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アスベスト対策を求める会長声明

2009.06.15

石綿の有害性や石綿による健康被害が認識されて以来、被害者救済制度の整備、石綿に対する規制強化など、石綿問題を取り巻く状況は進展を見せている。
岐阜県においても、羽島市にある(株)ニチアス羽島工場周辺地域で、これまでに環境省による石綿健康リスク調査や、大阪府立公衆衛生研究所の石綿関連疾患に関する疫学調査が行われ、2008年10月に疫学調査報告書が発表された。
環境省による健康リスク調査では、(株)ニチアス羽島工場の周辺住民に、石綿を吸い込んだ人特有の胸膜プラーク等の所見が多数認められ、また、大阪府立公衆衛生研究所の疫学調査では、周辺地域住民の肺がんによる死亡率増加に石綿の環境・近隣曝露が関与している可能性が高いことが指摘されており、被害は深刻である。
近年、行政や企業の努力で石綿使用量が減少しているにもかかわらず、中皮腫や石綿肺など石綿関連疾患は依然として増加している。過去の石綿使用状況に照らすと、このような石綿関連疾患の増加傾向は2040年頃まで続くものと予想される。しかも、石綿関連疾患は、現在の医学水準では治療方法が確立されておらず、いったん発症すると、病状が進行し続け、やがて死に至るという「不治の病」である。
しかし、石綿被害に関する立法や行政による救済制度は、未だ地域住民らの期待に応えられるほどには完備されておらず、被害者に対する補償はおろか、被害状況に関する情報開示すら十分に行われているとは言いがたい。
よって、当会は、国、岐阜県、羽島市及び(株)ニチアスなど石綿製品取扱い企業に対し、石綿による健康被害者の救済に尽力することを要請し、本声明を発表するものである。

1 岐阜県及び羽島市は、国と協力し、独自に長期的かつ継続的な石綿に因る健康被害調査を行うべきである。

2 (株)ニチアス及び羽島市は、地域住民を対象とした健康診断の対象地域を(株)ニチアス羽島工場の半径3kmの範囲に拡大するとともに、受診者に対する検診後の説明義務を尽くし、将来の健康管理、療養等の指導を十分に行うべきである。

3 (株)ニチアスは、自社で実施した地域住民の健康診断において得た胸部X線写真・CT等の臨床資料について、本人の申出があれば、貸出しに応じるべきである。

4 岐阜県及び羽島市は、地域住民が適切な診療を受けられるよう、石綿に因る呼吸器疾患に精通した専門医及び医療スタッフを充実させるべきである。

5 国は、救済対象を中皮腫と肺がんに限定している現行の石綿の健康被害の救済に関する法律を再度改正し,救済の対象を胸膜プラークの所見が認められる被害者にも広げるべきである。

2009(平成21)年6月15日
岐阜県弁護士会
会長 鷲見 和人
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