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検察審査会の統廃合に反対する会長声明

2008.06.10

最高裁判所は、本年1月、全国201ヶ所の検察審査会のうち、過去20年間の平均年間事件数が1件未満の50ヶ所を廃止し、14ヶ所を増設する再編案を発表し、法務省は、その再編案を内容とする「検察審査会の名称及び管轄区域等を定める政令の一部を改正する政令案」をパブリックコメントに付している。この案によると、現在、岐阜県内に岐阜検察審査会、大垣検察審査会、多治見検察審査会、高山検察審査会の4ヶ所の検察審査会があるところ、高山検察審査会が岐阜検察審査会に統合されて県内の検察審査会は3ヶ所に減少することになる。
 この統廃合の理由は、検察審査会を事件数に応じて再配置することにより、審査員に選ばれる市民の負担を軽減し、審査を充実させるためと説明されている。
 審査員の負担としては、事件の有無にかかわらず半年の任期中に4回の出頭義務があることが挙げられているが、この負担の軽減は、制度を改めることにより可能であって、直ちに検察審査会を統廃合する理由となるものではない。
 そもそも、検察審査会は、公訴権の実行に関し民意を反映させてその適正を図ることを目的とするものである。これは、検察官に起訴独占主義・起訴便宜主義という大きな権限・裁量権を与えている我が国の検察制度のもとで、市民が検察の公訴権の実行を監視するほぼ唯一の手段である。不適正な公訴権の行使がないよう監視するには、自らが生活している地域で起きた事件の公訴権行使を身近なところから監視するのが有効適切であって、そのため、全国201ヶ所に検察審査会が置かれている。このような監視システムの存在自体に、不適正な公訴権の行使を予防する機能があるのであって、事件数が少ないことを理由として主権者である国民による公訴権行使の監視機能を弱体化させてはならない。
 岐阜県内においても、高山検察審査会が岐阜検察審査会に統合されれば、岐阜検察審査会が、岐阜市及びその周辺の市町・郡上市・下呂市・高山市・飛騨市までの広大な地域を管轄することになるのであり、公訴権行使を身近なところから監視するという監視システムを弱体化させる結果となる。
 また、これまで検察審査会が必ずしも多く利用されてこなかった状況が続いてきた理由としては、検察審査会制度自体が知られていなかったことのほか、議決に法的拘束力がないなど国民の期待に十分に応えうる制度となっていなかったことが考えられる。しかし、最近では、犯罪被害者の権利や救済についての議論が活発になる中で、検察審査会への期待が高まっている。そして、検察審査会法も改正され、平成21年5月までに、2度目の起訴議決への法的拘束力が付与される制度が新設された改正法が施行されることになっている。このような現状からすれば、過去の統計のみを理由に検察審査会の統廃合を行うのではなく、まず、国民に対し、検察審査会の存在、利用方法を十分に広報する必要性が高い。
 以上の理由により、当会は、全国50ヶ所の検察審査会を統廃合することに反対するものである。

2008(平成20)年6月10日
岐阜県弁護士会
会長 幅 隆彦
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