「谷間世代」の不平等の是正を求める会長声明
「谷間世代」の不平等の是正を求める会長声明
戦後,1947(昭和22)年に司法修習制度が開始してから,司法修習生に対しては国費から給与が支給されてきた。この給費制は,司法制度の根幹を担う法曹を養成するための社会的インフラを提供するために,公費をもってその費用を賄う制度として機能していた。また修習専念義務のもと兼業が禁止される司法修習生の生活を支えるためにも給費制は必要とされた。
ところが,国は,財政的負担を理由に2011(平成23)年11月に給費制を廃止した。司法修習生は無給とされ,希望者に所定額を貸し付ける貸与制に転換された。修習生の経済的基盤が不安定となったことは,修習生全体に修習に専念することへの障害となったばかりではなく,司法試験に合格したのに修習を断念する者も現れるようになった。かかる不合理かつ深刻な事態を受けて,当会は,2016(平成28)年1月に会長声明を発し,司法修習生に対する給付型制度の創設を求めた。
2017(平成29)年4月から,修習生への返済不要の支給制度(修習給付金制度)が開始した。一定の評価ができる措置ではあるが,従前の給費制と比べて支給額が少なく,修習生の経済的基盤を支えるに不十分であることは否めない。
その点を措くとしても,国の政策が変遷したために,6年間の貸与制のもとでの修習を経て法曹となった者(いわゆる「谷間世代」)と,その前後の給費制,又は修習給付金制度のもとで修習を受けた者との間で,歴然とした不平等が生ずることとなった。この谷間世代は,法曹となった時点で借金を負い,すでに返済が開始している世代も現れている。この不合理な扱いの格差を,国は何ら是正しようとしないのが現状である。
日本弁護士連合会は,2019(平成31)年3月1日の臨時総会において,谷間世代の会員らに各20万円の給付金を支給することを決議した。もとより,弁護士会の財政からの支給には限界があり,谷間世代の格差を埋めるに十分な措置とはいい難い。しかし,同じ司法の担い手であるにも関わらず,国の失策により生じた不平等による不利益を負わされる会員を放置できないとの思いから,決議した次第である。
そもそも,法曹養成制度を維持することは,社会に法の支配を貫徹するための重要な社会的インフラであり,これを公平かつ平等に提供することは本来国の責任である。国は,谷間世代の不平等を放置せず,給費制を廃止した誤りを正すべきである。
したがって,当会は,国に対し,谷間世代の法曹に負わせた経済的不平等を是正するための積極的な措置をとることを強く求める。
2019年4月17日
岐阜県弁護士会会長 鈴 木 雅 雄
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