関西電力大飯原子力発電所の再稼働に反対する会長声明
2011年3月11日の東日本大震災によって引き起こされた福島第一原子力発電所(以下、原子力発電所を「原発」という。)事故は、国民の多くが信じてきた原子力安全神話が崩壊していることと、原発事故による被害の広範さや深刻さを強烈に示した。現在、我が国は地震活動期に入ったといわれており、今後も大きな地震の発生が続く可能性がある。福島第一原発事故のような事故が再発すれば、日本社会は崩壊しかねない。このような深刻な原発事故災害を二度と発生させてはならない。
そのためには、現行の安全設計審査指針等の安全基準を、少なくとも福島第一原発事故の原因を踏まえたものに改訂し、その基準によって原発の安全性を判断して再稼働の当否を検討する必要があるが、福島第一原発事故から既に1年以上経過しているにもかかわらず、未だその事故原因は解明されておらず、事故原因を踏まえた安全基準は作成されていない。
しかるに、政府は、本年4月13日、定期検査で稼働停止中の関西電力大飯原子力発電所3号機及び4号機(以下、「大飯原発」という。)について、ストレステストの一次評価を妥当として安全性の判断基準を満たすとし、地元自治体の同意を得れば、本年6月上旬にも再稼働の最終判断を決定するとの情勢である。政府が妥当とするストレステストにしても、少なくとも一次評価及び二次評価を併せて実施して初めて総合的安全評価ができるのであり、簡易な一次評価のみで再稼動の判断はできないものであることは、斑目春樹原子力安全委員会委員長が、国会事故調査委員会のヒアリングにおいて認めているところであって、政府の判断は、拙速に過ぎるものである。
原発事故の対策にしても、大飯原発には、フィルター付きベント(排気)の設備もなく、事故の時に作業員を被曝から守る免震棟もない状態であり、これらの対策は今後なされる予定とされているなど極めて不十分なものである。
更に、大飯原発が立地する若狭湾には、多くの活断層が存在するが、その活断層の大きさ、想定する地震の規模、連動の可能性等が十分検討されているとは言い難く、この点からも大飯原発の耐震安全性に強い疑念が呈されているところである。
2000年10月に岐阜市で開催された日本弁護士連合会の人権擁護大会において、原発の新増設を停止し、既存の原発については段階的に廃止する等、原子力・エネルギー政策の転換を求める決議を行っている。
よって、大飯原発の再稼動は時期尚早であり、当会は、政府に対し、福島第一原発事故の原因が解明され、見直された安全基準による適正な審査によって、確実な安全性が確保されない以上、同原発を再稼働させないように強く求めるものである。
岐阜県弁護士会
会長 伊藤 公郎
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