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低賃金労働者の生活を支え、コロナ禍の地域経済を活性化させるために 岐阜県の最低賃金額の引上げと格差是正を求める会長声明

2021.07.12

低賃金労働者の生活を支え、コロナ禍の地域経済を活性化させるために岐阜県の最低賃金額の引上げと格差是正を求める会長声明

1 昨年春に始まった新型コロナウイルスの感染拡大は、岐阜県内でも大きく影響し、地域経済には大きなダメージが生じている。
  新型コロナウイルスの感染拡大又はその防止策により経営状態に大きな影響を受けている企業や事業主が存在し、企業や事業主に対する支援が必要であることは言うまでもない。
他方で、労働者に対する支援も置き去りにされてはならない。
労働者の生活の安定と地域経済の活性化のためには、最低賃金引上げの流れを止めてはならない。

2 現在、岐阜県の地域別最低賃金は1時間852円である。
地域別最低賃金は、中央最低賃金審査会における最低賃金改定の答申を受けて行われる各都道府県の地方最低賃金審議会での審議の結果を踏まえて、各都道府県の労働局長において定められるものである。我が国の最低賃金制度は、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定等に資することを目的としている(最低賃金法1条)。
しかしながら、我が国の相対的貧困率は15.4パーセントと高止まりしており、特にひとり親世帯の貧困率は48.1%と凡そ2世帯に1世帯が貧困状態に陥っている(年令和元年国民生活基礎調査)。働いているにもかかわらず貧困状態にある者の多くは、最低賃金付近での労働を余儀なくされており、最低賃金の低さが、貧困状態からの脱出を阻む大きな要因となっている。
実際、本県での地域別最低賃金852円で、フルタイム労働(一日8時間、月22日)をしても、総支給額で月額14万9952円、年で179万円弱にしかならない。
これはワーキングプアの指標とされる年収200万円を大きく下回っており、最低賃金付近での就労を強いられている労働者は、生活を維持するために、長時間労働や複数の就労の掛け持ちを余儀なくされていると解さざるを得ない。
  特に、このコロナ禍により、労働の機会を奪われた労働者は数知れず、低所得者層への影響の大きさが指摘されているところであり、最低賃金が高ければ影響が緩和できた可能性が高いことを踏まえると、大幅な最低賃金の引上げが必要である。

3 また、最低賃金の地域間格差について、岐阜県の地域別最低賃金は、愛知県の最低賃金927円からは75円下回り、全国加重平均である902円からも50円下回っている。 
この点、昨年度、中央最低賃金審議会は、コロナ禍での最低賃金引上げによる中小企業への影響を懸念し、これまで行われてきた目安額の提示を見送ったところ、岐阜県においては、1円ではあるが、最低賃金の引き上げがなされたことは大変評価できる。
 しかしながら、この10年間で最低賃金の格差は、全国加重平均とで20円、隣県愛知県とは32円も広がっており、昨年も格差が据え置かれるにとどまった。
前記のとおり愛知県との間には75円もの最低賃金の格差が存在している。少しでも効率よく収入を得ようとすれば、より賃金の高い愛知県で働きたいと考えるのは当然である。最低賃金の高低と人口の転入出には強い相関関係があり、特に新型コロナウイルス感染拡大防止のため県を跨ぐ移動の自粛がこの間何度も求められている昨今の状況も踏まえると、愛知県に「通勤」するのでなく、「移住」することを考えるものも容易に想定される。
したがって、最低賃金の格差は、県内の労働力のみならず人口の流出により地域の活力低下を招くおそれがあり、最低賃金の引上げによる格差の是正は、労働力や人口流出による地域の活力低下に歯止めをかけ、地域経済の活性化に直結する。

4 もちろん、コロナ禍において、最低賃金を他の地域以上に引き上げその格差を是正することは、特に中小企業の経営に大きな影響を与えることが予想される。
  今後は、令和3年6月18日に閣議決定された、いわゆる骨太方針2021において、「最低賃金について、感染症下でも最低賃金を引き上げてきた諸外国の取組も参考にして、感染症拡大前に我が国で引き上げてきた実績を踏まえて、地域間格差にも配慮しながら、より早期に全国加重平均1000 円とすることを目指し、本年の引上げに取り組む。」とされており、国レベルでも最低賃金の引上げや格差是正に伴う中小企業への支援施策が期待される。岐阜県でも、最低賃金の引上げが困難な中小企業のために、最低賃金の引上げを可能とするための補助金制度等の独自の制度の構築も検討すべきである。

5 以上のことを踏まえて、当会は、岐阜県の地域別最低賃金を大幅に引上げ、地域間格差の是正を図り地域経済の健全な発展を促すとともに、労働者の健康で文化的な生活の確保を求めるものである。
以 上

2021(令和3)年7月8日
岐阜県弁護士会       
会長  小  島  浩  一

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