め、市民の監視役にするものである。弁護士制度の崩壊を招き、民主的な司法の基盤を突き崩しかねない。当会はゲートキーパー制度に強く反対する。 
1弁護士の守秘義務を侵害し、民主国家の実現を危うくすること 
 弁護士は、依頼者から有利・不利を問わず相談を受け、依頼者のために法的に適切な助言をしてきた。市民があらゆることを相談できるように、弁護士は、守秘義務を負担している。にもかかわらず、弁護士において依頼者が打ち明けた事実を警察庁へ密告するとなると、市民は弁護士を信頼せず真実を語ることを躊躇するようになる。弁護士が法に適った助言をすることもできなくなり、民主的な司法国家の実現を危うくする。
2 弁護士の国家権力からの独立性を害すること 
 弁護士は、国家権力に立ち向かうことがあっても依頼者の人権を守り抜くことを重要な使命の一つとしており、これにより市民から職責に対する期待と信頼を得ている。しかし、「疑わしい取引」を警察庁へ密告する制度を設けると、弁護士が犯罪捜査の手先であるという外観を作り出すことになり、市民の弁護士に対する信頼を決定的に傷つける。弁護士が国家権力から独立して市民の人権を擁護するという使命も果たし得なくなる。
3 諸外国でも反対運動が続けられていること
 アメリカでは、アメリカ法曹協会(ABA)は、報告義務を課すことにより却って違法行為を助長するとの理由による強硬な反対運動をしており、未だ立法化の動きはない。カナダでは一旦法制化されたが、弁護士会による法律の執行の差止仮処分が認められ、政府が弁護士への適用を撤回している。同様に国内法制化されたベルギーやポーランドでは、弁護士会がこの制度の違憲性を指摘して、行政・憲法裁判所に提訴し係争中である。

2006(平成18)年5月13日
岐阜県弁護士会
会長 武藤 壽
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