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日野町事件について検察官に対し特別抗告しないことを求める会長声明

2023.03.03

 日野町事件の再審手続において、2023(令和5)年2月27日、大阪高等裁判所(石川恭司裁判長)は、原審大津地方裁判所による再審開始決定を維持し、同決定に対する検察官の即時抗告を棄却した(以下、「本決定」という。)。

 日野町事件は、滋賀県蒲生郡日野町で1984(昭和59)年、酒店経営の女性(当時69歳)が殺害されて金庫が奪われた強盗殺人事件であるとされる。逮捕、起訴された阪原弘氏は、捜査段階で自白させられ、公判で否認に転じるも、1995(平成7)年に大津地裁で無期懲役の有罪判決を受けた。同判決は2000(平成12)年に最高裁で確定した。その後、日弁連の再審支援を得て再審請求がなされたが、即時抗告審が係属中の2011(平成23)年3月に服役中の阪原氏が75歳で病死したため、この第1次再審請求は終了となった。

 今回の第2次再審請求は、阪原氏の遺族が再審請求人となって2012(平成24)年3月に提起された。原審大津地裁は、2018年(平成30)年7月7日に上記の再審開始決定をした。これを支持し、検察官の即時抗告を棄却したのが本決定である。

本決定は、被害者の遺体の発見場所に関する阪原氏の引当て捜査に関する証拠について、警察官による誘導の可能性を含め任意性に疑問があるなどとした。また、阪原氏のアリバイを示す関係者の供述を記録したビデオテープにも新規性を認め、その他の様々な新旧証拠を総合的に評価して、確定判決に合理的な疑いが生じたとの判示であり、白鳥・財田川決定の趣旨に沿った正当な判断であると評価できる。

 大津地裁の再審開始決定に続く本決定により、阪原氏のえん罪は一層明らかとなった。阪原氏の名誉回復が生前に叶わなかったことは、わが国の刑事司法の歴史における痛恨事である。このうえは再審開始決定をこのまま確定させ、速やかに公判手続が開始されるべきである。

よって、当会は、検察官に対し、本決定に対し特別抗告することがないように求める。

 

2023(令和5)年3月2日

岐阜県弁護士会   

会長  御子柴  慎

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